Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    Walnut_51

    @Walnut_51

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 5

    Walnut_51

    ☆quiet follow

    モクチェズワンドロワンライのお題"オフィス"をお借りしました。
    モブ視点から見た2人のお話で、モクチェズ本人たちは出てきません。

    #モクチェズ
    moctez

    顔も知らないあなたへ「ドレミ財団さんへ、お届け物でーす!」
    軽快なノック音ととに、扉の外から威勢のいい声が聞こえる。はーいとオフィスの薄い扉を開けると、見慣れた配達員の青年が、額に汗と砂つぶを輝かせながら立っていた。
    彼の背後には大きな段ボールがたくさん見え隠れしている。
    大層な荷物の送り主はナデシコ・レイゼイ?住所はミカグラ島……って、確か極東のリゾート地だったような。
    ミカグラ、聞いたことあるな……なんて考えながら、青年を待たせるのも申し訳がないので急いでサインをする。

    「アラナさーん!ミカグラ島のナデシコさんって方からお荷物届きましたー!」
    はーい、と明るい返事と共に、玄関へやってきたアラナさんも、随分な荷物の量に驚く。
    「すごい量ね……ああ、ナデシコさんから!」
    送り主の名前に心当たりがあるようで、彼女の空気が和らぐ。

    なんだなんだと集まった財団事務局のメンバーたちと封を開けた荷物の中には、立派な芋がたくさん。なんでも、ナデシコさんはミカグラに住むアラナさんの友人で、この芋はミカグラの名産品らしい。

    荷物に紛れた手紙を読んでいるアラナさんを横目に、我々は袋や箱を持ち寄って芋の取り分けに大賑わい。
    いくつもあるの段ボールを開封し、子供たちと食べる分と、事務局メンバーの家族に分ける分と……わいわいと取り分けていると、アラナさんが私の肩を叩いて賑わいの外へ連れ出した。

    「アンタのボスの分、確保しといたよ」
    そう言って上等な芋が入った紙袋を渡された。
    「ナデシコさんからの手紙に、モクマさんもこの芋が好きだって書いてあったからさ」
    あなただったら届けられるでしょ?といたずらっ子のような笑顔でアラナさんは私を見た。
    私のボス、名前も知らない人。そうだ、モクマさんの出身ってミカグラだった。
    「……ありがとうございます、送っておきます」

    ドレミ財団を裏で支える組織、私の正式な所属先だ。と言っても、所属先の正式名称も知らないけれど。世界中を飛び回るボスを、財団に身を置きながらサポートするのが私の仕事。
    ボスとは基本メールのやり取りのみだが、モクマさんという人からはたまに電話がかかってくる。モクマさんはボスの相棒だそうで、仕事先で起きた面白いことや美味しいものの話を聞かせてくれる気のいいおじさんだ。調子のいい話をしながら、その実は、財団と組織の間で仕事をする私を気遣ってくれているように思う。会ったことはないけれど、モクマさんのことは結構好き。
    そういえば、ボスから次の拠点へ届けてほしい物資のリストが来ていたっけ。その荷物にこの美味しそうな芋も紛れさせてみようかな。

    ボスから届くメールは事務的で、メールを見るだけでは彼(彼女かもしれないけど)は結構冷たい人のように感じる。でも、モクマさんが電話の中で話す”大将”はメールから感じるのとは随分違う、素敵な人のようだった。だって、”大将”の話をするときのモクマさんはなんだか声が穏やかだ。たまにしか話してくれないけど。
    物資のリストにないものを送るなんて今までしたことないれけど、きっと喜んでくれるよね。今回は手紙も添えてみようかなんて、詮索しないことを条件に始めた今の立場で、許してもらえるだろうか。
    顔も知らない2人はきっと喜んでくれるという妙な自信と共に、今日は人生で初めて便箋を買って帰ることを心に誓った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺☺☺👍👍❤❤❤❤❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    ムー(金魚の人)

    DONEモクチェズワンライ0213「甘味」で参加です。
    モクチェズ初めてのバレンタイン、と言っていいのかなコレ。

    ※大祭KAGURA後、ミカグラ島を発つ前
    モクマの退院は「大祭KAGURAから数週間後」なので大祭KAGURAを1月末開催とし、バレンタインの時はまだ入院中と仮定してます
    『恋の味 確かめてみて』
    「お?」
    テレビから聴こえてきた馴染みある声にモクマは食いついた。
    DISCARDと決着が付いた後、モクマはほか3名の仲間と共に病院送りとなっていた。戦いで傷ついた身体を癒やし、4人部屋で他愛のない話をしては大笑いして看護師さんに注意を受けていたのもはじめの1週間だけ。その後、アーロン、ルークに続いて先日チェズレイも退院してしまった。今は大部屋を独占状態だ。
    モクマの退院は順調にいってあと1週間後らしい。これが若さか……と自身の重傷具合を棚にあげて心で泣いた。
    一人きりになったモクマの退屈を癒やしてくれたのは、個室に備え付けられている19インチの液晶テレビだった。
    そのモニターには赤いバラをあしらったドレスを着た歌姫スイが自身の楽曲をBGMにミカグラチョコレートの宣伝をしているところが映っていた。四角いチョコレート菓子を頬張る笑顔が眩い。
    2674