1/28ダリ先生からは取ってつけたようなお説教をされた その日学校に顔を出したら珍しく他のクラスメイトが何人かいた。
声をかけて教室で互いに近況報告をすると、一人の男悪魔が鼻で笑う。
「は? 雷帝のSDだったくせに、今は盤外王の秘書? 尻軽かよ。どう考えても雷帝の方がすごいじゃん」
お、喧嘩売ってんのか? 言い値で買うが?
「そんな新入りの名前もろくに知られてない悪魔に頭下げて恥ずかしくねえの? あ、そういう男が好きなんだ? モノ好きだなー。雷帝の方が名声も地位も上なのに見る目ねえの」
「……表、出な?」
辛うじてそう言うと、ソイツは言い過ぎたことに気付いたのか僅かに目を逸らす。
周りで冷や汗をかいていた同級生のうち、女子が素早く教室を出て察しの良い男子は距離を置く。
けれど本人はすぐにヘラっと笑った。
「マジになんなよ、つまんねーな。なに、そいつの女にでもなっちまったわけ?」
よろしい戦争だ。
私はできる限り柔らかく微笑んだ。ソイツと周囲の悪魔たちがホッとしたように笑うから、右手をグッと握り込んでソイツのみぞおちに叩きこむ。
「が、はっ、」
「ほら、立ちなさいよ」
「んなっ」
「まさか、私の主をそこまで貶して、一発で許されると思っていないでしょう?」
ソイツが立ち上がらないので胸ぐらを掴んで引き起こす。そのまま廊下へ投げ捨てる。
「ま、ごめ、」
「なにかしら。聞こえないわね。まさか13冠に、その側仕えに楯突いてゴメンで済むと思ってる? そんな甘っちょろい考えで悪魔として恥ずかしくない?」
倒れたままのソイツを踏んづけていると、ドタバタと足音がして肩を引かれた。
「はい、ストップ。落ち着いて」
肩を引いたのはダリ先生で、後ろには担任のイフリート先生もいる。
「無理です」
「事情は聞いたから無理なのはわかるけど、ここ学校だからさ」
「先生、こういうバカを甘やかすのいくないです」
足でぐりぐりとソイツを抑えながら言うとダリ先生が苦笑いになった。
「大丈夫、甘やかしません。カルエゴ先生も呼んである。イフリート先生からも言ってもらうから」
……じゃあまあ、いいか。カルエゴ先生とイフリート先生にみっちり叱られろ。
足を外すついでに顎を蹴飛ばしたら怒られたけど、悔いはない。
帰ったらすでにダリ先生から話がいっていたらしく、メフィスト様は苦笑しながらもよしよししてくれた。
「無茶しないんだよ」
「してません。売られた喧嘩を買っただけです」
「はいはい。怒ってくれてありがとう」
まだ怒りは収まらないけど、メフィスト様がベタベタに甘やかしてくれたから少しだけ留意が下がった。少しだけだ。次に顔を合わせたら覚えてろよ。