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    ムー(金魚の人)

    @kingyo_no_hito
    SS生産屋

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    POIPOI 61

    モクチェズワンライ0522「筆記用具」で参加です。
    モさんのずぼら癖に助けられる話。

    #モクチェズ
    moctez

    (また脱ぎ散らかしている……)
    チェズレイはソファの背もたれに掛かっている黄色の羽織を見つけて嘆息した。同道して半年経つが、モクマのずぼら癖は直りそうになかった。彼基準で綺麗を保とうとする努力は垣間見えるものの、チェズレイ基準では1日以上同じ服を洗濯しないまま着続けるなどあり得ない。
    この羽織もいつから洗っていないのか。今日1日外出した気配がないのに土埃の付いているそれをチェズレイはつまみ上げた。
    カラン……――
    「…………は?」
    足元に転がってきたものを見て思わず声をあげる。使い古しの短くなった黒い鉛筆だ。
    どこから来たのかと不思議に思い身を屈めると、もうひとつカラカラと音がした。羽織の裾から飛び出たそれがフローリングの床に叩きつけられて跳ねる様子を見てしまった。
    チェズレイは絶句した。
    恐る恐るモクマの羽織を逆さに振る。
    カンカンカン、カラカラカラ。
    打ち出の小槌のように尖った鉛筆が次から次へと出てくる。その数、8本。どれもが使いかけで小さくなった黒鉛筆だった。
    「チェ〜ズレイ、なにしてんの?……ハッ!」
    背後からスキップしてやってきたモクマへ振り返る。ゆっくりと首を回し、髪を広げ、不愉快を露わにすると、モクマは口に手を当てて「はわわ」とおののいた。
    逃げを打たれる前にチェズレイは先制攻撃を開始する。
    「モクマさァん……、こちらはゴミ入れでしょうかァ?」
    「人の羽織を捕まえてなんてひどいことを。そいつ、まだ下ろしたてピチピチよ?現役選手よ」
    だからなんだ。チェズレイは蔑む視線を送る。
    「羽織から出てきたたくさんの鉛筆は何のためのものですか。ここまで小さくなればシャープナーにも入らないでしょう」
    足元に散らばった鉛筆は親指よりも短い。筆記には向かないだろう。
    「そこはほら、カッターで削ればまだ使えるし。焙烙の割れも三年置けば役に立つって言うじゃない。そいつもいつかは役に立つかなあって、ね」
    「例えば」
    「た、例えば? えーと……、うーんと……」
    頭を悩ますモクマへチェズレイはため息を吐く。羽織を摘んで洗濯機へ投げ入れた。
    「洗濯はしておきますから、鉛筆たちを片してください」
    「合点承知の助!」
    追求を免れた嬉しさからかモクマは威勢よく敬礼ポーズを取った。

    そんな会話をしたのが、ちょうど2週間前――

    チェズレイはモクマと共に敵対組織の構成員たちに追いかけられていた。買い物デートへ出かけたところをつけられたのだ。
    まこうにも土地勘に長けた複数人相手を惑わすにはこちらの分が悪い。徐々に包囲網を築かれ追い詰められていく気配だけは濃厚に感じ取った。
    真正面からやり合うしかないか。
    そう思った時、曲がり角で黒づくめの構成員と相対する。ぶつかる寸前に腰をねじり、飛び退る。
    「どわっ!」
    チェズレイの隣で同じ動きを取ったモクマが短く悲鳴を上げた。
    ふわり揺れた羽織からバラバラと飛び散るのは短い鉛筆たち。
    (まだ持っていたのか)
    呆れた矢先、チェズレイたちを追いかけていた構成員がすっ転んだ。モクマの羽織から転がってきた小さな鉛筆を意図せず踏んづけて足元を滑べらせたのだ。
    「……!」
    包囲網の一辺が崩れたすきを見逃すはずもない。
    モクマが旋回し、すれ違い様、構成員を殴り倒す。抜け道が出来たところをモクマが走り抜け、その背中をチェズレイが追いかける。
    しばらく走ったところでモクマとチェズレイは足を止めた。追ってくる気配はない。無事に追跡から逃れられたようだ。
    ほっと息を吐いたチェズレイは隣に立つモクマへ首を向けた。モクマは得意げに笑っていた。
    「…………なんです、そのしまりのない顔」
    「えへへ。ちびた鉛筆も捨てたもんじゃないだろ?」
    モクマの台詞に数週間前のやりとりを思い出す。
    チェズレイは興奮のあまりペロリと舌を出した。
    「モクマさァん……」
    「え、それどんな感情」



