1/4初売りお揃い甘やかされ「初売り! ですよ!」
「うーん、すごい混みようだ。帰る?」
年明けの初売りを行っているデビモールは、それはそれは混んでいる。油断するとたぶんあっという間に逸れそうで、私は繋いでいたメフィスト様の手を強く握り、ついでに反対の手で腕も掴んだ。
「お戻りですか? お気をつけて♡」
「流れるように放流しないでくれる? もちろんお付き合いしますよ」
メフィスト様は苦笑して私の手を握り直した。私はうへへと笑って歩き出す。目的は私のコートや冬物だ。
「これどうですか?」
「かわいいね」
「こっちは?」
「似合ってるよ」
「これは、うーん」
「いいと思うけど」
「そればっかじゃないですか」
不満の声を上げるとメフィスト様はしれっと
「どれ着ても似合うからね」
などと言う。そうじゃないんだよ〜〜〜。
「全部買えば? あ、これは?」
「それ、セール対象外ですよ」
「似合うならどれでもいいよ。それくらいの給料は出してるつもりだけど」
「いただいておりますけども。せっかくだから安く買いたいのです」
「なるほど?」
メフィスト様は首をかしげる。……この方、さては未だかつてセールとか来たことないな? そりゃそうか。育ちが違うもんなあ。たぶん良いものを適正な価格で、なんならちょっと色を付けて購入してきたタイプの方だ。
「じゃあやっぱりこれにしよう。俺はこのジャケットを羽織る君を見たい。ついでにこれ、同じデザインのメンズも買って一緒に着たい」
「……承知しました」
そう言われたらゴネられない。結局メフィスト様に買ってもらってしまった……。
「他は?」
「んー、特にないです。この初売りのざわつきを感じに来たとこがあるので」
「そう? じゃあもうちょっとプラプラしようか。逸れないようにね」
そう言ってメフィスト様はまた私の手を握り直した。なんやかんや甘やかされていて、すごく嬉しい。