ファーストコンタクト:トウハ&ファミー編普段トウハは、自分から他のヒトに声をかけることはほとんどなかった。誰かと一緒にいるときは別だが、一人のときはいつも一人である。もちろん、ナワバリバトルのように必要な場面では話すこともあるが、自分から積極的に関わることは滅多になかった。
そんな人見知りの激しいトウハが、その日、ハイカラシティで初めて見知らぬヒトに声をかけた。考えるよりも先に口から言葉が飛び出していた。
黄色いゲソにFCジャージーをまとったガール。彼女の手には二画面に分かれた携帯ゲーム機が握られている。それを目にした瞬間、トウハの口から上ずった声が漏れた。
「え⁉ そっ……それ、3DSですか⁉」
「……え?」
彼の声に、少女はくるりと振り返った。ちょうど待機中だったのか、それとも操作の合間だったのか、こちらを向いたままぽかんと口を開けている。無理もない。いきなり見知らぬヒトに声をかけられただけでなく、自分の私物に注目されたのだ。不審に思われても仕方がない。
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