1/15いろいろあれそれダメになる「これはダメだ」
「ダメですねえ」
何かと言えばダメになるソファだ。
だいぶ前に発売されて人気だった品だけど、この度メフィスト邸のリビングに導入したところ、このようにメフィスト様と仲良くダメになっている次第である。
沈んだのが夜で良かった。昼間だったら仕事を放棄していた。けど夜は夜でやることあるんだよなあ。
「起き上がれる気がしない」
「そうですねえ。週も半ばですし、やること山ほどあるんですけどお」
「もう明日でいいんじゃない?」
「メンタルまでダメになってしまいます」
体がいい感じに沈んで起き上がれない。無限に寝てしまう。うっかり大きいのを二つ買ったのがいけなかった。並べて置いて、それぞれで沈んだら、マジでどちらも起きてこない。
「ね、そろそろ寂しいからこっちおいでよ」
「起き上がれないです」
「じゃあ俺が行く。……起き上がれないね?」
「やはり」
私の方は半分以上寝ていた。もう起き上がれないし、眠いし。このまま寝てもいいのでは?
「ちょ、寝ないでよ! 寂しいんだけど!?」
「んー」
「ダメじゃん! もー!」
メフィスト様が何か言っている、と思ったら抱き上げられた。
「こんなところで寝ない!」
「……すみません、完全にダメになってました」
「ほら、俺は風呂に行くから。まだやることあるでしょ」
「あります」
降ろされたので厨房に向かう。風呂に連れ込まれるかと思ったけど、メフィスト様はさっさと風呂へ行ってしまった。別に寂しくはない。ない!
「風呂空いたよ」
「承知しました」
しばらくしたらメフィスト様が戻られる。
「あのソファは休みの日だけにしよう。あと沈むときはどっちか一つに二人でね」
「そうですね。一人だと起き上がれないです」
「沈んでるのかわいいけど、寂しいから」
「……そうですね」
頷くとメフィスト様は嬉しそうにする。
「じゃ、先に寝室言ってるね」
そして私の耳元に口を寄せた。
「寂しいから早く来てよ」
「わ、わかりました」
いそいそと風呂に向かう。今夜はたぶん、眠れない。