1/13反りのあわない悪魔の話 新年最初の13冠の集いが開催された。私はメフィスト様を送り届けた後、魔界塔の食堂へと向かう。集いのおこぼれでメニューが豪華で嬉しい。
途中まではオペラさんもいらしたけど、イルマくんにごはんを用意するからと帰っていった。
「あ、久しぶり」
「……どうも」
入れ違いでやってきたのは魔関署のキマリス様だった。
私はこの悪魔が苦手だ。なんというか、可愛らしい顔の反面、流れるように引っ掻き回してくる。前回ここで会っていらんこと言われてメフィスト様を怒らせたことを忘れていない。
「あはは、嫌われちゃって」
「余計な事をおっしゃいますので」
「本音だけどね。仕事ができる子がキマリスの家に来たら嬉しいし、アミィくんを丸くしてくれてもありがたい」
「どちらもお断りです!」
プイッとそっぽを向いて続きを食べる。
だと言うのにキマリス様は私の向かいにすわった。移動してえなあ!! 目の前に山ほどの皿が積まれていなければ移動するのに。
「アミィくんとは話したんでしょ」
「……」
「俺よりアミィくんの方がいいのかー。あんまり言われたことないんだけど」
「アミィ様は余計なことを言いませんので」
ギロッと睨むとキマリス様はまた面白そうに笑った。たぶん私が念子だったらめちゃくちゃ逆毛を立てている。ふしゃー!!
と、食堂にまた一人入ってきた。
「キマリス、ここにいたか。……貴様もいたのか」
「……どうも」
アミィ様は私の顔を見て止まる。別に嫌いではないが、キマリス様と合わさるといらんことになるから会いたくなかった。
そんな私の気持ちなど知らず……いや、知っていてわざと、キマリス様の対応は軽い。
「や、アミィくん。なにかあった?」
「そろそろ集いが終えるからナルニア様をお迎えに上がったのだが魔関署で貴様宛の手紙を預かった」
「ありがと。そういえばこのメフィスト様の秘書の子、俺よりアミィくんの方が好きだって」
「へえ?」
私の肩に指が食い込んだ。デジャヴだなあ!!
正面ではキマリス様がニコーっとしていた。振り向けないのでアミィ様がどんな顔をしているのかはわからない。メフィスト様はまあご想像通りだろう。
「メフィスト様」
「うん」
「交戦許可を」
「えっ」
「魔関署と戦争になったら、味方してくださいね♡」
「ちょ、待って待って、ダメだから、こんなとこで!!」
キマリス様の顔が焦ったものになり、アミィ様が私とキマリス様の間に入る。メフィスト様が私を羽交い締めにするが、そんなもんで私の怒りが収まるか!!
「離してください、メフィスト様! アミィ様もどいてください。諸悪の根源をぶち殺します」
「ダメだって! わかったから、怒らないから!!」
「私は怒ってます!!」
バタバタと足音がしてアザゼル様とナルニア様がいらっしゃる。アザゼル様が呆気にとられている間に、メフィスト様は私に精神安定の魔術をぶち込んだ。
「……うちのが失礼した」
「こちらこそ、取り乱してしまい申し訳ありませんでした」
冷静になると恥ずかしいので頭を下げる。さすがにアザゼル様に頭を下げさせて自分だけカリカリはできない。
しかし謝ったのはバベルで怒り狂ったことのみであり、キマリス様については許さない。いつか殴る。
帰宅してからメフィスト様にも結局怒られた。やっぱり奴はいつか叩く!