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    Haruto9000

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    「ランサーのクー・フーリンが女性だったら」妄想、第3話。
    ※FGO第1部のみの情報で書いていたので、設定ズレなどはご容赦ください。

    【あらすじ】
    スカサハは、女性のクー・フーリンの実力を測るべく、手合わせを行うことにした。
    自ら手合わせを行い、さらに、次の相手にバーサーカークラスのクー・フーリンを指名するが…。

    #オル槍
    spearWithCurvedCross-blades
    #女体化
    feminization

    ミラーリング #3(カルデア編) 強くなりたい、と彼女は泣いた。
     誰よりも強く。男たちにも負けないように強く。
     声を震わせて泣く彼女を膝に抱き、その髪をなでながら、私は誓った。
     ──おまえに私のすべてを授けよう。おまえをアイルランド最強の戦士にしてやる、と。

    ✳︎✳︎✳︎

    「おまえが相手をしろ、バーサーカーのセタンタよ」
     スカサハの言葉に、オルタは面倒くさそうに振り向いた。
    「……なんで俺が」
    「年齢的に、おまえが一番槍のセタンタと近い。加えて、おまえのクラスはバーサーカー。他のクラスを圧倒する力を持つおまえに、槍のセタンタがどれほど挑めるか見てみたい」
     ランサーは、あごを引いてオルタを睨みつけた。師匠に「他を圧倒する力を持つ」と言わしめたこの男が気に入らなかった。
     そもそも、初見でいきなり不躾な態度を取られたのだ。好印象を持てというほうが難しい。
    「そうかい。次の相手はおまえか、バーサーカーのオレ」
     ゆらりとオルタがランサーを見る。ランサーはくるくると片手で槍の柄を回した。
    「オレ……でいいんだよな。フン、まったく、”クー・フーリン”が何騎もいるとあっちゃあ、やりづれえな。加えて、こっちのクー・フーリンは男だっていうのもよ」
     ダン、と槍を床に落ち下ろす。
    「でも、めったにねえ幸運だ。自分自身と戦えるっていうのはな!」
     ランサーの目が好戦的に光る。オルタは黙ったままだったが、右手に己の槍を現出させた。その禍々しい形状を見て、ランサーが眉をひそめる。
    「マスター、構わんかな?」
     スカサハが尋ねた。マスターはワクワクとうなずく。
    「もちろん!」
    「よし。それでは、始めるぞ。二人とも、位置につけ!」
     ランサーとオルタが向かい合った。ランサーが腰を落として身構える。オルタも、槍を右手に構えた。
    「はじめ!」
     ざあっと冷気が辺りを包む。それぞれの赤い槍が魔力をまとい、煌々と燃え上がる。
    「そら!」
     ランサーがオルタに飛びかかった。オルタは片腕で一撃を抑える。そのまま手首を返し、ランサーに突きを繰り出した。ガキン、と音がして槍同士がぶつかる。
     重い──!
     その打撃の重さに、ランサーは後方へ吹き飛んだ。すぐさま空中で身を翻し、着地と同時にオルタの元へ飛ぶ。
    「オラァ!」
     槍を振りかぶる。フードに隠れていたオルタの赤い目がギラリと光った。
     その瞬間、ランサーは脇から何かに弾き飛ばされた。
    「!?」
     そのまま壁に激突する。強かに背中を打って咳き込む。
    「ランサー!」
    「ランサーさん!」
     マスターとマシュが叫んだ。ランサーは油断した自分を呪い、怒りと共に立ち上がった。
    「てめえのその可愛いしっぽは躾がなってないらしいなぁ?」
     ぺっと床に血の混じったつばを吐く。オルタはゆっくりとした動作で振り向いた。ランサーを張り飛ばした尾を床に下ろす。
     ランサーは槍を握り直し、一直線にオルタに向かった。キィンと金属音が跳ねる。
     先手必勝とばかりに、ランサーは鋭い突きを繰り返した。激しい連打を抑えながら、オルタはじりじりと後退する。
    「そのデカいナリでどれだけ動けるか──」
     ランサーがぎゅんと槍を振った。オルタの被っていたフードが吹き飛ばされ、群青の髪が宙に舞った。
     勢いに乗ってランサーはオルタの横面を蹴る。「ぐっ」とうめき声が聞こえた。
     もらった!
     そのまま打ち込もうとした槍を、しかしオルタが太刀打ちで受けた。オルタの槍を弾こうとするが、逆に槍を押し返される。
     相手の力の強さに、ランサーは舌打ちをした。すばやく指でルーン文字を刻む。魔力の光が腕と槍を包み込む。
    「ハァッ!」
    「!?」
     再度突っ込んできたランサーの攻撃を受け、オルタは目を見開いた。重い。
