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    haru0551

    @haru0551

    土銀でたまにお話書いてます。
    応援絵文字ありがとうございます✨

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    haru0551

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    続きです。
    やっと銀八出てきます😭
    ------------------------
    商標登録してあるみたいなので、題名を『オセロゲーム』に変えました。
    まあ、あまり関係ないとはおもうけど気持ち的に。また変えるかも。

    #土銀八
    ##オセロ

    オセロゲーム⑦ 観たい映画はないかと聞くと、鉄子は少し考えて怪獣映画の題名を上げた。昔の怪獣映画のリメイクで、土方も子供の頃、義兄に連れて行ってもらった思い出がある。自分も観てみたいと思っていたことを伝えると、鉄子は照れたように、でもどこか嬉しそうに笑った。正直、恋愛映画を指定されたらどうしようかとも思っていたからほっとする。
     映画館は大学から少し離れた繁華街の商業ビルに併設する。バスを降りると、大通りを挟んで向こう側に商業ビルが聳えて見えた。通りに沿って、公開中の映画のパネルが並んでいる。
    「この映画はVFXの技術がすごくて…」
    「ぶ、ブイエフ…、なんだ?」
     鉄子は映像技術にも興味があるらしく説明してくれたが、土方はその手には疎く、話を広げられず「そ、そうか」と相槌をうつだけで終わった。鉄子もそんな対応はしょっ中あるのか、あまり気にしていない様子で、
    「まあ、映像が迫力あって凄いよってことだ」と笑って言った。
     平日の午後にもかかわらず、繁華街は人通りが多い。信号はちょうど赤に変わったところで、大通りに面しているからか信号はなかなか変わらない。その間にも信号の前には人が増え、通りの向こうも同じように人だかりができていた。
     ふと、土方の視線が一点で止まる。一瞬、あり得ないものが目に入った気がした。確かめようとじっと目を凝らしていたが、ひゅっと息を呑むと、慌てて下を向く。
    「どうかしたか?」
     土方の様子に違和感を感じたのか、鉄子が声をかけてくる。土方はそれには返事をせず、もう一度顔を上げて通りの向こうを確認すると、人垣の中にちらちらと銀色の髪が揺れているのが視界に入った。手前に並ぶスーツ姿のサラリーマン達の間から覗き見えたのは、坂田銀八だった。
     何で、こんなところに――……。
     高校を卒業してから2年間、銀魂高校はもちろん、その周辺さえも近寄らないようにしていた。銀八が利用すると噂のあったコンビニ、本屋、スーパーにも。近寄らなかったというより、。もし偶然、銀八とばったり出会ってしまったら……、そう考えると足がすくんだ。
     あの時の告白がなかったかのように、銀八に平然と声を掛けられるのも嫌だが、迷惑、困惑、その手の表情を一瞬でも見てとれたら、それこそ立ち直れる気がしない。
     まさか平日の真昼間、繁華街に銀八がいるなんて想像もしなかった。完全に油断していた。頭が真っ白で何も考えられず、呼吸もうまくできない。額にはいつの間にか汗が吹き出し、米神を流れていく。心臓だけが耳の奥でやけに大きく響いている。――一体どうしたら……。
     
    「大丈夫か?」
     
     突然声をかけられ、土方はハッと我に返った。鉄子が心配そうに顔を覗き込んでいる。小さな手が遠慮がちに腕に触れていた。
    「悪ィ……、ちょっと、立ち眩みしたみたいだ。何でもない」
     不安そうな表情を崩さない鉄子に、土方がぎこちなく笑う。鉄子の表情が少しだけ緩んだ。腕に置いていた手を、鉄子が慌てて跳ね上げる。
    「す、すまない。声をかけたんだが、反応がなくて…」
    「いや、助かった。すまねェ」
     動揺し過ぎて聞こえなかったらしい。鉄子のおかげで、頭の中が少しだけ冷静になる。大丈夫、銀八に気づかれなきゃいい。例え気付いたとしても、こっちから声をかけなけりゃ、あいつもわざわざ声を掛けたりはしねーだろうしな。
     いつの間にか握りしめていた拳を緩めると、よほど力を加えていたのか、関節がギシリと軋んだ。はっ、一体どんだけ緊張してんだと、自嘲気味に嗤う。
     信号が青に変わり、解き放たれたように一斉に人の流れが動き出した。やはり、銀八はこちらに気付いていない様子で、うつむき加減に下を向いて歩いてくる。
     
     ――すれ違ってしまいさえすれば……。
     
     自分なんて、銀八にしてみれば数多の教え子の一人に過ぎない。それも勝手に恋愛感情を拗らせ暴走した問題児で、銀八の扱い慣れた態度からして、他にも大勢いたのだろうと容易に想像できる。
     土方は不自然にならないよう、努めて視線を鉄子へ向けて歩く。2年もたって、銀八も少しは変わったのだろうか。一瞬、見てみたいと心が大きく揺れたが、ぐっと我慢する。それでも身体中の神経は、どうしても銀八の方へと向いていた。
     
    えっ……!?
     
