Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    sangatu_tt5

    @sangatu_tt5

    ☆quiet follow
    POIPOI 65

    sangatu_tt5

    ☆quiet follow

    雀春ボツ

    #探占
    divination

    賭場の脇、少し入った薄暗い路地のごみ溜めの近くを通りかかった時、くいっと足元の裾を引かれた。弱い弱い、か弱いそれは大の大人なら気付かないぐらいの力で、その時ノートンがそれに気が付いたのはたまたまだった。
     転ぶじゃないかと、傾いた身体を起こし、少し腹を立てながら、何処の浮浪者だと振り返る。この中華街では賭け事に興じて、事業に失敗して、理由は多々あれど、いつの間にか転落していく愚か者達が多々居た。
     どんな馬鹿だと鼻で笑ってやろうと見下ろした、そこには薄汚れた子供が立っていた。泥に、汚れに、ごみが付いた真っ赤な衣。痩けた頬に、細い指、非道な人間に蹴り飛ばされたのだろう頬には裂傷が出来ていた。

     「ごめんください……。占いできます。何でもします。だから、はたらかせてください」

     舌っ足らずな口を動かして、必死にノートンに縋り、仕事を下さいと言う。くぅぅと話している間にもその子どもの腹が鳴り、かぁっと顔を赤くしたその子どもは俯いて、もじもじと腹あたりの布を弄り出した。
     捨てられた子どもかなにかだろう。良くもまぁ、売り飛ばされずに路地にいれたものだと変にノートンは感心してしまった。
     黙り込んだノートンを見上げて、口を動かそうとするが言葉が出てこない子どもは半べそをかき、あうあうと言語ではない音を漏らす。
     大人には既に声を掛けて、振られてしまったのだろう。怯えの混じった挙動で、少し腹が立ってくる。
     ただ、ここでノートンを選んだあたり、この子どもは目が良い。ノートンはまだ十五にも満ちていないが、媽媽の元で十二分に才覚を発揮しており、ノートンの一存で一人ぐらい雇うことなど造作はなかった。自分の小間使いが欲しいとは思っていたところだったので、正直都合も良い。
     とはいえ、雇うか否かに関しては、雇えるかどうかとは別問題である。利にならないのであれば、金が減るだけ。そんな無駄は絶対にしたくないのが、守銭奴雀舌。

     「あのぉ……、おにいさん……だめですか? ……っ、ぅわぁ!」
     「……」

     か細い声を出す子どもの前にしゃがみ、目を隠す布を剥ぎ取る。突然のノートンの行動に驚いた子どもは真っ青な瞳を大きく揺らして、目尻に涙を浮かべた。きらきら輝く宝石のような瞳に、これはいいなぁと思いながら、ノートンは子どもの身体をまさぐる。薄っぺらい身体は簡単に折れてしまいそうで、脇から腰にかけてをなぞれば、んんぅとくすぐったそうに身動ぎする声がこぼれた。
     服の隙間から足を触れば、乾燥しているが吸い付くようなキメの細かさで、太ればもう少し触り心地が良くなるのにと勿体なく感じる。
     ノートンの品定めを静かに受ける子どもは一度ずずっと鼻を啜って、平坦な起伏の変わらないノートンの瞳を見返した。十になっているか否かの年頃の子どもにしては聡明であると感心する。

     「文字は書ける? そろばんは?」
     「……ちょっとなら」
     「占いって何ができるの?」
     「えっと、かんたんな、予言みたいなものが、できます」

     ふぅーんと少し考える素振りを見せれば、子どもの瞳がゆらりと大きく揺れた。予言とはどういうものなのだろうか。草履を空に飛ばして、落ちた時の草履の向きで天気を測るなどといった程度なら必要ない。そんな不確定要素に満ちたものならば、ノートンは商売に使えないなと考える。その占いが八割当たったとして、それはただの運だろう。まだ雲の移ろいで天気を当ててくれた方が信用できる。
     なにより、百パーセント当たる出なければ商売にならないのだ。

     「どんな予言なの?」
     「…………」

     子どもは口を何度か開け閉めして、言葉が見当たらないというのに目を泳がせ、足元を見る。腹の前で爪の側面にできたささくれを弄り出した。

     「どういう占いなの?」
     「どう、といわれるとわかんないです」
     「わかんないって……それでどうするつもりなのさ」

     涙を瞳に溜めた子どもはごめんなさいと小さく漏らした。そんな言葉が欲しいのではないのだとノートンがため息を漏らす。

     「仕方がない。ついてきて」

     ぐいっと子どもの手を引き、ノートンは隣の賭場に入る。入り口で大きな体躯の男がなにか言いたそうにしていたが、それを無視して奥へ進んでいけば、顔見知りの男が「雀舌」とノートンを呼ぶ。
     酒に、タバコの匂いに、阿片の香り。物陰から女の嬌声が小さく聞こえ、男どもの野次が飛び交う。
     手首を掴んで引き摺るように連れ込んだ子どもは肩を揺らして、ノートンの足に縋り付く。汚れるからやめて欲しいなと思いながらも、ノートンは何も言わずにどかりと畳の上に胡座を組んで座る男に近寄る。