     すぐに魔術で肉体強化をしたのだと察する。女の身では軽い攻撃も、ルーンの強化で並みの男以上の重さとなっていた。
     ランサーは激しく打ち込んだ。もともとの身軽さとルーンで強化した攻撃とで、オルタが受け身になる。
     さあ、その鈍重な図体で、どれほど自分を追ってこれるか。
     勢いよくオルタの体を蹴り、ランサーは高く飛び上がった。槍が激しく朱色に光る。とどめと槍を振りかぶる。そのとき。
    「!?」
     瞬間移動したように、オルタの顔が目の前にあった。
    「なっ!?」
     そのまま太い槍の柄が打ち下ろされる。ランサーは激しく床に叩き落された。
    「相手の速さを見誤ったか」
     スカサハが呟く。
    「敏捷性において、バーサーカーのセタンタは頭ひとつ飛び抜けているぞ」
     シュウシュウと魔力が漏れる音がする。オルタは着地し、相手の様子を見ようとランサーが墜落した場所に歩み寄った。
    「!」
     すばやく腕が伸び、オルタが地面に引き倒された。そのまま槍の柄が回り、オルタの首を絞める。
     呼吸を荒げながら、ランサーがニヤリと笑った。逃れようとオルタは身をよじるが、逃がすまいとランサーは両足でオルタの胴体を締めにかかった。
    「そこまで!」
     スカサハの声に、ランサーが体の力を緩める。オルタは咳き込みながら立ち上がった。
    「見事だったぞ、おまえたち」
     スカサハが満足そうにうなずいた。プロトは目をキラキラと輝かせ、キャスターもうらやましそうに見つめている。
    「師匠! どうだった? オレの戦い!」
     スキップでも始めそうなランサーの声色に、スカサハは微笑んだ。
    「うむ、悪くなかったぞ。ただし、相手の見た目で力量を判断するのは早計だな」
     ランサーはぐう、とうなった。褒めてもらえると思っていた肩がしょんぼりと落ちる。
     しかし、スカサハに乱れた髪を整えられると、すぐにまた嬉しそうな表情になった。
    「師匠! 女のオレー!」
     すっかりテンションが上がったプロトが、二騎に向かって駆け出していく。入れ違いに、オルタがのっそりと戻ってきた。
    「お疲れさん」
     キャスターがねぎらいの言葉をかける。オルタは手に握っていたフードを雑にかぶり直した。
    「あー、やっぱり槍はいいよなー。どうだったよ、女のオレの槍は?」
    「…………」
    「おーい、なんか言えよー」
    「……あれは、俺の槍とは違う」
    「は?」
     オルタはそれきり黙ってしまった。そのままキャスターたちの横を通り過ぎ、シュミレーター室から出ていこうとする。
    「あっ、オルタニキ!?」
     マスターの慌てたような声に、オルタは尾をゆらりと動かした。
    「俺は部屋に戻って寝る。何かあったら呼べ」
    「えっえっ」
    「あっ、クーちゃ〜〜〜ん! 私が添い寝してあげる!」
    「いらねえ」
     マスターがあわあわとしている間に、オルタはさっさと出て行ってしまった。メイヴも一緒にドアの向こうへ消える。
    「それで、と。マスター。あのクー・フーリンをこれからどうする?」
     フェルグスが尋ねる。
    「え? あ、えっと。とりあえず種火あげて、レイシフトにも出てもらおうかな。スカサハたちの様子見ても、すごく強いってわかったし」
    「それはいいな! そのときはぜひ俺も一緒に頼むぞ。できれば、部屋も同じに」
    「それはないから!」
    「でも、本当によかったですね、先輩! 今度こそ麻婆豆腐じゃなくて、サーヴァントを召喚することができて!」
    「うん、やったよ〜! 本当はエレシュキガルに来てほしかったんだけど、これはこれでよかった!」
     新しいランサー、それも新たなクー・フーリンで、しかも強いとわかったマスターの声は弾んでいた。マシュと嬉しそうにハイタッチし、自分たちもスカサハやランサーたちの話の輪に入れてもらおうと飛び出していく。
     楽しそうなマスターたちの姿を見ながら、キャスターはボリボリと頭をかいた。
    「む? どうした、キャスターのクー・フーリン。おまえはあちらに混ざらんのか?」
    「いや……」
     フェルグスの声に、煮え切らない声を出す。キャスターはちらりとシュミレーター室のドアを見た。

     ──あれは、俺の槍とは違う。

     出ていく間際に言い残されたオルタの言葉。
    「……なんのこっちゃ」
     キャスターはぼそりとつぶやいた。
    「おーい! キャスニキー! フェルグスー! こっち来てー!」
     マスターがぶんぶんと腕を振っている。
    「そら、いくぞ」
    「ああ」
     あの不可解な言葉は、あとでオルタに問い正そう。
     先ほどのことは心のうちに秘め、笑顔を作ると、キャスターはマスターたちの元へ歩いていった。

