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    sayuta38

    鍾魈短文格納庫

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    sayuta38

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    モラショ。初見会ったのがヤマガラ魈くんだったら、、、という話。
    続くかはわからない、、、

    #鍾魈
    Zhongxiao

    小鳥の君(これは……)
     近頃勢力を増していた厄介な魔神をようやく沈めることができた。あの魔神の傍には強靭な夜叉がいると聞いていたが、何故かあの場にはいなかった。それも勝利の理由の一つかもしれない。他の者には休むよう伝え奴の拠点跡地に赴き、危険因子が他にもいないか、捕らわれている凡人がいないかなどモラクスは調べて回っていた。
     しかし、檻の中に入れられていた凡人は、無惨にも食い散らかされた跡があった。助けられなかったことを悔み、持ってきていた籠から花を取り出し手向ける。生きている者はいないように思った。もう辺りは花だらけである。ふわりと風に乗って魂を送るかのように花びらが飛んでいった。
     そんな時だ。手のひらより少し大きい程の小さな檻に、翡翠色の何かが閉じ込められているのを発見した。小型のスライムかとも思ったが、拾いあげて良く見ると、それはヤマガラ程の小さな鳥だった。
     羽ばたくことも身動きも取ることもできない程にヤマガラの身体と同じサイズに作られている檻ではあったが、丁寧に檻の柱と足首が鎖で繋がれている。魔神のお気に入りの鳥であったのか? と思ったが、大事にされているにしては毛並みは良いとは言えない。所々羽が抜け落ちていて、肌が見えている。目を閉じ蹲っているヤマガラは、事切れている可能性もあると思った。それならば土に埋めてやろうと檻を壊し手のひらに乗せると、僅かに息をしているのに気付いた。心臓の音が弱い。すぐに息絶えてしまうだろう。
    (ただの鳥ではないな……仙獣か?)
     戦をしているのは魔神だけではない。凡人も仙人も皆戦っている。まだまだこの地を統治するには時間がかかる。この仙獣は何か情報を持っているかもしれない。そう思い、モラクスは拠点へと連れ帰った。

