1/31I love you &... ある日の昼下がり。メフィスト様がやる気が出ないとボヤいていた。
書斎の机でぐだっと突っ伏して唸っている。
「なにか甘いモノをお持ちしましょうか」
「それより、俺のやる気の出ること言って」
あれだ、よく言われる「もっとかわいく言って」のもうちょいハードルが上がったバージョンだと思われる。
「そうですねえ」
ふと学校で聞いてきたサバトでよくやるらしいゲームを思い出す。
「愛してるゲームってご存知ですか?」
「知らない」
パッとメフィスト様が顔を上げるので、立ち上がって机の向かいから、ゆっくり微笑む。
「メフィスト様、愛しております」
「えっ、うん、知ってるけど、うん」
「照れたのでメフィスト様の負けです」
「えっ、なにそれ! なにそれ!?」
「つまり、ですね」
愛してるゲームのルールを説明する。交互に愛してると言って、照れたり笑ったりしたら負けだ。
「……わかった。全力でいく」
全力とは。なに言ってんだと思ったけどメフィスト様のやる気は出たらしいから、まあいいか。問題はそのやる気が仕事を向いていないことだろうか。ダメじゃん。
「愛してるよ」
「存じております」
「手強いなあ」
「愛しておりますよ」
「……好き」
「メフィスト様、ハチャメチャ弱いじゃないですか」
既に二回目にして二回とも照れ倒している我が主だ。今は顔を両手で抑えて唸っている。
「普段のデレが少ないから、たまに言われると嬉しくて」
「……左様ですか」
私は一つ頷いてから机を周り、メフィスト様の横に立つ。机と椅子の背に手をついて、メフィスト様の耳元に口を寄せた。
「愛しております、我が主。仕事を終えて、二人で過ごしたいですわ」
ぐるんとメフィスト様がこちらを向いた。頭を引き寄せられて、唇が重なり牙がぶつかる。
やがて糸を引いて顔が離れる。主の目はギラギラと光っている。
「仕事が終わったら、続きをする」
「お振るいくださいませ」
頭を下げて下がる。……やり過ぎたなあ。