1/11やられたら倍にして返すタイプ「はい、どーぞ」
食後のアイスを食べていたメフィスト様が、突然スプーンを差し出してきた。
「……どうも?」
くれるならもらおうかと口を開けたら、
「やっぱり止めた」
と、スプーンを引っ込める。意味わかんないな。たまにメフィスト様はそういうじゃれあいをしたがる。
正直面倒だと思っている。普通に意味わかんないし。
「メフィスト様」
「はい」
私が真顔で見返すと、気が引けたのかメフィスト様の顔が引きつる。
立ち上がって手元のアイスをスプーンですくいメフィスト様の横へと移動する。
「メフィスト様、あーん」
「え」
「あーん」
「……」
恐る恐る口を開けたメフィスト様に微笑んでからアイスを口に突っ込んで鼻へとキスをした。
「っ」
「お食事、下げますね」
「……はい」
目を白黒させたメフィスト様を放ったらかしてテーブルを片付ける。
翌日のおやつ時。仕事中のメフィスト様にコーヒーと茶菓子を出しに行くと、近くにと呼ばれたので机を回って横に行く。
すると手を引かれて膝に座らされ、口に菓子を突っ込まれた。
「……なん、れすか」
「昨日のことを反省しました」
「反省?」
「意地悪したから、やり返されたので、甘やかしたら甘やかし返してくれるかなと」
見上げたメフィスト様の顔は穏やかな笑顔で、特にどうということもない。
なので膝から降りて膝をメフィスト様の足の間に置く。両手で頬を挟んで至近距離で目を覗き込んだ。
「嫌でしたか?」
「えっ」
「意地悪されるの、お嫌でしたか」
「い、嫌って、ほどでは」
お菓子のうち、細長くてチョコレートがかかっているものをメフィスト様の口に突っ込む。大人しく食べるので反対側を齧る。
「では、たまにならどうぞ。思いっきりやり返しますから」
「ひえ」
残りを一気に食べてメフィスト様の唇についたチョコレートを舐めてから体を離して踵を返す。
ちょっと楽しかったことは黙っておこう。