    「モラクス、何か情報はあったかしら?」
    「いや、もぬけの殻であった」
    「そう……それは?」
     拠点でモラクスの帰りを待っていた帰集が、手のひらに乗せていたままだったヤマガラに興味を持っていた。
    「奴の拠点に囚われていたヤマガラだ。唯一生き残っていたので連れて帰ってきたが、直に息絶えるだろう」
    「そう。仙獣かしら? まだ小さいわね。温めて仙力を分け与えてあげれば回復する可能性はあるかもしれないわ」
    「ふむ……」
     じっと丸まっている翡翠色の塊をみる。みるみるうちにぐったり横たわっていったので、もう生きることを諦めていると思った。もしこいつが生きたいと少しでも思っているのならば、契約を交わすこともできるが、生憎とここまで目を開けることも一言も声を発することはなかった。
    「試してみるか」
     帰集に別れを告げ、モラクスは自分の洞天へと帰った。ここは元素力が満ちている場所なので、仙獣であれば回復する可能性はある。寝台に座り込んで胸元に抱えてみたが、これで温まっているのかは不明だ。建物の中には、簡素な寝台に申し訳程度の掛布団しかない。ひとまず布団でくるみ、ゆっくりと仙力を与える。まだ脈は弱い。ならばもう少し、と思った所でヤマガラがゆっくり目を開けた。臙脂色の瞳だった。
    「!?」
     バサァ! とヤマガラが翼を広げ、手のひらから飛んで床に向かって転げるように落ちた。逃げ場などないのだが、ヤマガラは翼を広げたまま寝台の下に潜り込んでしまった。
    「ここは俺の洞天だ。よって、ここからは逃げられないと思え。お前はあの拠点で何をしていたか教えてもらおうと思い助けた。どうだ。何か話せるか?」
    「…………」
     寝台に座ったまま下へ話しかける。しかし、声は返って来なかった。
    「死を選ぶか? ならばそれも良い」
     仙力を分け与えた内部から破裂させることは容易い。話さないのならば、生かしておく理由もない。
     ぐっと手を握ったところで痛みを感じたのか、潰れたような呻き声が聞こえた後、寝台の下からヤマガラが這い出てきたので、握った手を緩めた。
    「ぁ……われは……」
     てっきり鳥の鳴き声がするものと思ったが、それは人の言語で話し始めた。
    「命乞いをするつもりはないが、知っていることも、ない……しかし、質問には答える。仙力をもらった分だけ、恩は返す」
    「ふむ……」
     その後は、先程やりかけたように殺してくれ。足元に転がるヤマガラは言葉に詰まりながらも、たどたどしくそう言った。
    「では手短に聞こう。お前はあそこで何をしていた?」
    「……仙力を抜かれ、罰を与えられていた」
    「お前は仙獣だな。魔神に仕えていたのか?」
    「我は……夜叉だ。仕えていたというよりは……使役されていたという方が近い」
    「お前が魔神の傍にいたという強靭な夜叉か?」
    「わからない……ただ、人も魔神も仙人もたくさん殺めたのは事実だ」
    「そうか。お前以外に生き残っている者はいるか?」
    「わからない……あの場にいた者は、皆出払ったように思う」
    「そうか」
     一通りモラクスの聞きたいことは聞けた。ヤマガラも口を閉じた。しばしの静寂が訪れ、もうこのヤマガラは用済みと言えばそうだ。
    「……我も、死ぬ前に一つだけ聞いても良いだろうか」
    「ん? なんだ。言ってみろ」
    「魔神の気配がしなくなったのだが……」
    「ああ。俺が封じた」
    「そうか。ならば、我は解放されてしまったのだな……」
    「あの魔神を慕っていたのか?」
    「違う……」
     ヤマガラが言葉に詰まり、首を振った。そして、その続きを話すことはなかった。
    「我も聞きたい事が聞けて満足した。では、我は自死できぬ故、すまないが殺してくれぬか」
    「ふむ。俺の名はモラクスという。最後にお前の名を聞いて良いか?」
    「モラクス……そうか。お前のことは魔神がよく話をしていたが、見るのは初めてだ。我の名は……教えたいが、名を縛られていて、発することができない。すまない」
     魔神を屠ったにも関わらずまだ名を縛られているとは、余程強い力でこの夜叉を使役していたのだろう。
    「わかった。すまぬがもう一つだけ知りたい。時に聞くが、お前はその姿で戦闘をするのか?」
     敵対勢力にいた夜叉などさっさと殺してしまえば良いのだが、目の前にいるのが噂の強靭な夜叉なのであれば、とてもではないが腕の立つ見目はしていないと思った。他にも腕の立つ夜叉が潜んでいるのであれば脅威である。少しの疑問でもこの場で解消できるのならば解決しておきたい。
    「我は……普段は人の形を取っているが、この通り仙力を抜かれその姿を保っていられない」
    「魔神を葬った俺を憎むか?」
    「……無益な殺生から解放されたことに感謝すれど、憎むなど……」
    「なるほど」
     夜叉と言えば戦を好んでいる上位の仙人だという印象がある。しかし、目の前のヤマガラはとてもではないが戦闘する姿が想像できない。
    「もう少し仙力をわけ与えれば、人の形を取れるのか?」
    「我は……」
     夜叉は黙ってしまった。殺される寸前でそのようなことを言われるとは思っていなかったのだろう。先程から質問には嘘偽りなく正直に答えているようにも思う。つまり、人の姿を取れるということだ。
    「お前は解放されて、生きたいとは思わないのか?」
    「……思わない。しかし、安易に死を選ぶ権利もないだろう」
     殺されるのならば仕方がないが、生き永らえる気もない。そう夜叉は言っていた。モラクスがあの時見つけていなければ、そのまま仙力が尽きて死んでいたのだろう。
    「死ねない理由があるのならば、俺の元に来ないか? 俺は戦力が欲しい」
    「……」
    「無理にとは言わない。お前を殺すことはいつでもできる。しばしここで休んで考えてみるといい」
     そう言ってヤマガラに手を翳し仙力を送った。しばらくそうしていると、一陣の風が吹き、翡翠色のヤマガラは姿を変えた。
    「ほう……」
     モラクスは思わず息を呑んだ。身体の至る所に傷を負っていたが、それも気にならない程に大層美しい顔をした……金色の瞳を持つ少年が現れたのであった。
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