12/20ムカつくので自慢だけして帰る さて、直近でやらねばならぬのがベリアール様からの依頼である。13冠の統治する範囲の丁度中間で、かつ近くには貴族の邸宅街のある場所に魔獣が住み着いているので駆除されたし、というものだ。
その13冠の一人が我がメフィスト様、もう一人がバール様というわけで、私と何故かポロちゃん様がおいでなすった。
「あーら、あんたなの。相変わらず貧相な佇まいだこと。デルちゃんとは比べようもないわね!!」
「何故ポロちゃん様が?」
「あの男に暇なら行ってこいって追い出されたの。悪魔使いが荒いわ!!」
でもね、とポロちゃん様はニターっと笑って声を潜めた。
「アタシなら、あんたに誑かされないでしょ。相変わらずあの男はあんたに甘いわね!!!」
「往生際が悪いだけです。ともかく、アレをなんとかしましょう」
我々が飛んでいる足元にはうじゃっと魔獣が沸いていた。普通に気持ち悪い。狼……いや、犬の成り損ないというか、腐りかけみたいのが、山程……。気持ち悪い!
「あんた、なんとかしなさいよ」
「……しますけどお」
別にいいけどさあ、と思いつつ。手をかざす。範囲を魔獣の辺りに定めて、ギュッとする。と、その辺りの空間がギュッとなるので用意しておいた性能の良い圧縮袋に入れて、縛っておしまいである。
「あんたのその能力、気持ち悪いわねえ」
「失礼な」
「なにがどうなってんのよ」
「意識した範囲を圧縮しただけですよ。ギュッです」
ポロちゃん様はうへっと嫌な顔をした。説明させといて失礼な悪魔だな?
「それ、なんでも圧縮できるわけ?」
「なんでもは無理です。非物質なら、まあだいたいいけます。今回は形がまだ定まってませんでしたし、魔力でなんとか形状を保ってる程度なんで全然いけましたけど」
「……普通は自分以外の魔力そのものには干渉できないのよ?」
「そういうことができる家系能力なんです」
「気持ち悪いわー」
重ね重ね失礼だな? まーいいや。終わったから帰ろ。
「そしたら、これバール様にお渡しください。よしなにされると思いますから」
「……あの男、あんたにバール様って呼ばれる度に自棄酒してるのよ」
「飲み過ぎて死んだら香典をお持ちしますね」
「辛辣!! ところで、あんたの主どうなのよ。いい男かしら?」
答えたくねえな!! ポロちゃん様の目が好奇心でキラッキラしている。
「ハチャメチャいい男ですけど、私のなんでポロちゃん様には見せませんよ」
「あらーいい顔するようになったじゃないの! 恋は乙女を美しくするわね!! ご覧なさい、あたしのうつくしさ!」
「……今日は失礼します」
「ちょっと!!」
喧しいポロちゃん様を置いて、私はさっさと飛び立つ。あーうるさい。あー腹立つ。
私の顔を見る度に貧相だなんだと言うことを、許さないし根に持っている。