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    fukuske5050

    たまに文章書きます
    その時その時でだーーーーって書きたい部分だけ書いているので突然始まって、突然終わります…
    ▪️書いてるもの
    ・どらまいどら(のつもり)

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    POIPOI 27

    fukuske5050

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    27巻のドの葬式でしゃがみこんでた後ろ姿はマサウェ-さんですよねって思って書いた黒い衝動
    ドマド前提 ド⬅️マサウェ-さん
    💣️マサウェ-さんが大好き…💕💣️ほんとだよ…😢

    #ドラマイ
    drabai
    #マイドラ
    mydra
    #マサウェイ
    massaway.

    きたない こい どうも病院というところは居心地がよろしくない。幸い頑丈にできたからだをそこそこ無難にやってきた正道は、これまで大きな病気をしたことがない。病院なんてものに世話になったのは大むかしに歯医者に通ったことと、ひとりきりで子を産むのだと腹をくくった嬢に付き添った時ぐらいのことだ。
     ひとりきりで赤ん坊を生んだ嬢は母親にはならなかった。こんなことになるんじゃないか。そうどこかで予感していなかったかといえば嘘になる。けれどまさかその赤ん坊を自分が育てることになろうとは。流石にそれは想像すらしていなかった。どうしてそんなことになったのかなんて、今でも正道にはわからない。それがわかることなんて、この先もきっとない。

     老若男女の違いがあれど、病院の待合室で診察を待つ姿は誰も彼もが俯いて、似たり寄ったりの曇り顔だ。うっかり気弱に引き込まれたら最後、疫病神に憑りつかれる。
     正道はしょぼくれた空気から逃げるように待合室を通り抜ける。ナースセンターを通りすぎれば堅が入院する病室がある。
     無駄に頑丈なところばかり似通ったのか、堅はそこいらのガキどもよりも頭ひとつ抜きんでてでかい。15になる頃には堅の目線は正道と同じ高さになった。その頃には堅に向かって小言のひとつを零すこともめっきり減って、適度な距離を保つのが得策なのだと互いに飲み込んでいた。
     澄ました顔でいっぱしの男のように斜めに構えて見せる堅も、正道にとっては無理に大人になったようないびつな子供でしかない。堅は幼い頃から些細なことで条理というやつと小さな衝突を繰り返しつつもどうにかここまでやってきた。
     どうやらコイツは他人に降る火の粉でさえ、そ知らぬ顔でやり過ごすことができない損な性分なんだろう。そのくせガキの駄賃で二度と消えない墨をコミカメに入れ、まるで花丸でも貰ったような得意顔をしてみせる。そんな堅に、正道は半ば呆れ顔で仕方ねぇなとため息をついただけだった。
     けれどさすがの正道も朝っぱらの電話にたたき起こされ、絶句した。喧嘩の挙句、生死をさ迷う状態で病院に担ぎ込まれたと聞かされたのだ。
     やれやれだ。そう溜息をつけるのも、術後の経過が順調であるからこそだと重々に承知の上だ。堅は腹に大きな傷をこさえる程度で生き永らえた。
     まったく頑丈なところばっかり似ちまいやがる。カッケェだろ?なんて笑う堅に思わず眼がしらが熱くなって、鼻先がひくひく鳴って奥歯がガクガクと振るう。震えるこぶしでガツンとやりたい気持ちをぐっと抑え、馬鹿野郎、と言い返すのがやっとのことだった。
     鍛えた若いからだの傷が癒えるのは早い。堅はすでに大部屋に移されていた。毎日のように堅の元にはチームの誰かしらが見舞いにやって来る。みな精々がおとなしく少しばかりの時間を過ごし、殊勝にもあたりに頭を下げて病室を出ていくのだという。粗野な成りで堅を見舞うヤンチャな姿を想像しては少しばかり面白い。
     時計をみれば面会時間もそろそろ終わりに近い。店に帰る時間を計算すれば、堅の様子を少しばかり見てのトンボ帰りもいいところだった。もしかすれば見舞いにきた誰かとかち合うかもしれない。それならそれで荷物だけ置いて帰ればいい。洗いたてのタオルに着替え。店の嬢たちから預かったスナック菓子。差し入れに毎月買い込んでいる雑誌の最新刊と、ほかにも目についたいくつかを買ってきた。正道は大きな紙袋を抱えて堅の病室へ向かう。
     大部屋の一番奥の窓ぎわの一角が堅に与えられたスペースだ。見れば仕切りは薄く開いたまま。きっとまた誰かが堅を訪れているのだろう。ならばやはり、荷物だけ置いて早々に撤収コースがいいだろう。昨日より少しでも回復している顔が見れればそれでいい。正道は部屋の入口に近いベッドの住人に軽く会釈をして病室の奥へと進む。
     仕切りの隙間から見えるのは見慣れた顔だ。小柄な成りに黒い上下のスエット、伸びた前髪をうしろに束ねた髪。万次郎が堅の傍らに寄り添って見下ろしていた。
     万次郎は堅に向かってコクンと小さく相槌を打つ。正道からは万次郎の表情は半分も見えはしない。けれどそのわずかに見える顔には、堅へと向かう、ほのかなやわらぎが浮かぶ。店で見せる愛嬌のある顔とは違う、堅へと向かう万次郎のかお。
     ポケットに手を入れ小首を傾け、堅を覗き込む仕草で目じりを淡く甘く綻ばせる。唇がまろやかに緩み甘えるように笑みを溢す。からだを斜めに傾けて堅を覗き込むと、一層に目元を緩ませる。
     そうしてすいとこちらに背を向けて、ベッドの端に腰を下ろすと横たわる堅に向けてからだをゆっくりと傾ける。
     ほんの一瞬垣間見た、堅へと舞い降りるまなざしは子供(ガキ)のそれではなかった。友(ダチ)を見つめるまなざしなどでは、なかった。
     あれは、そう。例えるならば世界でたったひとつを見つけてしまった男のそれだ。
     正道からは堅の顔をみることはできない。けれど確かめる必要はないだろう。きっと堅に向かうのと同じまなざしをして、万次郎に向かい合っている。
     そしてそれを見つめる自分の顔は、世界で今いちばんの最悪を思い知った顔をしているに違いない。
     自分で自分の顔色を確かめることなんてできはしない、目にしなければそれは真実にはなり得ない。ハハハ、と壊れかけた嗤いが正道の喉を震わせる。
     手にもった荷物を握りしめ、あぁもう時間だなと思った。もう帰らなければ。店を長く空けておくわけにはいかない。荷物はナースセンターにでも預ければいいだろう。面倒をかけることを詫びなければ。次に来るときには菓子折りのひとつも用意したほうがいいかもしれない。そうでなくても時間刻みの仕事に追われる彼らに面倒を増やすのだ。申し訳ないと思う。けれど、もう、今日は帰らなければ。雑居ビルの一角のちっぽけな店の隙間。そこが正道の居場所だった。そこは曲りなりにも懸命に、赤ん坊ひとりと何人もの女の穏便を守ってきた場所だった。
     丈夫なからだと潔い心と少しばかり堅物な気質。いい男に育ったものだと思う。好ましい男に育ってしまったものだと思う。
     なんてものを。自分はなんてとんでもないものを育ててしまったのだ、と正道は嗤う。

