1/26戦争の申し込みはこちらまで「まあ、メフィスト様ではありませんか」
「これはこれは」
メフィスト様とメフィスト様の統治下にある地域に最近出来た屋内施設に視察に来ていた。
まあ視察の名目で半分デートだ。
けど、その施設の経営をする女悪魔と鉢合わせてしまい、このようにマジの視察になってしまったわけです。
「わざわざお越しいただきまして。事前にご連絡いただければ、お出迎えいたしましたのに」
「個人的に伺っただけなので」
「まあ、そこまで気にかけていただいて」
「こちらで好きに見て回りますので」
「13冠メフィスト様にお越しいただいたのですから、おもてなしをさせていただきませんと」
とまあ、暑苦しく、押しが強くて、鬱陶しい……ダメだ、苛ついてマイルドに表現できない。
だってさ、この責任者の女悪魔、やたらとメフィスト様にしなだれかかって色目使いやがって、離れろよほんと、腹立つな。
なにが腹立つって、たまにこちらをチラッと見てニコーってする。わかる? わかるよね、このやられた側だけが、
(あっ、喧嘩売られてる!!)
ってなるやつ! こう鈍い男とかにうっかり言っちゃうと、
「君のことも気にかけてくれてるんだよ」
なんて言われて戦争になるやつね!
メフィスト様がそうだとは言わないけれど、13冠のお忍びの視察と案内する責任者、そして付き添いの秘書の図を作られて、私がとやかく言えない状況だ。
なんか言ったとして、この女はたぶんわかってない小娘扱いしてくる。というか既にされた。ムカつく。
そんなわけで、メフィスト様の後ろでヤカンみたいに沸騰していたら、突然腕を引っ張られた。
「悪いのだけど」
「えっ、なに、なんですか」
「俺、この娘が視界にいないと悪周期入るから、失礼するよ」
「あ、メフィストさま、お待ちを」
よくわからないままに引っ張られてその場を離れる。
「メフィスト様?」
「うん。行こう」
今度は普通に手をつないで指を絡めて歩き出した。見上げるとちょっとムスッとしている。
「あの、ありがとうございました」
「いいよ。俺も流されちゃって対応が遅くなったけど、仕切り直ししよ」
「はい! けど、さっきの言い訳ちょっと面白かったです」
「んー、半分本当だから」
こちらを見下ろしたメフィスト様はニコーっとしているけど、たぶん本当なんだろう。