隣国の王子 夏、期末テスト前。
「……あ、隣国の王子また来てる!」
窓の外に目をやり、佳奈が叫んだ。
「集中しなよ」
佳奈は随分と前から、ぼんやりと景色を眺めていた。教室に居残ってテスト勉強をしようと誘ってきたのは佳奈の方だというのに、開き癖のついた数学の問題集はさっきから1ページも進んでいない。前回のテスト赤点だったけど、大丈夫なのか。
「いやだって待って、校門のとこ見てよ」
何なんだこいつは、と渋々顔を上げて、私も佳奈の指差す方向を注視した。1-Eの教室からは校門がよく見える。
校門のところに立っているのは二人の男だった。片方は他校の制服を着ている。いずれも背が高い。
「あ、王子先輩と……誰?」
「名前は知らんけど、やばくない? かっこよすぎない?」
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