1/20転がされ、慰められる俺 秘書(研修中)が厨房でス魔ホをぽちぽちしていた。普段触っているところを見ないので珍しくて覗いてしまう。
「なにしてるの?」
「来週登校するつもりだったんですけど、イフリート先生の都合が悪いそうなので、いつがいいか相談してました」
「……」
イフリート先生というのは、この娘の担任兼師匠だと言っていた。そりゃ、学生なんだから担任がいて、研修中だから担任に報告に行くのも報告のために予定の確認をするのも当たり前なんだけど。
なんだけど、めちゃくちゃ面白くない。
俺以外の相手と魔インしないでほしい。しかも男悪魔と会うためになんて。
「メフィスト様? 再来週頭なんですけど、今のところ空いているのでそこで」
「やだ」
「え」
「ダメです」
「メフィスト様?」
「他の男悪魔のところになんて送り出したくない」
自分でもバカ言ってると思うけど、どうにも止まらなくて彼女は困った顔になってしまった。そんな顔させたいわけじゃないのに。
「……ごめん。頭冷やしてくる。再来週前半はいつでもいいけど、ちゃんと帰ってきて」
トボトボとその場を離れる。
彼女を束縛してる自覚はあったけど、学校についてまでとやかく言うつもりなんてなかったのに。
書斎に戻って仕事をしようと思ったけど全然やる気が出ない。
「メフィスト様?」
「……どしたの」
しょぼくれていたら、彼女がコーヒーと茶菓子を持ってやってきた。まだ、頭冷えてない。
「あの、まだ」
「私が連絡を取っていたの、イフリート先生じゃないですよ?」
「え」
「オペラさんとアメリちゃんです。アザゼル様のご息女の。学校に行くタイミングで生徒会の子たちと一緒にオペラさんの特訓に混ぜてもらう約束をしていたんですよ」
「そ、え」
「見ます?」
そう言って差し出されたス魔ホの画面には、彼女が言ったことがほぼそのままやり取りされている。
「ちなみにイフリート先生からも連絡きますけど、クラスのグループ魔インがあってそこにきます」
これです、と見せられたのは確かに40人くらいのグループでイフリート氏から報告を受けられる日が月一くらいで通達されるそうだ。
「……ごめん。ほんと、ごめん」
「いえ、私も言葉足らずでした」
彼女はこともなげに肩をすくめて見せた。
「でも、メフィスト様が信じてくださらなくて、わたくししょんぼりしました」
「ごめん」
「慰めてくださいませ?」
そう言ってめちゃくちゃ悪い顔で彼女は俺に擦り寄る。
悪いのは俺なのに、慰めてと言いながら慰めてくれる彼女に、俺はコロッコロに転がされている。