12/13他愛もない嫉妬心を安心させて バベルにてメフィスト様が13冠の集いに参加されているので、秘書である私はバベル内の食堂で夜ごはんを食べていた。集いの日は食堂のごはんも豪華なので嬉しい。
時間になったら665階に上がってメフィスト様が出てくるのを待つ。他のSDの方と並んで待っていると扉が開いた。
「メフィスト! またアッチに面倒事押し付けやがって!!」
「俺も忙しいからさあ」
「アッチも忙しいわ!! ナルニア! テメーもだぞ!」
「貴様が鈍臭いのが悪い」
「鈍臭いだと!?」
そこでメフィスト様が私に気付いて、じゃあねーとか言ってバチコちゃん、ナルニア様と別れてこちらへとやってくる。
「お待たせ。帰ろうか。……って、どしたの」
「……なんでも、ないです。帰りましょう」
メフィスト様はニコっと顔を緩めてから先を歩く。
わーーー!!! 私は!! 何を考えたのか!!
そう、私は今、バチコちゃんに嫉妬した。同期……と言っていいのか、ともかくメフィスト様に対するその気安い態度に嫉妬したのだ。私とバチコちゃんでは立場が違うのに。
恥ずかしい!! めちゃくちゃに恥ずかしい!! 何が恥ずかしいって、それをメフィスト様に気付かれたのが! 恥ずかしい!! しかも指摘すらされなかった……やだ……恥ずか死ぬ……。
バベルからメフィスト様の後を飛んで帰る。先程のことを考えると墜落しそうなので帰宅してからやることを延々と考える。風呂用意して邸内を温めて……。
無事(?)に帰宅し扉を閉めて振り返ったら目の前にメフィスト様がいた。
「わ」
外套も脱がずにぎゅうぎゅうと抱きしめられる。なんだなんだ。
「いかがなさったのですか」
「お詫び」
「お詫び?」
「さっき、寂しくさせたみたいだったから」
蒸し返さないでくれるかな、ほんと。
「あの、すみません。だいじょぶ、だいじょぶなので」
「俺が大丈夫じゃないからダメ」
そう言ってメフィスト様は離れる気配がない。苦しいし上着脱ぎたいし、メフィスト様の外套がシワになるし、お風呂とか暖房とかやることあるのに。あるのにチョロい私はろくに抵抗もせずメフィスト様の腕の中に収まっている。
このヒトは、本当に私を甘やかすのが上手くて、こうしてズブズブと抜け出せなくなっている。
「メフィスト様」
「うん」
「ありがとうございます」
「いいよ。俺が好きでやってることだから」
そう言ってメフィスト様はやっと離れた。外套を預かり壁にかける。自分も上着を脱いで片付けて、やっと家事にとりかかる。
先程よりも明らかに足取りが軽くて、我ながら単純過ぎて可笑しかった。