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    佳芙司(kafukafuji)

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    POIPOI 71

    https://poipiku.com/3176962/5898028.html】の増量完結編。

    ●全文公開先はこちら→https://pictbland.net/items/detail/1649996

    #ジェイアシュ
    j.a.s.

    ごつサブに振り回されるアッシュの悪夢完結編チラ見せ***



     あれは体のいい脅しだった、とジェイは思う。強要もあったし、なんなら先日は寝込みを襲ってしまった。
     夜半アッシュが部屋を出ていく気配がして、なかなか戻らないから心配で起きてリビングへ行った。ソファで上半身だけ横に倒して眠っているアッシュがいて、こんなところで眠るなんてと思って声を掛けた。起こそうと頬を軽く撫でるくらいの軽さで叩いたりもした。
     その時確かに、ジェイ、と呼ばれた。
     普段ついぞ名前を呼ばないアッシュに驚いて、でも、アッシュは目を閉じたままだった。どうにもむず痒い気持ちで、もう一度呼んでほしいような気持ちになって、唇に触れてしまった。
     あの時アッシュが目を開けていたら、どうなっていたのか。もったいないような気持ちもあるし、あれでよかったのだという気持ちもある。
     どちらにしても、夢だと言って誤魔化したのはジェイだ。完全に出来心であったし、アッシュの方も例の事件の日については一切話題に出さなかったし、あの夜の翌日もいつも通りで、何もなかったかのように振る舞われた。
    (本当に何事もなかったかのようになってるなぁ……)
     ジェイが部屋に戻るとアッシュは既にベッドで横になっていた。壁の方に顔を向けて横になるアッシュの後頭部をじっと見つめて注意深く耳を澄ませると、穏やかな寝息も聞こえてくる。本当に眠っているらしい。
     こうして見るとあの夜は一体なんだったのだろうかとさえ思う。本当にたまたま、夜中に目が覚めただけで、ついうたた寝をして、本当に夢という事にされているのか。いずれにせよ、アッシュがそう望むのであれば、それでいい。ジェイは口の中だけで呟く。
     あの日の事はなかった事にすればいいと思う一方で、何か引っかかるような気がするのは、身勝手な罪悪感からだ。決して寂しさではない。こんな余所事を考えてしまう日は眠ってしまうに限る。
     ジェイは目頭を揉んで、ふぅと息を吐いた。深呼吸してみても妙に落ち着かない。ベッドに潜り込んでからも眠る気になれず、ジェイはそっと自分の唇に触れてみた。この唇でアッシュに触れた。……触れた筈、だ。何故か不安になってくる。柔らかかったし、唇の内側に指で触れた時はあたたかくて、舌先は熱があって、湿っていて。
    (このままだと忘れてしまうな……もったいない)
     ジェイは苦笑しながら枕元のスタンドの灯りを消した。


    ***
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    佳芙司(kafukafuji)

    REHABILI園子さんは正真正銘のお嬢様なので本人も気付いてないような細かなところで育ちの良さが出ている。というのを早い段階で見抜いていた京極さんの話。
    元ネタ【https://twitter.com/msrnkn/status/1694614503923871965】
    京園⑰

     思い当たるところはいくらでもあった。
     元気で明るくて表情豊か。という、いつかの簡潔な第一印象を踏まえて、再会した時の彼女の立ち居振る舞いを見て気付いたのはまた別の印象だった。旅館の仲居達と交わしていた挨拶や立ち話の姿からして、慣れている、という雰囲気があった。給仕を受ける事に対して必要以上の緊張がない。此方の仕事を理解して弁えた態度で饗しを受ける、一人の客として振る舞う様子。行儀よくしようとしている風でも、慣れない旅先の土地で気を遣って張り詰めている風でもない。旅慣れているのかとも考えたが、最大の根拠になったのは、食堂で海鮮料理を食べた彼女の食後の後始末だった。
     子供を含めた四人の席、否や食堂全体で見ても、彼女の使った皿は一目で分かるほど他のどれとも違っていた。大抵の場合、そのままになっているか避けられている事が多いかいしきの笹の葉で、魚の頭や鰭や骨を被ってあった。綺麗に食べ終わった状態にしてはあまりに整いすぎている。此処に座っていた彼女達が東京から泊まりに来た高校生の予約客だと分かった上で、長く仲居として勤めている年輩の女性が『今時の若い子なのに珍しいわね』と、下膳を手伝ってくれた際に呟いていたのを聞き逃す事は勿論出来なかった。
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