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    ムー(金魚の人)

    @kingyo_no_hito
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    モクチェズワンライ240204「化粧」で参加です。チェの左目傷跡を隠す完璧な化粧術を見破るモさんのワザ……

    #モクチェズ
    moctez

    ドレッサーの鏡越しにモクマと目が合う。今日だけで何度目になるだろうか。チェズレイは嘆息した。
    ベッドの縁に腰掛けて足を投げ出している男は、チェズレイの身支度が終わるのを黙って待っている。
    他にやることもあるだろうに、モクマはチェズレイの顔面の変化に興味津々のようだ。
    数種類のパウダーやジェルを塗り重ねる度にチェズレイの左目に咲いていた醜い徒花は消えていく。元の皮膚と境目が混じり合って肉眼では見分けがつかないところまで完璧にメイクし、チェズレイは振り向いた。
    琥珀色の熱い視線へ絡みつく。
    チェズレイの顔を眺め、モクマの眦が柔らかく下がった。
    「や〜、何度見ても素敵だ。キズがあるなんてここからじゃちっとも分からんよ」
    世辞か本心か。
    甘い言葉を吐くことに慣れた男をチェズレイは呼び寄せる。
    「近くに来て確かめてください」
    「心配性だねえ。お前さんの化粧術は完璧だよ、おじさんが保証する」
    信頼を匂わせておきながら、下衆な男は軽やかな動きでチェズレイの眼の前へかがんだ。近くで確かめられることが嬉しいのだとモクマの眼は語っている。
    「どうですか?」
    「挨拶する距離でも全然分からないもんだ」
    「では――」
    ――もっと近くではどうでしょう?
    そう紡ぐはずの唇は、既に男の唇に抑えられていた。
    チェズレイの鼻が啼く。モクマの匂いが――湿った土に似たスモーキーな匂いがチェズレイの鼻腔をくすぐる。
    チェズレイと違ってモクマは何も化粧品の類を使っていないはずなのに。モクマの天然素材の体臭がチェズレイの身体を熱くさせる。
    ぷはっ。
    口づけを解く。チェズレイは口元に手の甲を押し当てた。あとでリップを塗り直さなければ。
    「チェズレイ」
    同じく口元を拭っているモクマの目が獰猛に光る。
    「……キス、させちゃダメだよ。傷跡が薄っすら見える」
    チェズレイは咄嗟に手で左目を覆い隠した。
    初めての指摘に動揺する自分と冷静に分析する自分が分裂している。
    冷静な自分が冷笑する。
    問題ない。己の唇を奪えるのは下衆な忍者だけだ。
    化粧も仮面もまとっていないニンジャさんだけが、口づけで身体の芯を熱して、化粧の下に隠されたチェズレイの傷跡を浮かび上がらせることが出来るのだ。
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    💤💤💤

    INFO『KickingHorse Endroll(キッキングホース・エンドロール)』(文庫/36P/¥200-)
    12/30発行予定のモクチェズ小説新刊(コピー誌)です。ヴ愛前の時間軸の話。
    モクチェズの当て馬になるモブ視点のお話…? 割と「こんなエピソードもあったら良いな…」的な話なので何でも許せる人向けです。
    話の雰囲気がわかるところまで…と思ったら短い話なのでサンプル半分になりました…↓
    KickingHorse Endroll(キッキングホース・エンドロール)◇◇◇
     深呼吸一つ、吸って吐いて——私は改めてドアに向き直った。張り紙には『ニンジャジャンショー控え室』と書かれている。カバンに台本が入ってるか5回は確認したし、挨拶の練習は10回以上した。
    (…………落ち着け)
    また深呼吸をする。それでも緊張は全く解けない——仕方がないことではあるけれど。
     平凡な会社員生活に嫌気が差していた時期に誘われて飛び込んだこの世界は、まさに非日常の連続だった。現場は多岐に渡ったし、トラブルだってザラ。それでもこの仕事を続けてこられたのは、会社員生活では味わえないようなとびきりの刺激があったからだ——例えば、憧れの人に会える、とか。
    (…………ニンジャジャン……)
    毎日会社と家を往復していた時期にハマってたニンジャジャンに、まさかこんな形で出会う機会が得られるとは思ってもみなかった。例えひと時の話だとしても、足繁く通ったニンジャジャンショーの舞台に関わることができるのなら、と二つ返事で引き受けた。たとえ公私混同と言われようと、このたった一度のチャンスを必ずモノにして、絶対に絶対にニンジャジャンと繋がりを作って——
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