    正道は 長い時間をかけ育てたものの正体を 知った

     鍛えた腹に這う傷に触れることは許されない。あれは自分のものではない。あれは、きっと。堅を見下ろす男のものなのだ。堅はきっともう。堅を見下ろす男のものなのだ。ベッドに横たわる堅の顔を見ることは叶わないけれど、もう確かめるまでもない。それは堅を見下ろすまなざしと、それと同じ目をしているに違いない。
     たったひとつ探し求めていたものに、堅は出会えたに違いない。それをまだ、本当の意味では気が付いてはいなくとも、もうとうに見つけているに違いない。堅は「それ」に見つかってしまっているに違いない。
     堅はもう正道のものではないのだ。最初から正道のものなんかではないのだ。

     正道は堅に背を向けて足早に逃げ帰る。帰ろう。そうして雑務に追われ俗に終われ過ごすだけでいい。堅が戻る前に、これまで過ごした毎日をやり直してしまえばいい。そうしてまた、何食わぬ顔をすればいい。そんな安っぽい綱渡りならいくらでもたやすいのだと、そう、正道はうそぶけるのだ。



     もうひと昔も前のことになる。ある日正道はひとりの赤ん坊を引き取った。そうして何年後かにその男を葬った。瞼を閉じた男の顔は安らかで、その胸にはなによりも大事なひとりを想っているに違いない。男の魂がやっと、探し追い求めたものへとたどり着いたのだ。
     正道は長く胸に棲むオトコを葬らなければならない。今度こそ。きっと。
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    fukuske5050

    MOURNING本誌済み
    真とワカとマ
    ※マは本誌の病状です さすったりしてます こういうことをしてよいのか悪いのか、調べていません
     顔色が悪いのは真一郎の方だ。僅かに自由になる時間さえも、病室でひとり横たわり、管に繋がれたまま意識のない弟の傍らから離れない。ただ生き永らえているだけのそれから離れない。医療も奇跡もまやかしも、真の最愛にできることはそれだけしかないからだ。
     万次郎のため。そのために真一郎の生活は費やされ自分のための時間は皆無に等しい。食べることも、眠ることも惜しいのだ。怖いのだ。少しでも目を離した隙に呼吸を漏らした隙に、必死に抱えた腕の中からサラサラと流れ落ち、万次郎が失われていく。
     蝕まれているのは真一郎の方だ。若狭にはそう思えてならなかった。

     職務の休憩時間に万次郎を見舞う真一郎に合わせて万次郎の病室を訪れる。それは万次郎のためではない。真一郎のためだ。若狭にできるのはその程度でしかない。訪れた若狭の呼び掛けに答えた真の声は枯れて夜明けのカラスのようだった。ギャアと鳴いてみせるのは威嚇なのか懇願なのかはわからない。せめて水を、そう思って席を外し、帰ってきた病室で見たものは。
    1853

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