12/1あなたの目の下の隈が消えるまで 12月に入り、我々……メフィスト様と私は訳がわからないレベルで忙しかった。具体的に言うとベッドに入って互いに抱きしめあうと同時に寝落ちしてコトに及べないくらい忙しかった。
そのせい……だけではないだろうけど、メフィスト様の機嫌がいたく悪い。人相が悪くなったし(それでもカッコいい。写真撮ったらキレられそうで撮れないけど)、治めている土地でのトラブル解決が雑になっている。喧嘩? 両方吊るせばいいんじゃない? みたいな。概ね同意なのだけど、一応経緯の確認くらいしましょうね……。
しかしここは秘書兼SD(非公認)として、どうにかメフィスト様を休ませる必要があると見た。毎日甘いモノを欠かさないようにはしているけど、なんかこう、根本原因を除く、のは無理なんだけど、もうちょっと効果的な対処をですね……。
「メフィスト様」
「んう」
「夕食のお時間です。お忙しいのは承知しておりますが、そろそろ切り上げられて、」
「食べさせて」
メフィスト様は目の下を真っ黒にして私を見上げた。目が据わっていて、アカンやつだ。
「……承知しました。では食堂まで」
「言っておいてなんだけど、いいの」
「お疲れなのは承知しておりますから。ご要望とあらば食堂までお姫様抱っこでお運びします」
そう言って両手を出したらメフィスト様は吹き出した。ずいぶん久しぶりに笑っているところを見た気がする。
「ごはんの後のお風呂で背中流してほしい」
「厨房の片付けがありますので」
「お風呂の後のベッドは?」
「……承りました」
メフィスト様は目をパチっと見開いた。
「いいの?」
私は振り向いてメフィスト様の肩に手を置いた。額と角の付け根にキスをして至近距離でその疲れた目を覗き込む。
「疲れたときは暖かくしてお腹いっぱいにして、しっかり眠るものですよ」
「え」
「まずはお食事です。メフィスト様のお好きなものを腕によりをかけて、たんまりご用意しました。食堂も温かくてあります」
後ろに下がりできるだけ柔らかい顔をした。まだポカンとしているお疲れの我が主に微笑んで手を差し出す。
「参りましょうメフィスト様。ごはん、一緒に食べましょ」
「……うん」
手を取って、重苦しい書斎から引っぱり出す。まずはお腹をくちくせねば始まらない。その目の下の隈が消えるまで、存分に甘やかす所存である。