2/4コンビニ菓子を流れるように買い占めないでほしい「うーん」
俺のかわいい秘書がス魔ホを睨んで唸っていた。
「どしたの?」
「あ、メフィスト様。これなんですけど」
見せられたのはチョコ菓子で期間限定と書かれている。
「美味しそうだね」
「ですよね!? んー、食べたいんですけどコンビニ限定なんです。なかなか行くタイミングないから次に学校に行くときに寄るか、諦めて自作するか……」
「えっ、自作できるの? ソッチの方がすごくない……?」
しかし彼女は聞いていなくて、むむむと唸りながらス魔ホの画面を見ている。そんなに食べたいなら強請ればいいのに。
「買いに行きたいならそう言えばいいのに」
「え、や、そうなんですけど」
「俺は君のおねだりを断ったことないと思うけど?」
「そうなんですけどお」
やたらと歯切れ悪く目を逸らされた。
「そもそも、メフィスト様はコンビニとか行ったことあります?」
「ない」
「ですよね!? だからお声掛けしにくくて」
「じゃあ初挑戦するから着いてきて」
そう言うと彼女は目を丸くしてこちらを見上げた。かわいいからキスをして支度をして外へと連れ出す。
「それで、コンビニってどこにあるものなの?」
「発言が上流階級……街まで行きましょう」
「君も貴族の出だよね」
「田舎貴族の分家です。その辺の庶民とさほど変わりないですよ」
ふわふわもこもこのマフラーに埋もれた彼女は首を振って遠くを見る。
「さっき見せてくれたチョコ、お店にある分全部買おう」
「そんなには要らないです。発想がいちいち富豪なのなんなんですか」
「そう? 必要なものを必要なだけ購入しようと思ってるだけだよ」
不思議そうにこちらを見あげるからニコッと笑ってみせた。
「俺が俺の好きな娘に欲しがるものを欲しがるだけあげたいって話」
「……さようですか」
もふっとマフラーに埋もれた耳が赤くて、やっぱりこの娘が一番かわいい。