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    meemeemeekodayo

    基本かくか受けで文章を書いている者です。たまに別ジャンル

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    meemeemeekodayo

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    どっちも女装する彧嘉。するだけで何もない。

    誤算黒髪に櫛を通す。引っかかることなく滑るように入り毛先から抜け出すと仄かに良い香りが漂った。その動作を幾度か繰り返す内に彼の髪には艶が増して、毛の流れも随分美しくなっていた。少々癖のある髪だが元の質は悪くない。硬めだが光を受けて輝く髪は昔からよく知る彼のもので思わず唇を寄せたくなるほどだった。
    「結ばないのですか?」
    「ええ?どうして?」
    「……落ち着きません」
    「そうなの?」
    勿体ないと郭嘉は思った。ひとつに纏めても美しいが結ばずに自由にしておいた方がもっと美しい。丁寧に梳いたおかげで魅力的なのに縛っては勿体ない、そう説けば荀彧は曖昧な声を出した。
    「首に当たってくすぐったい訳ではないんでしょう?」
    「それはそうですが」
    「なら、大丈夫。この方が似合っているよ。とても、ね」
    脇に置いてあった鏡を手渡す。受け取った荀彧が覗き込めば背後にいた郭嘉も写り、その中で視線が交わった。
    下ろした黒髪がかかる肩を覆う着物は、いつもと同じ黒色だが形状が異なる。一目見ても違和感はないけれどれっきとした女物だ。露出がほぼない、すっぽりと被る形の衣だから郭嘉としては「いつもの荀彧」とそう大差なかった。だからこそ髪型まで普段通りにしては面白味に欠けてしまう。落ち着かないと再度吐露する彼の両肩に手を置いて宥めるように撫でてやった。
    郭嘉もまた着ている衣は女の物だった。たっぷりとした袖、ふんわり舞う裾、中に着込む肚兜は可愛らしい刺繍が施されている。鎖骨の辺りが見えているから荀彧よりも僅かながら露出が高い。空いた首元が寂しいからと、小さな青い石のついた首飾りを身に付ければ立派な女子の出で立ちである。
    「私も髪、伸ばそうかな」
    半分冗談で、半分本気だ。長ければもしかするとより女性っぽくなれるかも、という冗談めいた戯言の中に彼と似た長さにしてみたらどうなるだろうという淡い期待があった。
    そんな心情を知ってか知らずか荀彧は何も言わず、やや眉を寄せて鏡の中の郭嘉と見つめ合っていた。
    「どこか、可笑しい?」
    「似合っていない訳ではないのですが……そもそもこんな格好をすること自体、可笑しいかと」
    もっともな意見だ。
    これは郭嘉の単なる気まぐれだった。中性的な顔には自信があったから女装をすればきっと美しいはずだと、気まぐれにそんな遊びを思いついた。余暇を過ごす荀彧を半ば強引に誘い二人きりで支度を済ませてみたが悲しいかな、思い浮かべていた姿よりも実物は逞しかった。
    綺麗だとか美人だとか言われても結局は男の顔と骨格だし、華奢に見えたのは日頃筋骨隆々な将や背の高い人らに囲まれているせいだ。荀彧に至っては上背が郭嘉よりもあるから、やはり立って並んでみると想像以上に雄々しさが残ってしまっていた。
    「面白いかと思ったのだけれど」
    苦笑しながら荀彧の手から鏡を受け取る。自分で持ってみて中を覗き込んでもやはりいつもの己がいるだけで、残念ながら絶世の美女は生まれなかった。
    「わざわざ衣装も用意したのですか?」
    「むしろそれが肝心要かと思って」
    胸元から覗く刺繍を指でなぞる。本来ならばもっと柔らかい肌を彩るはずだったのに、今は痩せた胸板を覆っている。せめてもう少し肉付きが良ければ見れた姿だったろうに、残念だ。
    中へ指を入れて引っ張ってみても薄い胸があるだけだった。
    「見えてしまいますよ」
    荀彧が手を重ねてきた。そっと、壊れ物を扱うかのごとく繊細な動作で郭嘉の胸元を押さえる。
    「見えたところで、じゃないかな」
    「……間違えました。冷えますよ、と言いたかったのです」
    わざとらしく咳ばらいをされる。誤魔化すように視線を逸らされるが彼の頬はほんのり紅かった。
    その顔は、凛々しい眉の普段通りの荀彧の表情なのだけれど今日の格好も相まって妙に心が揺さぶられる。
    「姉上は心配性だね」
    「誰が姉上ですか」
    郭嘉の言葉を聞いた彼の手が離れていく。ゆっくりと、どこか名残を惜しむような仕草だった。
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