1/14自撮りと他撮り「はい、こっち向いて」
そう言われて振り向くと写真を撮られた。
「うん。かわいく撮れた」
「左様ですか」
……私は写真が好きではない。今まで撮られた写真は、ほんとーにろくな顔をしていなかった。
けど、メフィスト様は時折私の写真を勝手に撮ってはなにやら満足そうに見返している。
「一緒に撮ろう」
「承知しました」
それで主が満足するならとメフィスト様の横に並ぶ。というか、この方はそんなに写真撮ってどうするんだ。
「どんどん可愛くなるよね」
「……は?」
意味がわからなくて、思わず低い声を出してしまってメフィスト様が目を丸くする。
「失礼しました。その、意味がわからなくて」
「写真嫌いだもんね。けど、俺が小まめに写真撮ってるからさ、だいぶ慣れてきてるよ?」
「写真に、ですか」
「うん。写真に撮られることに」
「そうでしょうか。先日学校で撮ったときはひどい有り様でしたけど」
そう言うとメフィスト様が嬉しそうに笑った。
「それはさ、俺に撮られることに慣れたんだよ」
「?」
「俺が撮ったときだけ、かわいい顔してる」
そういうもんなのか……?
まあ、メフィスト様が嬉しそうだし、そもそも私を撮るのはこの方だけだから、別にいいか。
「……私も撮ろうかな。メフィストさまー」
「うん」
ス魔ホを取り出してメフィスト様に並んでもらって写真を撮ってみる。
「やっぱりやめておきますね」
「どうしてこうなった……?」
私が撮った自撮りを見てメフィスト様の顔つきが胡乱になった。申し訳ねえな。
「メフィスト様に撮ってもらった時しかまともに写らないみたいです」
「……それはそれで有りか」
なにやら納得されたらしい。
写真に写るにも才能がいると思う。私にはそれがない。それにメフィスト様のス魔ホの画像フォルダが私でいっぱいなのは気分が良い。