1/23こたつの魔力「なにこれ」
「コタツというものだそうです。クララちゃんがくれました」
メフィスト邸のテレビの前のソファセットをコタツに入れ替えたら、風呂上りのメフィスト様が困惑の面持ちでやってきた。
今日の昼間、悪魔学校に行ったらクララちゃんに会い、魔具研の師団室に連れて行かれて設置されていたコタツに入ったのだ。
すごかった。めちゃくちゃ良かった。何故かイルマくんとアスモデウスくんにコタツの良さを説明され、クララちゃんが家系能力でコタツを出してくれて、
「パイセンにも分けてあげるからメフィメフィと使いな?」
なんて言って譲ってくれたのだ。
という一連の流れを掻い摘んで説明したら、メフィスト様はわかったようなわからないような顔で頷きつつ、私を見習ってコタツに入ってきた。
「わ、温かいんだ、これ」
「そうなんですよ。眠くなっちゃいますよね」
言いながら私は半分くらい寝ている。夜ごはんも、夜ごはんの片付けも終わっているから、しばらくはダラダラしていて良い。わはは。
「このまま寝ないでよ」
「それはむずかしい、そーだん、です」
「もうほぼ寝てるね? ちょ、出て、出て!」
「やーだー」
メフィスト様に引っ張り出されて遺憾の意である。なんでだ。良いじゃないか。
「気持ち良いのわかるけど、君寝たら起きないし風呂にも入ってないでしょうが」
「そうなんですけどお。コタツの魔力に抗えないんですよう」
「魔力?」
「ただの例えなのでお気になさらず……」
「あっ、また寝ようとして!」
座ったまま傾いでいたらほっぺたを引っ張られた。痛いから止めてほしい。
「……起きないなら風呂に連行する」
「やだー」
「もしくはこのままコトに及ぶ」
「お風呂に入ってからがいいです」
「じゃあ自力で風呂に行ってきて」
抗議の目を向けたけど、そんなものが通用するわけもないので渋々立ち上がって風呂に向かう。
戻ってきたらメフィスト様がコタツで寝ていた。
「……これは、このままコトに及んでも良いということですよね」
「いいよ♡」
騙された。寝たフリだった。結局普通に寝室に連れて行かれたし、コタツは片付けられた。ぎゃふん。