     「よう、雀舌。賭場は媽媽に禁止されてたんじゃなかったのか?」
     「バレなきゃ大丈夫だよ。今日ってなにやっているの?」
     「牌九、大小、丁半だな。裏で闘鶏もやっているな」

     不精に生えた顎髭を男はがりがりと引っ掻きながら、指を一本ずつ折っていく。

     牌九は、天九牌を二枚ずつ二組に分け、ディーラーとそれぞれ勝負し、療法の牌がディーラーより上回れば勝利となるゲームである。
     大小は、一から六の数字が書かれているサイコロを三つ使用し、サイコロの合計数を予想してベットします。 四から十が「小」、十一から十七が「大」となり、大と小のどちらかに賭けるのが基本的なゲーム。
     丁半とは、サイコロをふたつを使用し、壷に入れて振られたサイコロの目の合計が偶数であれば「丁」、奇数であれば「半」と読んでチップを張り、当たったほうが賭けた分のチップがもらえるゲームである。
     闘鶏は文字の通りだが、雄の鶏を戦わせどちらが勝つかを賭けるゲームだ。

     ちらりと子どもに目線を向ければ、困ったようにこちらを見上げてくる。どれがこの子どもがルールを理解できやすいのだろうかと思考を巡らす。

     「なんだ、その餓鬼は。汚ぇな」
     「今日の主役はこの子だよ。ここだとなにやってるの?」
     「そんな貧民街の餓鬼どこから連れてくるんだよ。金が払えねぇならお断りだぞ」
     「僕が最初出すからいいよ」
     「守銭奴のお前がか? はは、気でも狂ったのかよ」
     「狂ってないよ、必要経費だ。で、ここはなにをやっているの?」

     男は膝を叩きながら大きく笑う。この賭場を管理する主格のような男。媽媽から金を借りてこの賭場を経営するこの男にノートンは賭博を習った。
     簡単なルールまではこの男から。この男に唆され、大枚を叩いて媽媽に怒られてからは、血滴子に勝ち方騙し方を習った。馬鹿だった子どもの頃を知られている事実に胃の腑がぐるぐると痛み出すがそんなことはどうでもいい。
     早く質問に答えてくれと、睨みつければ男は両手を顔の横に掲げ、肩を竦めて、笑った。

     「ここだと大小だな」
     「大小かぁ……。大小と闘鶏どっちがいい?」

     子どもに問えば、首を傾げ出した。
     それが何かがわからないというようにこちらを見上げて、首を傾げ、遠くから聞こえる野次に肩を震わせる。

     「」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏🙏🙏🙏🙏❤❤❤💕💕💕💕💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    sangatu_tt5

    MEMOこいぬちゃんぐさんの月蝕の元ネタだったやつ
    血族に売り飛ばされた🔮のるろ月(探占)
    売られてなどいない。自分で来たのだと言い聞かせる。
    愛しいあの子よりも自分が犠牲になる方がマシだと脳の中で繰り返す。

    🔮の住む集落の近くには血族の住まう森があった。不干渉。互いに見て見ぬふりをすることで薄氷の上を歩くような危うい均衡を保っていた。
    しかし、それは血族の気まぐれによってあっさりと瓦解した。
    血族の要求は簡単だった。村の中から誰でもいい。男でも女でも構わない。ただ、若者の方が良いが、生贄を出せ。
    身体を作り替えて、餌として飼う。
    もし出さないようであれば、ここに住まうものを皆殺す。
    理不尽な要求に村人は頭を抱え、村で1番美人な娘という意見が出たが、その女は村で1番の権力をもつ者の娘だった。
    娘を出す訳には行かない父親は、娘の恋人に白羽を立てた。
    親族のいない🔮は都合が良かったのだ。誰もが同意し、🔮は着たことのないほど豪奢な、まるで花嫁衣装のような白い服を着せられ、追い出された。
    血族の餌になる恐怖と見捨てられた悲しみ。🔮は震える手を祈るように握りしめて、古く草臥れた館の中に入る。
    🔮「…ご、めん下さい。要求の通り、参りました。」
    震える声で呼びかけるが、しんっと 1738

    recommended works

    kawauso_gtgt

    DOODLE探占の下書き。
    とりあえずさせたい会話を書き並べてここから埋めていく。強かな占い師と諦めることを知っている探鉱者の会話
    ノートンとイライとの間に歪な関係が成立してから早数日が経過していた。その間も毎日とはいかずとも二人が身体を重ねた夜はそう少なくなかった。
    例えばノートンが一人生き残ってしまった日。はたまた心労がたたってイライが使い物にならなくなった日。そういう関係であるという免罪符を手にしたお陰か、気づけばどちらからともなく自然と互いの部屋に足が向かっていた。
    何も考えたくないとばかりに身体を重ねていた。

