体の熱をはやく冷ますことを優先して、コンビニで買った冷えた水をタオルで包んで首を冷やして、日陰になりクーラーもよくきいた隅のほうのイートインスペースに座らせてくれた。
さすが吉田くんだなあと感心していると、救急車呼ぼうか?と深刻そうな低められた声。
軽いめまいと喉の渇きはしたがそこまででもない。大丈夫だよ、とせめて伝わるように明るく声をだすと、彼の視線が周りを泳ぐ。
「ちょっと待ってて」
「え、う、うん」
彼が荷物を席に置いて、お店の方に走る。空いているからすぐに彼が両手に買ったものを持って小走りに戻ってきた。
「ソフトクリーム!」
「勝手に買ってきたけど、大丈夫?冷たいものほしいとおもって」
「ううん、ありがとう…あっお金返すね」
「いいよ、それより熱中症で倒れたら大変だから」
温いスポーツ飲料を口に含んだけれど冷たいものもちょうど欲しかったところだ。
吉田くんはこうして自然と、なんてことはないというように親切できる。そうしたところがまだ心を揺さぶって、暑さでめまいを起こしたときとは別の息苦しさを胸に与える。
「好きだなあ」
「……え?」
「あ、違うの、ちゃんとした処置とか、ちゃんと親切できるところ、すごく尊敬できて人として好きだなっていうことで」
「あ…ありがとう」
困らせたいわけじゃない。椅子一人分の隙間を挟んで座る彼の下がった眉尻と、ぎこちない声にどういえば伝わるか熱でぼやけた思考ではわからず、ソフトクリームを一口。
「……体、大丈夫?」
「うん、めまいはなくなったみたい
ごめんね、吉田くんはただ通りがかっただけなのに迷惑かけちゃって」
「迷惑じゃないよ、坂本さんがなにかあったらほうっておけないよ」
「……うん、本当にごめんね……ありがとう」
黙ってしまったからかまた体調が悪化したのかとおもったのか顔を覗かせてくる吉田くんに、そんなに心配してくれたのに雰囲気を壊してごめんね、とは口に出せず、精一杯声をこもらせないように笑顔をつくって、体にこもった熱をはやく下げたくてソフトクリームをただただ舐め続けた。