ボーダーライン ついこの前までは陽射しが強かったのに、ここのところ急激に気温は下がってきていた。極端な季節の移り変わりは、体ばかりではなく心になんとなくざわりとした感覚を呼び起こす。
カラーレンズ越しに見る海は空を侵食しているようにも、空が海を覆い尽くしているようにも見える。境が曖昧で分かりづらい。太陽はまだ低いが、水面には朝の光が跳ねている。
もう記憶はだいぶ薄れているけれど、海の近くで育った。海の匂いはいつまでも、慈しまれた幼いおぼろな記憶と重なる。
昨夜抱かれた体がまだだるい。
いつもと同じくとても丁寧に、かつ、いつもよりももっと獰猛に抱かれた。俺もいつもより強く彼を引き寄せた。普段と違う場所での逢瀬に、妙に気持ちが高揚していたのかもしれない。
1623