1/27甘い映画より重い貴方の方がいい「これ、流行ってるんだってさ」
そう言ってメフィスト様が持ってきたのはバビルスで流行ってる恋愛映画のディスクだった。
……そんなもん、どこで聞いてきたんだ。や、間違いなくイルマくんに聞いたのだろうけど。
「あー……、すごい甘い話らしいですね」
「知ってるの?」
「学校で流行ってるって聞きました」
「せっかくだし観てみよう」
お菓子や飲み物も用意していざ上映会。
……すごい。めちゃくちゃに甘ったるい。お菓子は塩っぱいの用意すれば良かった。
君は僕の光とか、生きる意味とかなんかそういうことを延々と言って口説いている。
「砂糖菓子もかくやの甘さですね」
「うーん、言われたい? これ」
「や……たぶん、そわってなるんで、いらないです」
けど、うーん? 言われて考えると、ほぼ同じような……むしろ、言い方が甘くないだけで、更に重いことを言われている気がしなくもない。
話が濡れ場へと進む。
あれだ……家族でテレビを見てたらキスシーンで気不味いあれだ……。
メフィスト様はケロッとした顔で首を傾げていた。
「この程度のキスで満足できるなんて若いんだね?」
「比べないでもろて……」
「試す?」
「なにをです!? や、いいです。試さないし、説明も結構です」
やがて浮気がどうたら、過去の相手がどうたら言い出してなんか重たくなって、けれど僕は君の愛を信じる的な流れで終わった。
「これ、ハッピーエンドなんですか?」
「パッケージにはそう書いてあるけど、そう見えなかった?」
「なんか、えっらいふんわり終わったなとは思いました。僕が彼女を信じるからオールオッケーって、やわやわでちょっとよくわかんないです」
「……君はそういうところあるからね。んー、けどこれを見ると恋人といい感じにって書いてあるけど、そうでもなかった」
「そんなんなんですか、これ。いい感じになりたかったんですか?」
「若者の流行りに乗ろうかと」
つい吹き出してしまった。たぶん、私とメフィスト様はこの映画に出てくるふんわりやわやわなカップルより余程いい感じだと思う。
「私、甘ったるい台詞よりメフィスト様の重力より重い台詞の方がもらって嬉しいですよ」
「そう? そんなに重いこと言ってたつもりないけど」
「そっちですか。まあいいです。今度は私が映画選びますね。メジャーなアクション物にしましょう。最後は爆発してキスしてハッピーエンドのやつ」
そう言ったら、わかりやすくていいと思うと笑われた。