12/14泣き止むまで甘やかして 報告のために秘書を連れて13冠である俺、メフィストはバベルへ行った。ベルゼビュート様に報告を終えて秘書が待つと言っていた食堂へ行くと話し声がする。
覗くとそこには俺のかわいい秘書と英雄バールが喋っていた。
「だからー、そんなもので釣られないです!」
「どうだかな」
「いーっ」
「テメエの飼い主のお戻りだぞ」
声をかけそびれていると、バール氏が振り向いてニヤーっと笑う。俺を見上げて彼女はパッと笑顔になるもバール氏を睨んで、
「飼い主とか言うな!!」
と怒って立ち上がる。バール氏の方もハイハイと聞き流して立ち上がり、失礼するぜと食堂を出て行った。
「お見苦しいところをお見せしました。メフィスト様。御用はお済みでしょうか?」
彼女は俺を見上げてふわっと微笑む。けど、それに笑顔を返す余裕がない。そして気付いてしまう。
先日、俺がバチコちゃんやナルニアくんと喋っているところを見て目を大きく開いていた彼女。そのときのこの娘の気持ちがようやくわかる。当時は待たせちゃったし、ちょっとした嫉妬かなとか思っていたけれど、そんなもんじゃなかった。めちゃくちゃに胸が苦しい。
「メフィスト様?」
「ごめん、帰ろ」
「はい」
彼女は目をパチパチと瞬かせつつ歩き出す。先日の彼女の様に、なんでもない、大丈夫だなんてとてもじゃないけど言えなかった。
帰って先にシャワーを浴びさせてもらう。彼女は笑顔で俺を見送る。こういうとき、あの娘は何も言わないけどたぶんわかっているんだろう。普段は風呂に送り出すときにあの娘が笑顔になることなんてないのだから。
溜息を吐きながら脱衣所を出ると彼女はそこで待っていた。
「メフィスト様。わたくしもシャワー浴びてきますから先にベッドで待っててくださいね」
「……うん」
寝室は暖まっていて、ベッドサイドのテーブルには魔茶が用意されている。泣きたいような気持ちでベッドの縁に座って魔茶を飲んでいるとホカホカの彼女がやってくる。
「メフィストさま」
「ん」
甘えるような声で彼女は俺の頭を抱きしめる。甘えているのは俺の方なのに。ぎゅうぎゅうと抱きしめてから蕩けるような笑顔で角、眉間、目尻と順番にキスされる。
「そんな顔、しないでくださいよ」
「どんな顔してる?」
「泣きそうでいらっしゃいます」
「……泣き止ませてよ」
「喜んで」
その後めちゃくちゃ甘やかされた。ちょっと怖いなって思うくらいに甘やかされた。なにが怖いって、この手腕を相手を選んで発揮したら国が傾くレベルで甘やかされたことだ。
「俺以外のこと甘やかさないでね。国が傾く」
「なに言ってるんですか。メフィスト様以外に甘やかしたいヒトなんていませんよ」
「……うん」
本当に怖い悪魔だ。