12/6朝の陽射しと仄暗い下心 俺の秘書の朝は早い。目が覚めるとだいたいいないか、起こされるかどちらかだ。本人は
「主人より遅起きする秘書ないしSDはいません」
と言うけどSDじゃないし、起きたときに腕の中にいるとすんごい幸せだから寝ててほしい。俺が頼んだことのおおよそは聞いてくれるけど、たまにダメなこともあって早起きについてもダメなことの1つだった。(あとは風呂。よほどの理由がないと一緒に入ってくれない)
「おはようございます。メフィスト様」
「……おはよ」
今日も起こされた。もちろん給仕服やスーツでぴしっとしてるのも好きなんだけど、パジャマでふにゃっとしてるところも好きなので、今日も見損ねたな……という、ちょっと拗ねた気持ちから朝が始まる。
とはいえ俺の秘書は優秀なので拗ねた顔をすればめちゃくちゃ甘やかしてくれる。起き上がるまでくっついてキスをしてくれて、顔も拭いてくれるし服を選んだりも一緒にするし食堂まで連れてってくれて……これは介護なのでは。気付いてしまった。俺はかわいいかわいい秘書にメンタル介護されている!
というわけで、ちょっと反省したので次の日は彼女が起きてすぐに自分で起きた。さっさと着替えて彼女を探しに行く。目星をつけて厨房に行けば、やはり朝ごはんを作っている彼女がいた。
一通り支度が出来たのか、窓際でボケっとマグカップを傾けている。黒い髪とまつ毛に朝日が当たってキラキラ光っていて息を呑む。ス魔ホで写真を撮ったらシャッター音で彼女が気が付いて顔を上げた。
「おはようございます。メフィスト様」
「おはよ」
「今日はお一人で起きられたのですね。只今朝食をご用意致します」
……? いつもツンと澄ましているいるけれど、なんというか、それよりもちょっと……拗ねてる?
「……寝てた方が良かった?」
「そう、いうわけでは」
図星だったようで、少し口を曲げた。
「……寝ているメフィスト様を起こすのが……その、好きだったので」
……俺はどうも思い違いをしていたらしい。メンタル介護されているのではなく、好きで甘やかしていた、らしい? こんなときどんな顔をすれば良いんだ? この娘は俺をどうする気なんだ……一人で生きられなくなっちゃう。
「……明日から、また起こして」
「はい」
「でも週一でいいから、朝一緒に寝てて」
「……はい」
「朝ごはん、一緒に食べよ」
「用意します」
「ここでいいよ」
厨房のテーブルに並べてあった食事をそのまま席について一緒に食べる。二人だけだし別にいいでしょ。
食事をする彼女はやっぱりキラキラしていて、眩しいから暗い寝室に連れて行きたくなる。