12/29買い出しに行くなど さて年末である。13月いっぱい、出来る限り引きこもるために、私とメフィスト様はデビモールに買い出しに来ていた。
「わー、混んでますね」
「すごいな。帰る?」
「まだなんにも買ってないです!」
このようにメフィスト様はややテンション低めで、やたらと帰りたがっていた。理由は昨晩の貴族会でバール様に絡まれたからで、終日引きこもっていたいということだ。
「家にいていただいて構いませんと申しましたのに」
「君を一人では行かせられない」
「何でですか。今まで普通に買い出しは一人でしてておりましたよ」
「……なんでも、です」
そう言って握られた手に力が入る。まあ、いいか。
「左様ですか。ともかく行きましょう」
一つ一つは大したものではないけれど、買うべきものは山のようにある。食材はもちろん、洗剤みたいな消耗品やメフィスト様の防寒具なんかも見に行きたい。
「今日はメフィスト様もいらっしゃいますし、たくさん買えますね」
「荷物持ちくらいならいくらでもするよ?」
「いえ、私、物質転送の魔術が苦手なんです。メフィスト様がいれば! いっぱい買っても家に送れます!」
「なるほど? 帰ったら練習しようね」
「……はい」
蚊の鳴くような声で返事をしたら笑われた。
その後は手を繋いでプラプラしつつ、買い物をする。途中でクレープを食べたり、似合うマフラーを探したり、なんというか普通に遊んでしまった。
「これで以上です。帰りましょうか」
「うん。忘れ物はない?」
「たぶん大丈夫!です!」
「じゃあ帰ろう今すぐ帰ろう」
お家大好きかな……。メフィスト様に手を引かれて家路を急ぐ。夜ごはんは作り置きだよお。
「明日で仕事納めだ」
「明後日は掃除の残りをして、13月に食べる祝い料理を用意します」
「その次の日は13月か。早いものだね」
「ですねえ」
会話が老夫婦みたいだけど、それはそれ。楽しい休みに向けて、まだ休めない。