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    sangatu_tt5

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    雀春ボツ

    #探占
    divination

    賭場の脇、少し入った薄暗い路地のごみ溜めの近くを通りかかった時、くいっと足元の裾を引かれた。弱い弱い、か弱いそれは大の大人なら気付かないぐらいの力で、その時ノートンがそれに気が付いたのはたまたまだった。
     転ぶじゃないかと、傾いた身体を起こし、少し腹を立てながら、何処の浮浪者だと振り返る。この中華街では賭け事に興じて、事業に失敗して、理由は多々あれど、いつの間にか転落していく愚か者達が多々居た。
     どんな馬鹿だと鼻で笑ってやろうと見下ろした、そこには薄汚れた子供が立っていた。泥に、汚れに、ごみが付いた真っ赤な衣。痩けた頬に、細い指、非道な人間に蹴り飛ばされたのだろう頬には裂傷が出来ていた。

     「ごめんください……。占いできます。何でもします。だから、はたらかせてください」

     舌っ足らずな口を動かして、必死にノートンに縋り、仕事を下さいと言う。くぅぅと話している間にもその子どもの腹が鳴り、かぁっと顔を赤くしたその子どもは俯いて、もじもじと腹あたりの布を弄り出した。
     捨てられた子どもかなにかだろう。良くもまぁ、売り飛ばされずに路地にいれたものだと変にノートンは感心してしまった。
     黙り込んだノートンを見上げて、口を動かそうとするが言葉が出てこない子どもは半べそをかき、あうあうと言語ではない音を漏らす。
     大人には既に声を掛けて、振られてしまったのだろう。怯えの混じった挙動で、少し腹が立ってくる。
     ただ、ここでノートンを選んだあたり、この子どもは目が良い。ノートンはまだ十五にも満ちていないが、媽媽の元で十二分に才覚を発揮しており、ノートンの一存で一人ぐらい雇うことなど造作はなかった。自分の小間使いが欲しいとは思っていたところだったので、正直都合も良い。
     とはいえ、雇うか否かに関しては、雇えるかどうかとは別問題である。利にならないのであれば、金が減るだけ。そんな無駄は絶対にしたくないのが、守銭奴雀舌。

     「あのぉ……、おにいさん……だめですか? ……っ、ぅわぁ!」
     「……」

     か細い声を出す子どもの前にしゃがみ、目を隠す布を剥ぎ取る。突然のノートンの行動に驚いた子どもは真っ青な瞳を大きく揺らして、目尻に涙を浮かべた。きらきら輝く宝石のような瞳に、これはいいなぁと思いながら、ノートンは子どもの身体をまさぐる。薄っぺらい身体は簡単に折れてしまいそうで、脇から腰にかけてをなぞれば、んんぅとくすぐったそうに身動ぎする声がこぼれた。
     服の隙間から足を触れば、乾燥しているが吸い付くようなキメの細かさで、太ればもう少し触り心地が良くなるのにと勿体なく感じる。
     ノートンの品定めを静かに受ける子どもは一度ずずっと鼻を啜って、平坦な起伏の変わらないノートンの瞳を見返した。十になっているか否かの年頃の子どもにしては聡明であると感心する。

     「文字は書ける? そろばんは?」
     「……ちょっとなら」
     「占いって何ができるの?」
     「えっと、かんたんな、予言みたいなものが、できます」

     ふぅーんと少し考える素振りを見せれば、子どもの瞳がゆらりと大きく揺れた。予言とはどういうものなのだろうか。草履を空に飛ばして、落ちた時の草履の向きで天気を測るなどといった程度なら必要ない。そんな不確定要素に満ちたものならば、ノートンは商売に使えないなと考える。その占いが八割当たったとして、それはただの運だろう。まだ雲の移ろいで天気を当ててくれた方が信用できる。
     なにより、百パーセント当たる出なければ商売にならないのだ。

     「どんな予言なの?」
     「…………」

     子どもは口を何度か開け閉めして、言葉が見当たらないというのに目を泳がせ、足元を見る。腹の前で爪の側面にできたささくれを弄り出した。

     「どういう占いなの?」
     「どう、といわれるとわかんないです」
     「わかんないって……それでどうするつもりなのさ」

     涙を瞳に溜めた子どもはごめんなさいと小さく漏らした。そんな言葉が欲しいのではないのだとノートンがため息を漏らす。

     「仕方がない。ついてきて」

     ぐいっと子どもの手を引き、ノートンは隣の賭場に入る。入り口で大きな体躯の男がなにか言いたそうにしていたが、それを無視して奥へ進んでいけば、顔見知りの男が「雀舌」とノートンを呼ぶ。
     酒に、タバコの匂いに、阿片の香り。物陰から女の嬌声が小さく聞こえ、男どもの野次が飛び交う。
     手首を掴んで引き摺るように連れ込んだ子どもは肩を揺らして、ノートンの足に縋り付く。汚れるからやめて欲しいなと思いながらも、ノートンは何も言わずにどかりと畳の上に胡座を組んで座る男に近寄る。

     「よう、雀舌。賭場は媽媽に禁止されてたんじゃなかったのか?」
     「バレなきゃ大丈夫だよ。今日ってなにやっているの?」
     「牌九、大小、丁半だな。裏で闘鶏もやっているな」

     不精に生えた顎髭を男はがりがりと引っ掻きながら、指を一本ずつ折っていく。

     牌九は、天九牌を二枚ずつ二組に分け、ディーラーとそれぞれ勝負し、療法の牌がディーラーより上回れば勝利となるゲームである。
     大小は、一から六の数字が書かれているサイコロを三つ使用し、サイコロの合計数を予想してベットします。 四から十が「小」、十一から十七が「大」となり、大と小のどちらかに賭けるのが基本的なゲーム。
     丁半とは、サイコロをふたつを使用し、壷に入れて振られたサイコロの目の合計が偶数であれば「丁」、奇数であれば「半」と読んでチップを張り、当たったほうが賭けた分のチップがもらえるゲームである。
     闘鶏は文字の通りだが、雄の鶏を戦わせどちらが勝つかを賭けるゲームだ。

     ちらりと子どもに目線を向ければ、困ったようにこちらを見上げてくる。どれがこの子どもがルールを理解できやすいのだろうかと思考を巡らす。

     「なんだ、その餓鬼は。汚ぇな」
     「今日の主役はこの子だよ。ここだとなにやってるの?」
     「そんな貧民街の餓鬼どこから連れてくるんだよ。金が払えねぇならお断りだぞ」
     「僕が最初出すからいいよ」
     「守銭奴のお前がか? はは、気でも狂ったのかよ」
     「狂ってないよ、必要経費だ。で、ここはなにをやっているの?」

     男は膝を叩きながら大きく笑う。この賭場を管理する主格のような男。媽媽から金を借りてこの賭場を経営するこの男にノートンは賭博を習った。
     簡単なルールまではこの男から。この男に唆され、大枚を叩いて媽媽に怒られてからは、血滴子に勝ち方騙し方を習った。馬鹿だった子どもの頃を知られている事実に胃の腑がぐるぐると痛み出すがそんなことはどうでもいい。
     早く質問に答えてくれと、睨みつければ男は両手を顔の横に掲げ、肩を竦めて、笑った。

     「ここだと大小だな」
     「大小かぁ……。大小と闘鶏どっちがいい?」

     子どもに問えば、首を傾げ出した。
     それが何かがわからないというようにこちらを見上げて、首を傾げ、遠くから聞こえる野次に肩を震わせる。

     「」
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