1/6仕事を始めるから背中を押して 悪魔メフィストフェレスの本質は仕える者である。つまり、仕えられる側にはそんなに慣れていない。
何が言いたいかと言えば、母性全開でよしよしされて俺は一体どうしたら!!!という話である。
今日は仕事始めで、朝から憂鬱だった。起きたくない。13月中は朝から晩まで腕の中にいたかわいい娘はさっさと起きてしまい、一人でベッドでうだうだしている。いや、していた。
秘書兼SD(非公認)がやってきて、いつもよりだいぶ甘い声で
「おはようございます、メフィスト様♡」
と言うから布団から顔を出したら笑顔で、やたらと可愛らしい給仕服を着ていたのだ。(いつもは完全に真顔で布団を剥ぎ取られる。というかいつ買ったんだ、あんなヒラヒラした服)
「……え、うわ、うん? お、おはよう?」
「タオルをどうぞ。熱めのお湯も用意してございます」
「えっ、どしたの。熱ある?」
「ありません♡」
熱があるとか、酔っ払ってるって言われたら納得したかもしれない。よくわからないけど、わからなすぎて怖いので大人しく言われたとおりに顔を洗ったり着替えたりする。
朝ごはんもやたら豪華で俺の好きなものがたくさん並べてあった。怖い。今日でお暇させていただきますとか言われそう。
「あの、何かあった?」
「何か、ですか?」
朝ごはんのあと、書斎で仕事をしていたらコーヒーと茶菓子を持ってきてくれたので(それもいつもより大盛りだ)聞いてみた。
「や、いつもより手厚いと言うかなんと言うか」
「……仕事始めがお辛そうでしたので」
「ん?」
どうにも原因は俺だったらしい。彼女曰く、昨日俺が酔っ払って、やれ仕事をしたくないだの、もっと休みたいだのウダウダ絡んでいたから甘やかそうと決めたらしい。
「その服は?」
「これは、以前バチコちゃんとパイモン様がくださったのです。たまには可愛い服を、と」
そう言って彼女はスカートの裾を摘んで、どうですか? と聞いてくる。良いと思います!! 思いますけど、家の中だけにしておいてください!
「……すごく、いいと思います」
「そうですか。着慣れませんが、ではたまに着ますね」
ニコッと笑って短いスカートを翻し部屋を出ていく彼女は控えめに言ってめちゃくちゃ可愛かったし、ベッドに連れ込みたいけど、たぶんやったらブチ切れられてあの服は捨てられるだろうから、グッと堪えて仕事に戻った。