1/18自分に厳しく、君に甘く 風呂上がりに体重計に乗ると、自分史上最大の数字が叩き出されていた。お腹を摘む。摘めるのがもうダメ。
「減らすか……」
おやつとか、おやつとか。
翌日、おやつどきに書斎で仕事をされているメフィスト様にコーヒーとおやつを持っていく。自分の分は魔茶だけだ。コーヒーだと砂糖を入れないと飲めないから。
私が応接セットのソファに座って書類を広げていると、目敏く気づいたメフィスト様が顔を上げた。
「おやつ、君のは?」
「あー、今日は、あんまりお腹すいてなくて」
「そう?」
無事に聞き流してもらえたのでエヘヘと笑って誤魔化して仕事に取り掛かる。
夜ごはんも心持ち少なめ。次の日も、朝はちゃんと食べる。昼もなんとなく少なめ。おやつは無しにしたら、メフィスト様はちょっと笑ってから、
「君の分のおやつがない理由は聞かない方がいい?」
と仰った。
「……えと、そう、ですね。聞かないでもらって」
「そう。夜ごはん終わったら散歩に行こうか」
「理由わかってるじゃないですか」
「はっきり言うのはデリカシーがないかと」
「お気遣いありがとうございます!」
けど、その気遣い意味ある? ほとんどなかったよね!?
気恥ずかしさから膨れつつ仕事にかかったらメフィスト様は吹き出した。
そして立ち上がって私の座るソファの横に腰を下ろす。
「今くらいでも俺は気にしないよ」
「私が気にするんです」
「じゃあ、やっぱり一緒に歩こうか。あ、帰りに屋台で焼き芋買おう」
「意味ないですよ、それ」
「バレたかあ」
メフィスト様はやっぱり笑ってから仕事に戻っていかれた。
くそう。絶対に痩せてギャフンと言わせてやる。たぶん言わないけど。どっちでもかわいいとか言ってくるからな、この悪魔。
メフィスト様は私をやたらと甘やかしたがる。だから私に厳しくするのは私がやらなくてはいけない。