    「それじゃ、改めて紹介するね!」
     マスターが弾んだ声で手を叩く。
    「こちらはプロトタイプのクー・フーリン! キャスニキたちのもっと若い頃なんだって! 通称プニキです!」
    「おう! よろしくな!」
     プロトはハキハキと手を上げた。ランサーは怪訝な顔をした。
    「プニキ?」
    「あっ、プロトタイプと兄貴の略なの! クー・フーリンがいっぱいいるから、あだ名つけることにしたんだよ。クラス名だと、他にもここにはサーヴァントがいっぱいいて、紛らわしいしね」
    「へえ」
    「まだ修行中の頃らしいから、プロトタイプってことで。んで、クー・フーリンは兄貴キャラ! って感じだから、プニキ。で、こっちはキャスニキ。キャスタークラスのクー・フーリン」
     ランサーがゲッという顔をした。言わずもがな、セクハラのせいである。
     思わず槍を握り締める女の自分を見て、自業自得ながら、キャスターは苦笑いをした。
    「さっきは悪かったな。オレはキャスタークラスで召喚されてる。驚くだろうが、今のオレはドルイドだ。よろしくな」
    「えっ、じゃあ、じい様と同じ?」
    「ん、まあそういうことになるな。この格好も見覚えあるだろ」
     キャスターは杖を取り出し、霊装が見えやすいように腕を広げてみせた。
     ランサーが「わあ」と声をあげた。子どものような反応が愛らしい。キャスターは右手に小さな炎を出してみせ、片目をつぶる。
    「ルーン魔術なら負けねえぜ?」
    「キャスニキは、このカルデアで最古参のサーヴァントなんだよ! あたしもときどきルーン魔術を教わってるの」
    「へえ、そいつは驚いたな」
    「あとは、部屋に帰っちゃったんだけど、さっき戦ったのがバーサーカークラスのクー・フーリンね。オルタナティブの姿だから、あたしはオルタニキって呼んでる」
    「あいつかぁ」
     ランサーは露骨に嫌な顔をした。
    「まあ、そういう顔をするな、槍のセタンタ。あやつは確かに愛想はないが、根は悪いやつではない」
     スカサハがころころと笑う。ランサーは、「師匠がそう言うなら」と渋い表情で口を尖らせる。
    「えっと、スカサハ、フェルグス、メイヴちゃんのことはわかる?」
    「ああ。師匠たちはオレが知ってる姿そのままだし。っていうか、メイヴがいるのも信じらんねえな。あいつ敵国の女王だったのに」
    「今は、メイヴさんも人理修復のために協力してくださっているんです」
     マシュがにっこり笑った。「ふーん」とランサーは頰をぽりぽりとかく。
    「ま、味方だってんならいいか」
     さっぱりと言いきり、ランサーはきょろきょろと周りを見回した。
    「オレと同じケルトのサーヴァントはこれで全員か?」
    「んー、フィンとディルムッドはいるけど。でも、それで全員だね」
     マスターの言葉に「そうか」とランサーはうなずいた。
    「さて、じゃあ、あだ名はどうしよっか」
    「あだ名?」
    「そう。クー・フーリンがたくさんいるから、あだ名で呼んでるって言ったでしょ? ランサーにもつけたいねって。えーと、兄貴……じゃなくて、女の人だから、姉貴でいい?」
    「ま、オレは別になんでもいいぜ。好きに呼んでくれや」
    「じゃ、ランサーと姉貴で、槍ネキね!それじゃあ、これからよろしく、槍ネキ!」
    「おう!」
     マスターが差し出した手を握り、ランサーはにっこりと笑った。


    「クーちゃん、どうしたの?」
     ずんずんと歩いていくオルタに並び、メイヴが尋ねる。顔を覗き込むが、戦闘時以外は常に無愛想な表情はいつもどおりだ。強いて言えば、いつもより眉間に皺が寄っている気がする。
    「あの子との戦いで何かあったの?」
    「……気に入らねえ」
     ぼそっとオルタはつぶやいた。
    「えっ?」
     メイヴが目をぱちくりとさせたところで、部屋についた。
     通称「クー・フーリン部屋」。
     オルタ、キャスター、プロトの寝泊まり用として割り当てられた三人部屋だ。
     オルタはそれ以上何も言わず、のそのそと中に入っていった。当然のようにメイヴも付いていこうとして、目の前でピシャンとドアが閉められる。
    「あっ、ちょっとクーちゃん! 開けてよー!」
     廊下にメイヴの叫びが響いた。
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