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    a_akai_chan

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    夏五とちょっと灰七/五条がケーキを作る話/高専

    #夏五
    GeGo
    #灰七
    ash7

    召しませ愛のショートケーキ♡

    高専の校舎内を歩いていると、この世で一番面倒臭い先輩に絡まれた。
    「なー七海ぃー。七海はさぁ、世界一強くて顔も良くて器量もあって実家も太くて逆に何がないの?って聞かれるくらい唯一無二の最高の恋人に食べさせてもらうなら、ショートケーキとチョコレートケーキのどっちがいい?」
    「…………もしかしてですけど、それ自分のこと言ってるんですか?」
    だとしたら自己肯定感がエベレスト並みの先輩だ。しかし、それらの賛辞の言葉は、彼にとってはあながち過分ではないから困る。
    「いや勿論そうだけど。てか何だよ七海、なんでそんな嫌そうなカオしてんの。街中でアンケートにご協力くださいって言われて立ち止まったら宗教勧誘だった時みたいな顔じゃん」
    「いえ、まだそっちの方が対処しようがあるのでそれほど嫌とは思わないです。逃げるか警察呼ぶかすればいいんですから。でも五条さんは質問に答えるまで永遠に付き纏ってきそうですよね。口裂け女の怪異の類ですか?」
    「それは傑の任務先の呪霊のやつだろ。はーっ、ホントかわいくねーなぁ七海。時代の流行りとはいえツンデレも大概にしろよ?そんなんじゃ、いつか灰原にも愛想尽かされるぞ」
    「は…灰原は今は関係ないじゃないですか」
    五条さんが急に懇意の同級生の話を持ち出してきて、その言葉の裏にある揶揄いの意図に、焦った私はそれ以上その話題に矛先が向かないよう、ひとつ咳払いをしてから、五条さんの話を元に戻した。
    「で、結局なんの用なんですか。話の前半に完全に意識を持ってかれてましたけど、ケーキ?がどうとか…」
    「だからー。恋人に作ってもらうなら、ショートケーキとチョコレートケーキのどっちがいいかって話だよ」
    五条さんがあまりにしつこいので仕方なく話を聞いてみたが、正直、ものすごくどっちでも良かった。そんなことを決めるのに自分を巻き込まないで欲しい。
    「……そういうのは俺じゃなくて家入さんに聞いてもらえませんか?」
    「えー、硝子ぉ?硝子はもう聞いたけどダメだよ。そんな甘ったるいもん貰うくらいなら、スピリッツ1カートン欲しいって言われたもん」
    「……まあ、あの人はそうでしょうね」
    家入先輩は辛党だし、甘いものは苦手なはずだ。お決まりの銘柄の煙草を吹かしながら真顔でそう言い切る彼女の姿は想像に難くない。
    「というか、何で急に手料理なんて作ろうと思ったんですか?しかもケーキ」
    別に料理が趣味というわけでもないだろうに。というかこの人はそういう柄じゃない。少し気になって聞いてみると、
    「いやさー、実はさ、俺この前傑に聞いたんだよ。傑ってさ、祓った呪霊食うじゃん?あれ、どんな味するのかって。そしたらさ、なんか呪霊ってすっげー不味いらしくて。マズすぎて3日は後を引くって言ってたね。だからさ、明日任務から帰ってくる傑に、可愛い恋人の手料理食わせてやって、呪霊の味、消してやろうかなって思ってさぁ。
    ホラ、俺って才能の塊じゃん?料理とかしたことねーけど、まあ勘でいけるかなって」
    少し照れくさげに頭をボリボリと掻きながら、五条さんは言った。
    「…なるほど」
    私は頷いた。彼が急に柄にもなく料理、もといお菓子作りををしようという気になったのは、何を隠そう、この先輩と唯一対等に接することができるであろう、規格外の先輩であり五条悟の恋人、夏油傑のためだと。
    確かに、自分も任務で一緒になった際に、少しだけ話を聞いたことがある。
    あの時は、「呪霊ってどんな味なんですか?」と夏油さんに聞くと、「あまりいい味とは言えないよ」と苦笑しながら夏油さんは返した。呪いの塊を嚥下する夏油さんは、もしかすると後輩の前だからそれでも堪えていたのかもしれないが、少し苦い、というか苦しそうだった。
    不味い呪霊の味は、飲み込み続ければどうにも気が滅入るだろう。だから。自分の作った手料理で口直しをさせてあげたい―――と。
    ……しかし、まさかこの天上天下唯我独尊先輩にも、誰かのために料理をしようなんて殊勝な気持ちになることがあるとは…。
    まあそれは相手があの夏油さんだからであるかもしれないが、まあそれはそれとして。
    「しかし、なんでケーキなんですか?他のお菓子とか、もしくはメインになるような他の料理じゃダメなんですか?」
    問題はそこだ。何故、用意された選択肢がショートケーキかチョコレートケーキなんだろうか。
    疲労した体で帰ってくる人間への差し入れとしては、あまり胃に優しくないし、夏油さんも特別ケーキが好きというわけじゃなかったはずだ。
    「え?なんでって俺が食べたいからに決まってんじゃん」
    五条さんはけろりとした顔で言った。一切の疑念を孕まない声に、私はいっそ清々しさすら感じた。
    「……そういうところ、やっぱり貴方は貴方ですね…」
    「え?もしかして今七海に褒められた?」
    「褒めてません」
    そして、再度ショートケーキとチョコレートケーキのどちらがいいか判断を仰がれ、「(ぶっちゃけどちらでもいいですけど、)私はどちらかといえばチョコレートケーキがいいですね、甘すぎるのは苦手なのでできればビターなやつで」と答えたが、
    「呪霊って食うとき黒い塊になるから、チョコだと黒いし呪霊思い出して嫌悪感あるよな、ショートケーキにしよ。ショートケーキ食べたい気分だし」と言って去っていった。結局そうなるなら何で聞いたんですか…。