     突然腕を掴まれ、ものすごい力で後ろへ引っ張られた。鉄子の悲鳴に近い声が聞こえたが、すぐに雑踏に紛れて消えた。腕を引かれ、信号をもと来た道へと連れ戻されると、そのまま人混みを掻き分けるように通りを走った。腕はしっかりと握られたままで、土方は前の奴に着いて走るしかなかった。目の前で揺れる、見覚えのあり過ぎる銀色の髪。それを唖然と見つめながら、動揺で転ばないようにするのが精一杯だった。

     
     ◇◇◇
     
     どれくらい走っただろうか。いくつか脇道にそれ、人気のないビルの陰で滑走劇はようやく終わりを告げた。腕が解かれ肢体が自由になる。街中の全力疾走に、さすがに土方の息も上がっている。壁に片手をつき、ゼーゼーと荒い息を吐きながら、隣で地べたにしゃがみ込む男をチラリと盗み見た。
     男は明らかに土方よりも消耗している様子で、壁にもたれかかるように座り、大きく肩を上下させている。やがて、はあっと息を吐くと苦々しげに声を出した。
    「きちい……久々走った」
     男がメガネをはずし、汗で額に張り付いた銀色の前髪を拭うように手のひらで撫で上げた。俯き加減で顔はよく見えないが、その声は確かに聞き覚えのある声だ。
    「おま……なん……」
     驚き過ぎて、土方の口からは不明瞭な言葉しか出ない。その声に、男がチラリと土方の方を見た。――やっぱり……。一瞬合った瞳は紅玉色で、紛れもなく銀八だ。
     マジでか……?
     ドキンドキンと心臓の音が耳の奥でやけに大きく聞こえる。土方がそれ以上何も言えずにいると、銀八が「あー、悪ィ、ちょっと待って」と胸元からタバコの箱を取り出して一本口に加えた。火をつけようとしたところで、土方は慌てて声を上げる。
    「ココ、喫煙禁止区域だろーがっ!」
     土方もたまにタバコを吸うようになって知ったのだご、社会は思っていた以上に喫煙者に厳しい。
    「さっすが、風紀委員」
    「……元な。今は違ぇ」
    「はは、そうだっけ」
     銀八が乾いたように笑い、咥えたタバコを箱に戻した。どちらも黙り込み、2人の間を気まずい空気が流れていく。
     マジで何だコレ…。
     銀八と突然再会しただけでも動揺するってーのに、いきなり2人きりなんて。意味がわからねェ。
    「あれ、彼女?」
     声がした方を向くと、銀八がチラッとこちらに視線を向けた。
    「は?」
    「いや、信号で一緒だった女の子」
     土方は一瞬、何を言われたのか分からなかったが、鉄子のことだと気付き、はあ?!っと焦った。
    「いや違う、友人だ」
    「へえ、お友達ねぇ」
     銀八の低い声が気になったが、とりあえず誤解されないようにもう一度くり返した。
    「そうだよ。大切な友人だ」
     しまった、鉄子を一人残して来たままだと、土方は今更ながら気付く。突拍子のない出来事に、心配しているかもしれねェと焦ったが、その原因であるはずの銀八が、へえーっと嘲笑うような嫌な笑いを浮かべたものだから、そちらに意識を持っていかれた。
    「なになに、大切なお友達と真昼間から映画にでも行こうってか。青春してるじゃないの、土方くん」
    「はあ?」
     思わず声に怒気がこもる。銀八のあから様な態度に、苛つきが沸点ギリギリまで上り詰める。
    「てめえ、なに勘ぐってやがる。友達だつってんだろーが」
    「はいはい、そうですかぁ。隠さなくてもいいっつーの」
     襟足を掻きながらボソッと漏らした銀八の一言に、土方の頭の中で何かがプチンと切れる音がした。隣にしゃがみ込み、銀八の胸ぐらを掴んだ。
    「何なんだよ、さっきから。ったく、突然現れたと思ったら、んな所に勝手に引っ張ってきやがって! 言いてェことがあるなら、さっさと言いやがれ」
     こっちは会わないようにと必死に気を遣ってたってェのに。てめえが勝手に連れてきたくせに、何をぐちぐち言ってんだ、こいつはよっ! シャツを掴む手に力がこもる。土方がぐっと睨みつけると、銀八はふいっと顔を逸らした。
    「ねえよ、別に用件なんて」
    「あん? てめえ、じゃあ、何でんなことしやがったんだ?」
     黙り込む銀八に、土方は半ば呆れて手を緩める。なんだそれ、意味がわからねェ。銀八はしばらく何か考えている様子だったが、おずおずと口を開いた。
    「なあ、もう一度だけ聞くけど……、あの女の子、本当にただの友達?」
    「あ? だから、そう言ってんだろーがッ」
     何度も同じことを聞かれ、土方の声に怒りが籠る。大体、なんでテメーにそんな事、何度も説明しねーといけねーんだ?
    「マジで?」
    「はあ? 何回言わせんだ、てめえ」
    「あ――……マジかっ、くそ、やられた――ッ」
     突然、銀八が手で顔を隠し、天を仰いで呻いた。土方は驚いて、思わずシャツを握っていた手を離した。
    「あ――クソッ、あのガキ――…ッ、マジで次会ったら、ぶっ殺す」
    「お、おい、何物騒なこと言ってやがる。落ち着けって」
     地面に触れ伏してくやしがる銀八に、事情が何一つ飲み込めない。
    「うわっ、俺、これアウトじゃねえ? 社会的に死ぬやつじゃねーの?」
     ヤバいよ、コレ、生活が……と真っ青な顔でブツブツと呟く銀八に、土方は恐る恐る声をかけた。
    「な、なあ、大丈夫かよ、銀八」
     銀八はふっと土方に視線を合わせると、「すんまっせんでした」と叫びながら土下座した。
    「いや、ちょっ、お前何してんだっ!?」
    「この度は私めの勘違いで、ご迷惑をおかけしてすみませんでしたっ!」
     地面にふれ伏す銀八と土方を、何事かと通行人が眉をひそめて立ち止まりだした。ヒソヒソと小声でしゃべる訝しげな声が聞こえ、土方は慌てて肩をつかみ銀八の体を起こした。
    「わ、わかった、ちゃんと話を聞くからッ、とりあえず頭を上げろッ、なッ!?」
    「け、警察には……」
    「言わねぇよ」今のところはな。逃げたら通報するからなと念を押すと、そろりと後ろに下がり気味だった銀八がぎくりと固まる。ったく、油断も隙もねえ。
     とりあえず、こんな往来で立ち話は勘弁して貰いたい。場所を移して話しを聞くからというと、「それじゃあ、あそこにしようぜ」と銀八が口を開いた。
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    haru0551

