1/9かわいいのにたまにカッコイイのはズルい 俺のかわいい秘書が腕の中ですよすよと寝ている。やたらと幸せそうな顔で寝ていて、どんな夢を見ているのか気になる。普段は目が覚めたらいないことが多いけど、今日は珍しく俺の方が先に目が覚めたのだ。
かわいいのでマジマジと眺めていたらもそもそと動いて、ゆっくりと目が開いた。
「ん、めふぃ、さま」
「おはよ」
「おはよ、ござ、ふわ……ます」
「ずいぶん俺の名前呼んでたけど、どんな夢を見てたの?」
100%の嘘だ。寝息以外特になにも漏らしていなかった。いなかったけど、彼女の幸せそうな夢に俺が出てこないわけがないのでそう言ってみた。
「えっ、声に出てましたか? メフィスト様とデートしてる夢見てました」
……俺との夢であって嬉しい反面、言わせてしまった感も拭えない。
「どこに行ってたの?」
「ウォルターパークです。行ったことあります?」
「ない。……最近出来たところだからね」
彼女からしたら最近ではないかもしれないが、俺からすれば最近の範疇だ。
「今度行きましょうねえ。他の方の領地内なので視察というのは通らないかなあ。ちゃんと休みの日に行きましょう」
まだ少し寝ぼけた顔で、それでも嬉しそうにする彼女の頭を撫でる。目が細くなって、また寝そうだ。
「ふわ、眠い。でももう起きる時間ですね……起きなきゃ……」
「もうちょっと寝ててもいいよ」
「寝たらさっきの夢の続き見られるかなー。メフィスト様と観覧車乗るとこだったんです」
「……それは、本物に一緒に乗ろう」
そう言うと彼女はふにゃっと笑って伸びをした。
「それもそうですね。じゃあそのためにも起きます。メフィスト様はいかがなさいますか?」
「起きる」
一人で寝てても寂しいし、とは言わない。
ふにゃふにゃしていた彼女は起きると決めるやいなや、すぱっと起き上がってベッドから出る。寝起きが良くて羨ましいやら、置いて行かれて寂しいやら。
「では起きられてください、メフィスト様。一緒に参りましょう」
「うん」
彼女の手がすっと差し出される。やたらと男前に洗面所に誘われた。こうやってたまにかっこ良くなるの意味わかんないな。好きになっちゃうから止めてほしい。