    そして翌日。
    高専の敷地内、外と内とを隔てる結界の門の側には、自動販売機の置かれた小さな休憩所がある。
    そこは昔から任務から帰ってくる仲間を待つのによく使われている場所だった。
    私がベンチに押しかけて、灰原の帰還を待っていると、やはりというか、灰原と一緒に任務に行った夏油さんを待ち構えるため、五条さんが大きな箱を抱えながらこっちに向かって歩いてきた。
    「うわ、何ですかその箱」
    「何って、昨日夜なべして作ったホールケーキだよ。七海も見てみる?」
    「それはわかりますけど、デカすぎるって話ですよ。いや、箱は開けなくて結構で…うわ、何ですかそれ?本当に五条さんが作ったんですか?高級ホテルの中の洋菓子店とかに並んでても遜色ないレベルじゃないですか?」
    「そうなんだよ…俺も自分の有り余る才能にさすがにビビったわ」
    箱の真ん中にあった光沢のある白の二段重ねのホールケーキ。その中心には瑞々しく鮮やかな色の苺が積み上げられ、その周辺をラズベリーやブルーベリーで円のように囲み、さらにそれを見事なほど均等な大きさの乳白色の生クリームが縁取っている。
    まるで一流のパティシエが作ったんじゃないかと見紛う見事なデコレーション。少し小さめのウエディングケーキとしても使えそうな感じだ。
    「まあ細部のデコレーションまでめちゃくちゃ凝りに凝ったら五時間くらいかかったけどな」
    五条さんは言った。
    少しして、夏油さんと灰原が門をくぐって帰って来た。二人とも怪我もなく元気そうだった。
    私の姿に気付いた灰原がぶんぶんと大きく手を振ってみせるので、私は小さく笑みを返した。
    「傑♡お帰り♡早く会いたかった♡」
    「ただいま、悟。どうしたの、今日は随分と熱烈な歓迎だね?」
    一方、姿を見るなり夏油さんの元に駆け寄って行った五条さんは、手に持たままの箱をうまいバランスで維持したまま、久方ぶりに会った恋人の抱きつき甘ったるい声を出していた。その相変わらずのバカップルっぷりに、私は思わず顔を顰める―――別に、自分ができないから、羨ましいと思っているなど、断じてないが。
    「傑♡聞いて聞いて♡俺さ、任務で疲れて帰って来た傑を癒すために、こんな大きなケーキ作ったんだ♡早く部屋に帰って一緒に食べようぜ♡ついでに夜のプレイにも使おう♡
    「そうなんだ。ありがとう、悟。私の為にケーキを作ってくれたなんて…。でも、急にどうしたの」
    「ちょっと気が向いたんだよ♡嬉しいだろ?」
    「…ああ、そうだね。嬉しいよ」
    五条さんが見せびらかすように夏油さんに箱を押し付け、夏油さんは笑顔でそれを受け取った。
    これでまた部屋でイチャイチャバカップルタイムが始まるのだろう―――と思ったが。夏油さんを見る限り、どうやらそれは違うようだった。
    「…傑?な、どうしたんだよ。ちゃんと俺があーんして食べさせてやるからさ、早くイチャイチャしようぜ?」
    夏油さんの腕を引き、そう急かす五条さん。何故か分からないけれど、その声はどこか焦っているような気がする。
    声をかけられた夏油さんは、その場から動くことはせず、片手で箱を手に持ち、顎に手を当てて、じっと何かを考え込んでいるようだった。
    そうして、きらきら光る純白で塗り固められたショートケーキをじっと見つめた彼は、
    「………ところでなんだが、悟。もしかして、任務前に、私が貸したゲームのセーブデータ、消したりしてないよね?」
    「…………ソンナコトナイヨ」
    そう聞かれた瞬間、五条さんは急にロボットみたいな片言になって目を逸らした。これは明らかに心当たりがある対応だ。
    瞬間、すっと目を細めた夏油産の纏う空気が冷たく凍り付く。

