12/4たまに鳥籠に入れておけば良かったと後悔する 秘書と共にバベルへやってきて、彼女と別れて報告に行こうとしたらナルニアくんが来た。行き先が一緒だったので並んで歩き出して、ふと振り返ったら俺の秘書がナルニアくんが連れてきた魔関署の悪魔と並んで話しながら歩いている。
それだけでもう、めちゃくちゃ嫌なのでナルニアくんに先行っててと言って彼女を追いかける。
「メフィスト様、いかがなさいましたか?」
振り向いてふわりと笑うから、安心した気持ちと隣に突っ立っている魔関署の悪魔に見せたくない気持ちとでなにも言えず、ちょっと悩んでからやっと出てきた言葉は、
「急いで終わらせてくるね」
だった。我ながら情けないこと言ったと思う。けれど彼女は、
「お待ちしております」
と嬉しそうに言うので、やっと不安がなくなる。不安。かわいいかわいい俺の秘書はすぐに誰かに可愛がられるので、俺はすぐに不安になる。この娘は俺のなのだ。やっぱり家に置いてくればよかった、なんて。
ニコニコと見送られて報告に向かう。たぶん彼女の横には魔関署の悪魔がまだいるから振り返らないで歩く。なんでもないのは頭ではわかっているけれど、だからと言って見て楽しい光景ではないので。
戻った先には何故かナルニアくんが待っていて、こてんと首を傾げていた。
「先に行ってて良かったのに」
「……面白いものを見せてもらった」
「見世物じゃないんだけどね」
ニコーっと笑って見せるとナルニアくんは無表情のまま歩き出す。無言のまま目的地まで歩いて、それから用事を済ませて先に戻る。
彼女がいるのは食堂のはずで、向かうと一人で手帳を捲っていた。
「お待たせ」
「お疲れ様でございます」
「……一人?」
「はい。アミィ様は先に帰られました」
「……そっか」
淡々と全然その悪魔に興味がないみたいな顔で彼女は言った。たぶん本当に興味がないのだろう。この娘はなんというか好きな人以外はどうでもいい人、みたいな節がある。
そう考えるとちょっと、だいぶ気分が良い。この娘が興味を持つのは俺だけでいい。
「帰ろうか」
「承知しました。報告の結果は戻ってから教えてください」
「うん」
少し悩んでから彼女の手を掴もうとしてかわされた。
「メフィスト様。仕事中です」
「……」
「そんな顔してもダメです」
彼女はさっさと歩き出す。それが嬉しくて、俺は雛鳥のように付いて行った。