    PROGRESSオセロ続きです。
    理由があって、ヒジカタくんと鉄子が映画に行くことに…。
    苦手な方は回避してください。
    ※捏造世界での土銀八ですので、何でも許せる方のみお願いします💦
    オセロゲーム⑥ 土方の提案は、一度だけ二人で映画に行って鉄子の口から村田に『思っていたのと違った』と伝えて貰うというものだった。さすがにそこまでして違ったとなれば、村田もこれ以上の世話を焼いてはこないだろう。
    「正直、あんたが村田先輩を説得できるとは思えないからな」
     少々、辛辣かもしれないが、土方は正直な気持ちを口にした。鉄子も同じことを思っていたのか、少し考えている様子だったが、土方の提案に頷いた。
     ならばと詳しい打ち合わせをするためにラインを交換し、鉄子とはその日は別れた。
     次の日、村田に鉄子と映画に行ってみる事を伝えた。やはり妹のことが大事なのか、「そうかっ!」と村田は嬉しそうに叫んだ。土方は少し良心が痛むが、それよりも早くこの件を解決して、またいつもの心穏やかな日々を取り戻したいという気持ちの方が優位だった。土方は心の中ですまねえと頭を下げながら、「ただ、どうなるかは分からねぇ。それまでは他言無用でお願いしたい」と肝心なことを村田に約束させる。
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    「正直、あんたが村田先輩を説得できるとは思えないからな」
     少々、辛辣かもしれないが、土方は正直な気持ちを口にした。鉄子も同じことを思っていたのか、少し考えている様子だったが、土方の提案に頷いた。
     ならばと詳しい打ち合わせをするためにラインを交換し、鉄子とはその日は別れた。
     次の日、村田に鉄子と映画に行ってみる事を伝えた。やはり妹のことが大事なのか、「そうかっ!」と村田は嬉しそうに叫んだ。土方は少し良心が痛むが、それよりも早くこの件を解決して、またいつもの心穏やかな日々を取り戻したいという気持ちの方が優位だった。土方は心の中ですまねえと頭を下げながら、「ただ、どうなるかは分からねぇ。それまでは他言無用でお願いしたい」と肝心なことを村田に約束させる。
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