    ―――なるほど、そういうことか、合点がいった。
    つまり五条さんは、夏油さんの任務中にやらかした失敗をひた隠し、うやむやにするために、あんなインパクトのあるケーキを作ったと。
    しかし、そんな小手先の作戦では、彼のことをよく理解している夏油さんには通用しなかったということか―――。
    どうりで、なんだかおかしいと思ったわけだ。
    とは言っても、呪霊の味の口直しをさせてあげたいという気持ちもきっと嘘ではないんだろうけれど。いつかバレるような嘘のために、きっと彼はあんなケーキは作らない。

    私はその場に立ったまま、離れていく二人の背中を見る。
    なんだか色々弁明らしきものをわめきたてる五条さんを、額に青筋を浮かべながら少し凍った笑顔で引きずっていく夏油さんが、地獄のような声で「今日は泣いて詫びるまでブチ犯す」と言っていた気がするが、聞こえなかったことにした。

    それと―――この一連の流れのせいで、さっきから、灰原の「なんだかよく分かんないけど、僕も、七海にお菓子作ってほしい!」という羨望と期待に満ちた眼差しが刺さって痛い。
    私は大きなため息をひとつこぼしてから、明日は料理本を買いに行こうと決めた。
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    a_akai_chan

    MEMO男モブファン視点祓本夏五
    エロはまだない
    『ーーーじゃあ、今週はこの辺で。また来週お会いしましょう』
    『じゃあなーお前ら。放送見てくれてサンキューな』
    画面に映る二人の男が、締めの言葉を口にしながら手を振っている。
    「ふぅ…今日のじゅじゅちゅーぶ放送で投げたスパチャはざっと50万くらいか…記念放送だし、今日はいつもより多めに投げてみたけど、さとぴ、喜んでくれたかな…?」
    俺はパソコンの画面を確認し、ふー、と息を吐き出しながらデスクチェアの背もたれに深く背中を預けた。今をときめく超売れっ子芸人コンビ、祓ったれ本舗、通称祓本。
    そのコンビの結成一周年記念のネット生配信が本日行われたのだった。俺は結成時から祓本を追っていたファンのひとりと言うこともあり、いつもよりサービスの多い記念放送は、俺にとっても有意義なものだった。
    「それにしても、今日のさとぴも可愛かったなァ…」
    俺は今日の放送でのさとぴの天使のように可愛い顔を思い出し、胸いっぱいに沸き上がる幸福感を噛み締めた。
    祓ったれ本舗。名もないルーキーから瞬く間にのし上がり、現在は人気絶頂の漫才コンビ。俺はそのコンビの片割れ、五条悟(なお、ガチファンの間での呼称は『さとぴ』である)と 6629

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