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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
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    みんなのファーストキスの話。
    狡噛さんがちょっと後悔しているお話。
    800文字チャレンジ33日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    ファースト(キス) 初めてしたキスを覚えてる? 私はね、覚えてるわ、最悪だったのよ。パーティーで酔っ払って、クラスの一番かっこいい男の子とキスをした。性格は最低だったけど。
     フィッシュ&チップスを食べながら花城は、酔っ払ったのかそんなことを言った。彼女が自分のプライベートな話をするのは珍しかった。大体いつもはぐらかされてしまうか、俺たちの話題に取り替えられてしまうから。でも今日は違った。花城は油できらきらと輝く唇をぽってりとさせて、かつてあった青春について語った。
     ソーダのしゅわしゅわってする感覚があったの、それでキスをしてるって分かった。私が飲んでたカクテルは、炭酸を使ってなかったから。あぁ、駄目ね、私何を言ってるのかしら。
     そう言うと、花城は机に突っ伏して寝息をたて始めた。したたかに飲んだ後だったが、男三人に囲まれてする話じゃなかったし、寝るなんてもってのほかだった。でも結局須郷が彼女をおぶって行動課のオフィスまで帰ることになり、俺たちは事件解決の祝杯を終えることになったのだった。
     
    「初めてしたキスは覚えてるか?」
     出島のマーケットを歩きながら、俺は狡噛に尋ねた。すると彼は俺に遠慮することもなく白状した。彼の初めては俺じゃなかった。分かっていたことだが案外ダメージがでかい。
    「告白されて、キスをしたら諦めるって言われたからその時に。中学の時だったかな」
     よくある話だった。俺はそれを聞きながら、自分の答えを探した。初めてのキスは狡噛とだった。彼が俺に告白してくれて、その時初めて人に触れた。熱い手のひら、熱っぽいぽってりとした唇、そして汗ばんだ鼻先。
    「でも、今じゃ後悔してるかな。もう少し待てば運命の相手に出会えたのにさ、キスの仕方も知らないで、お前に口付けたかった」
     狡噛はそんなことを言って、俺をマーケットの隅に引きずり込んだ。そしてキスをする。もう慣れてしまったキスをする。
    「こんなふうじゃなく、もっと戸惑ってキスしたかった。それくらいギノが魅力的だったから」
     彼はそう言うとまた歩き出した。俺の頬は火照っていた。狡噛がそんなふうに思っていたことなんて、俺は少しも知らなかったから。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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