1/24雪と転げる私と手を引くヒト「寒いですねえ」
「ねえ」
そんなことを言いながら、私とメフィスト様は並んで歩いている。雪が降っていて飛べないし、足元はベチャベチャで歩きにくい。
「あわっ」
「っ!」
足を滑らせてベチャベチャの雪に突っ込みそうになったけど、手をつないでいたメフィスト様が引っ張ってくれて何とか踏みとどまれた。
「すみません」
「大丈夫。気をつけてね」
そう言いながらメフィスト様は繋いでいた手を引き寄せて、先程よりもゆっくり目に歩こうとして、すっ転んだ。
当然のように私も巻き込まれ、二人してべっちゃべちゃである。
「ごめん……」
「だいじょぶ、です」
正直あんまり大丈夫ではない。メフィスト様は尻餅をついたからズボンとコートの裾が汚れたくらいだけど、私は前に手を引っ張られて倒れたので上から下まで雪と泥でべっちゃりである。
なんなら顔にも跳ねた。
「なんとかしてあげたいけど、とりあえずどこか軒下に移動しよ」
「はい……」
また転ばないように気をつけつつ、出来る限り急ぎつつ近くの建物の軒下に避難する。灯りの下で見るとビックリするくらい汚れていて、どしたの? 泥遊びした? って感じだ。
「おお……」
「本当にごめん。じっとしてて」
メフィスト様の指がピッと振られて服とか顔が綺麗になる。……そういえばメフィスト様が口頭で魔術を使うところって見たことがない。
全部無口頭だ。流石だなあ。顔も良いし背も高くて13冠で……ダメなとこある? ない!
ダメなのはメロってる私だけ……。
「はい、これでよし。歩ける? 怪我とかしてない?」
「だいじょぶです」
「じゃあ、行こうか」
また手を繋いでゆっくり歩く。たまに滑るけど、転ぶほどではない。
「帰ったらお風呂入ろう」
「そうしましょう」
「……一緒にって言ったらヤダ?」
「たまになら、良いです」
「今日は?」
「……いい、です」
「やった」
油断すると転ぶから顔を上げることはできない。けれどメフィスト様がニコニコしていることくらいわかる。それくらいの付き合いは、ある。
帰ってから風呂で転んだときに出来た痣に気付かれてめちゃくちゃ心配されるのは、あと一時間後だ。