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    haru0551

    @haru0551

    土銀でたまにお話書いてます。
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    haru0551

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    続き③ 一応続きます。

    #土銀八
    ##オセロ

    オセロゲーム③ この時期にしては少し汗ばむ陽気で、朝の天気予報でも4月のあたたかさと言っていた。やわらかな陽射しが、まるで祝福するように生徒らを照らしている。昼下がりの銀魂高校。今日は卒業式で、校舎脇には胸元に淡い黄色のローズコサージュを携えた生徒らが溢れているた。下級生から花束を渡される者、目元をハンカチで押さえ別れを惜しむ者、友人らと肩を叩き合って笑っている者。式典を終えた生徒らは、各々、最後の学校生活を名残り惜しんでいる。
     
     そんな中、土方は国語準備室へと廊下を急いでいた。今日は、銀八へ最後の告白をするつもりだ。
     約束はしていないが、土方には、銀八が準備室で待っているという確信めいたものがある。宣言した日から今日まで、土方が自ら準備室へ行く事はなかった。銀八も特に接し方が変わる事はなく、ただ用事を頼まれる時は必ず職員室で、というのが徹底された。
     自分でもしつこいと思う。でも、どうしても諦めきれなかった。どんなに拒む言葉を吐かれても、その口元がキュッと結ばれたり、僅かに揺れる視線にどうしても言葉通りに受け取れない。
     恋愛に現を抜かして志望校を落ちるなど、銀八に到底許してもらえないだろう。望み通り受験に合格して卒業式も終えた。18歳の誕生日も過ぎ、法律上は成人だ。これで自分と銀八の間には何ら問題はないはず。だから、今度こそ銀八もきっと……。

     揚々と扉を引くと、そこには見慣れた景色がある。雑然とした部屋に、机に頬杖をつき、事務椅子に座る少し丸い背中。正面の窓から入る風に、真っ白いカーテンがふわりふわりと揺れた。そのたびに、柔らかそうな銀色の癖っ毛が、陽の光をキラキラと反射させる。
     ――ああ、やっぱり綺麗だ。
     土方は、その光景に心が震えた。
     事務椅子の軋む音と一緒に銀八が静かにこちらを振り向いた。その瞬間はいつもストップモーションをかけたように、土方の目にはゆっくりと映る。少し違和感を感じたのは、式典用の黒のスーツだからか、それとも笑っているからか。
    「やっぱり来やがったか」
    「銀八……」
     銀八の声はいつもと変わらず抑揚のない声で、土方は少しほっとする。
     心の何処かで、オセロの角を3つ取った気でいた。あとひとつ角を取りさえすれば、世界がひっくり返って、銀八を手に入れられる、と。人と人との関係はゲームではない。そんな単純な事が抜け落ちていた未熟な俺に、銀八の笑みの意味を推し量ることなどできるはずがない。
    「銀八、約束通り、来たぞ」
    「ああ、本当に来やがって」
     銀八は相変わらず優しげな眼差しで、土方の頭の隅にざわりと小さなノイズが走る。だが、土方は敢えてそれには意識を向けないようにすると、息を吸って〝好きだ〟と伝えた。〝付き合って欲しい〟とも。
     しばらく二人の間に沈黙が流れる。銀八ががりがりと後頭部を手で掻きながら、死んだ魚のような目でこちらを見ると、答えを返した。普段と変わらない、抑揚のない声で。
     
    「悪イな、やっぱお前のことは、生徒としか思えねェわ」
     何も映っていないガラス玉のような目は、一瞬で悟らせる。
     ――ああ、たぶん何を言っても、ダメなのだ。
     少し悲しげにも見えるその目に追い縋る言葉も出せず、俺の高校3年間の恋は、その日あっけなく終わった。

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    haru0551

    PROGRESSオセロ続きです。
    理由があって、ヒジカタくんと鉄子が映画に行くことに…。
    苦手な方は回避してください。
    ※捏造世界での土銀八ですので、何でも許せる方のみお願いします💦
    オセロゲーム⑥ 土方の提案は、一度だけ二人で映画に行って鉄子の口から村田に『思っていたのと違った』と伝えて貰うというものだった。さすがにそこまでして違ったとなれば、村田もこれ以上の世話を焼いてはこないだろう。
    「正直、あんたが村田先輩を説得できるとは思えないからな」
     少々、辛辣かもしれないが、土方は正直な気持ちを口にした。鉄子も同じことを思っていたのか、少し考えている様子だったが、土方の提案に頷いた。
     ならばと詳しい打ち合わせをするためにラインを交換し、鉄子とはその日は別れた。
     次の日、村田に鉄子と映画に行ってみる事を伝えた。やはり妹のことが大事なのか、「そうかっ!」と村田は嬉しそうに叫んだ。土方は少し良心が痛むが、それよりも早くこの件を解決して、またいつもの心穏やかな日々を取り戻したいという気持ちの方が優位だった。土方は心の中ですまねえと頭を下げながら、「ただ、どうなるかは分からねぇ。それまでは他言無用でお願いしたい」と肝心なことを村田に約束させる。
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    理由があって、ヒジカタくんと鉄子が映画に行くことに…。
    苦手な方は回避してください。
    ※捏造世界での土銀八ですので、何でも許せる方のみお願いします💦
    オセロゲーム⑥ 土方の提案は、一度だけ二人で映画に行って鉄子の口から村田に『思っていたのと違った』と伝えて貰うというものだった。さすがにそこまでして違ったとなれば、村田もこれ以上の世話を焼いてはこないだろう。
    「正直、あんたが村田先輩を説得できるとは思えないからな」
     少々、辛辣かもしれないが、土方は正直な気持ちを口にした。鉄子も同じことを思っていたのか、少し考えている様子だったが、土方の提案に頷いた。
     ならばと詳しい打ち合わせをするためにラインを交換し、鉄子とはその日は別れた。
     次の日、村田に鉄子と映画に行ってみる事を伝えた。やはり妹のことが大事なのか、「そうかっ!」と村田は嬉しそうに叫んだ。土方は少し良心が痛むが、それよりも早くこの件を解決して、またいつもの心穏やかな日々を取り戻したいという気持ちの方が優位だった。土方は心の中ですまねえと頭を下げながら、「ただ、どうなるかは分からねぇ。それまでは他言無用でお願いしたい」と肝心なことを村田に約束させる。
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