    後日、チェズレイは褒賞として鉛筆セットをモクマへ贈った。
    モクマからは「こんな高級な鉛筆使えないよ〜」とのお言葉をもらうのだった。
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    つばき

    PROGRESSモクチェズ作業進捗 大人になると大事なことほど言葉で伝えなくなる。

     それはお互いに言わなくてもわかるだろうという共通認識があるからでもあるし、言葉にするのが気恥ずかしいからでもある。
     だから俺達の関係性についてわざわざ明言したことはなかった。「相棒」であることは間違いないし。チェズレイも直接的な物言いをするタイプではないから言葉遊びも多いし。掘り下げんでいいかい?とはぐらかす癖もまだ直っていないし。とひとしきり脳内で言い訳を重ねたところで、頭を抱える。

    (昨日のはもう、言い訳しようもないよねえ……)





    「チェズレイ、もう寝るかい?」
    「いいえ、まだ付き合いますよ」
     下戸だと言ったチェズレイが晩酌に付き合ってくれる夜は日常になりつつあった。晩酌といっても全く飲まない時もあれば、舐める程度のお付き合いの時もある。でもその日は珍しく、二人でどぶろく一瓶を空けようとしていた。
     顔色も声色も変わっておらず、ちょびちょびとお猪口を傾けながらしっとりとお酒を楽しんでいる。ように見える、が動作が少し緩慢で目線はお猪口の中の水面に注がれている。まだまだ酒には慣れておらず、やはり強くはないようだ。
     ぼ 2758

    💤💤💤

    INFO『KickingHorse Endroll(キッキングホース・エンドロール)』(文庫/36P/¥200-)
    12/30発行予定のモクチェズ小説新刊(コピー誌)です。ヴ愛前の時間軸の話。
    モクチェズの当て馬になるモブ視点のお話…? 割と「こんなエピソードもあったら良いな…」的な話なので何でも許せる人向けです。
    話の雰囲気がわかるところまで…と思ったら短い話なのでサンプル半分になりました…↓
    KickingHorse Endroll(キッキングホース・エンドロール)◇◇◇
     深呼吸一つ、吸って吐いて——私は改めてドアに向き直った。張り紙には『ニンジャジャンショー控え室』と書かれている。カバンに台本が入ってるか5回は確認したし、挨拶の練習は10回以上した。
    (…………落ち着け)
    また深呼吸をする。それでも緊張は全く解けない——仕方がないことではあるけれど。
     平凡な会社員生活に嫌気が差していた時期に誘われて飛び込んだこの世界は、まさに非日常の連続だった。現場は多岐に渡ったし、トラブルだってザラ。それでもこの仕事を続けてこられたのは、会社員生活では味わえないようなとびきりの刺激があったからだ——例えば、憧れの人に会える、とか。
    (…………ニンジャジャン……)
    毎日会社と家を往復していた時期にハマってたニンジャジャンに、まさかこんな形で出会う機会が得られるとは思ってもみなかった。例えひと時の話だとしても、足繁く通ったニンジャジャンショーの舞台に関わることができるのなら、と二つ返事で引き受けた。たとえ公私混同と言われようと、このたった一度のチャンスを必ずモノにして、絶対に絶対にニンジャジャンと繋がりを作って——
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