1/25ほったらかさないで、寂しいから「ねえ」
「はあい」
「まだかかりそう?」
「もうちょっとですね」
「さっきもそう言ってたよ」
俺のかわいい子は忙しそうに書類を仕分けたり捨てたりメモを取ったり付箋を貼り付けたり……ともかくひたすら手を動かしている。
今日は休みだから昼にちょっと買い物に出ようとか、朝は言っていた気がするのだけど。
朝ごはんの後に大量の手紙が届いて、それを受け取ってからかれこれ数時間はこの調子だ。
この娘はそういうところがあって、仕事なんて始めたら無限にあるし、やろうと思えば死ぬまで続くんだから適当なところで切り上げればいいのに、あとちょっとあとちょっとと手を動かし続ける。
そろそろつまらなくなってきたので取り上げようか。
彼女の横に座って顔を寄せる。
「ね」
「わ、びっくりした。いかがなさいましたか」
「今日は休みの日です」
「え、あ……そう、ですね」
「そろそろ昼です」
「ホントだ。すみません、すぐ用意します」
「そうではなく」
立ち上がりかけた手を引いて抱き寄せる。細い肩はすんなりと腕の中に収まる。
「外に行こう。ごはん食べてブラブラして、夜ごはんを買って帰ってこよう」
そう言うと彼女は目を丸くしてから、ふにゃっと微笑んだ。
「承知しました。すぐに支度を」
手を離すと机を片付けて玄関へと向かう。付いて行って上着を着せたら「自分でやりますよ」と、ちょっと不満そうでかわいい。
「ほら、行こう」
手を引いて外へ出る。冬の昼はからっと晴れていて風は冷たいけれど空気が澄んでいて悪くない。
「どこか行きたいところ、ある?」
「昼を食べに行きましょうよ。温かいものがいいです」
「じゃあ、前に行ったところ……」
そんな話をしながら歩き出す。
やっと休みの日が始まったみたいで嬉しい。
かわいい娘がもこもこになってこちらを見上げるのから、ついキスをして怒られた。