≪綾人蛍≫セックスしないと出られない部屋身支度を済ませて彼女が待つ寝室へと入れば、何故か立ち尽くしたままの蛍と目が合った。途端に慌てる彼女を不思議に思いながらも、ひとまず扉を閉めようと振り返る。閉めた先には何やら白い紙。ちまっとした文字で何か書かれている。蛍の筆跡か。
『セックスしないと出られない部屋』
ほう。
彼女を見やればふいと目を逸らされる。顔を覗き込もうとしてもくるりと背を向けられて、その先を綾人が追いかけるものだから、蛍はぐるぐる逃げては回転してみせる。
「蛍さん」
「……なあに」
肩をつかんで止めさせれば、俯いたまま返事が返ってきた。頬に手を添えれば顔を見られることを恐れたのか、ぎゅうと抱きついてくる。今日はずいぶんと大胆だ。
「説明していただいても」
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