1/16留守番と大量のお土産 メフィスト様が魔界塔へ行くというのでお供をしようとしたら止められた。
「……また暴れられると困るので」
「先日はすみませんでした」
あれはキマリス様が悪いと思っているけれど、暴れたのは私なので態度だけでもしおらしくしておく。
キマリス様の暗殺はもちろん諦めていない。
「それにね」
メフィスト様が目を逸らして言い淀んだ。
「あの悪魔に君がからかわれているのは、やっぱり面白くないし」
「あの方刺してきていいですか?」
「それはダメ。なんでそんなに殺意高いの」
「メフィスト様からすれば面白くない程度の話かもしれませんが、わたくしとしては暗殺ランキング第一位です。二位はいません」
「そんなに……」
であれば、とメフィスト様は笑った。
「やっぱり留守番してて。鉢合わせたらろくな事にならないだろうし、もう一人とも会わせたくないしね」
「もう一人? アミィ様ですか?」
「うん」
この場合たぶんアミィ様は悪くない。それもこれもキマリス様が悪い。けどメフィスト様が嫌だと言うのならアミィ様にも会うわけにはいかない。
まあ別に仲が良いわけではないし、会わなくても困らない。
「……そういうことであれば、家でお帰りをお待ちしております」
「いい子にしててね」
「メフィスト様も、帰ってきてくださいね 」
そう言うと頭を撫でられてキスをされた。
「そんな顔しない。家を出られなくなる」
「……行ってらっしゃいませ」
「行ってきます」
メフィスト様は少し困ったような顔をしつつも家を出ていった。
私はしょげつつも掃除や片付けをする。わたくしとしても好きで魔界塔で暴れたわけではないので、反省はしているのだ。一応。
それにメフィスト様以外の悪魔のことで心を乱されるのは普通に不快だから、しばらく行かない方がいいのだろう。
メフィスト様は夕方には戻られて、何故か大量の惣菜を抱えていた。
「お帰りなさいませ。こちらは?」
「ただいま。オペラさんからのお裾分け。君に渡すつもりだったけどってさ」
「それはそれは。夜に一緒にいただきましょう」
受け取ったら頭を撫でられた。
「それ置いたら書斎においで。充電する」
「承知しました」
置いて行かれてしょげた気持ちが、わかりやすく回復した。