    荘園の仕組みには理解不能な点が多い。どれだけ深い傷を負ったとしても荘園に戻れば完治してしまうし、不思議なことにハンター達は試合外では攻撃してくることもない。それどころかサバイバーとの交流を持つ者すら存在しているという。それから試合でボロボロになるのはサバイバーだけではない。使い古されたマップでさえも、次に試合が行われるときには染み付いた血の痕でさえも綺麗さっぱり消え去っているのだった。

    イライはどうやら同世代の女性陣に捕まっているらしい。
    元来そういった性格なのか。小さなものではあれをとって欲しいだの何を探しているだの、大きな物なら代わりに試合に出てはくれまいかと。余程の事でなければイライは大抵 1216

    sangatu_tt5

    MEMOリ占/付き合ってない伯猟のミス🔮を見る度に動悸がする。息が乱れ、顔が赤くなる。姿が見えなければすぐに彼を思い浮かべ、彼のそばに自分以外がいると思わず殺してしまいたくなる。これは、なんでしょうか……?
    ✂️が漏らした言葉に夫人も執事も口が塞がらない。血族の中で1番の力を持つ彼が幼子のようなことを言い出した。どう伝えるべきかと目を見合わせる。
    ✂️「………病気ですかね?」
    バル「いやいや、今まで1度もなったことないじゃろ」
    マリ「多分それは治らないと思うわよ」
    ✂️「治らないんですか?」
    困ったと俯き、✂️は思考を巡らす。
    治らない…治らないだろう。だってこれは憶測が正しければ恋の病だ。人間がかかるものだ。
    純血種、血族の頂点、永遠の生命、全てを持ち合わせた✂️は子供を必要としない。繁殖など不要だからだ。繁殖が必要なのは永遠に近い生命を持たぬ下等なモノたちのみなのだから……
    夫人も執事も過去に人間であった頃ならいざ知らず、今はそんな感情凍てついている。
    マリ「なら、🔮に聞いてみれば?病気をするのは人間よ?彼の方がきっと詳しいし、解決策も出てくるのではないかしら?」
    本人に恋愛相談をしろと言うのも変な話だが、適任者 2836

    sangatu_tt5

    MEMO騎🧲のために観🔮になった騎観/探占🧲と付き合っていて同棲もしてる🔮🧲のループを天眼によって理解したが、解決方法が分からない。🧲のレースが始まってから思い出すため、事前に忠告も出来なかった。
    そんな時に、「あなたの天眼があれば、この奇っ怪な現象をどうにかできる」「あなたが私たちの組織に入ってくれれば、彼を救える」と翻弄⚰️に言われ、組織に入ることに決める🔮
    🔮達の陰ながらの活躍もあり、🧲が久しく帰っていなかった家に帰ると違和感があった。
    一人暮らしにしては広い家、使ってもいないのに埃のかぶっていない部屋、自分しか写っていないのに飾られている写真。食器の足りない食器棚。
    一人で暮らしていたはずの家は何か足りなかった。謎の空白が自分の横に寄り添っている。それが大切なものだったことは分かるのに、それが何かも思い出せない。
    大切なものを忘れてしまった恐怖が背筋を過ぎる。何を忘れたのか思い出そうにもモヤがかかって鮮明にならない。
    それから、🧲は失った何かを求めて街を徘徊するようになる。レースが休みになるシーズンになれば隣町、さらにその隣町まで出向き、空白を求めた。
    宛先もなく、それがどんなものかも分からないまま🧲 2007

    kawauso_gtgt

    PROGRESSモグ束(おか束+モグ月前提&おか、月は故人)
    モグに惹かれてる事実とおかのことを自分だけは忘れちゃいけない罪悪感に苛まれて限界な束が爆発する話を書きたかった。拗らせすれ違い両片想いが好きすぎた。

    あとおかが死んだと頑なに認めない束に事実を突きつける土竜が書きたかったなどと供述しており…
    真っ暗な部屋が好きだった。
    此処にいれば誰にも痛いことをされたりしないし、理不尽に怒りをぶつけてくるような人もいない。点々と、少しだけ空いた隙間から差し込む光はまるで、いつか絵本の中で見たオホシサマのようで。閉ざされた世界を照らしてくれるそこは、いつだってイライの心の拠り所だった。
    冷たい床に転がって、暗い夜の海に意識を遊ばせていると、フードに覆い隠された耳がよく聞き慣れた足音を捉える。軽やかな足音は一歩、一歩と近づいてくると、イライのいる部屋の前でぴたりと止まった。かちゃりと開いた扉へと視線を投げると、何事もなかったかのようにイライはもう一度天井を眺める。
    扉が閉まると同時、近づいてきた影が上からイライを覗き込んで、それから数秒。地面に横になったイライの隣に、影が蹲み込む。鼓膜を震わせる声は、すっかり聞き慣れたあの子の声だった。
    「やっぱり此処にいた」
    「……どうして分かったの?」
    イライが首を傾げるのも当然のことだ。だって此処は院内の誰も知らない筈の場所。否、もしかすると気付いている人間もいるのかもしれないが少なくともイライが自らこの場所を誰かに明かしたことはない。誰も知らない、自 3152