Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    dokuitu

    @dokuitu
    字書きです。何でも書いて何でも食べる(好きなものだけ)

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 17

    dokuitu

    ☆quiet follow

    小桜さんのドックタグ攻司前提の来世タカヒデ
    最高だからそっちから先に読むんだ、いいね?

    薬指の誓い今日のタカヒロは少し変だ。……と、ヒデユキはちらりと横目で彼を見た。
    なんだかそわそわしていて、居心地が悪いのか座り直したり、やたら深呼吸を繰り返している。
    何度か見た事があるので分かっている。あれは緊張しているときの癖だ。

    例えば、大事な試合の前日。有名なゲーム雑誌からの取材。チームチャンネルの生放送前。何かやらかしてヒデユキに怒られないか心配している時。
    ──そして、殺しの直前。

    (……まさかな)

    最後の選択肢を頭から消し去る。前世ならともかく、今の自分達にそれはない。
    そう、彼らは自分達の前世を知っている。

    割れた子供達グラスチルドレン
    悲惨な過去と共に割れてしまった殺したがりの子供達による、極道最凶の殺し屋集団。
    その中で、ヒデユキとタカヒロはそれぞれ司令オーダー攻手アタッカーを名乗る幹部格だった。

    司令オーダーが敵の座標をヤクで超強化した聴力で探り当て、攻手アタッカーがその剛拳で徹甲弾を撃ち込む。
    神槍グンニグルなどと言っていたあの頃を思い出すと、今となっては羞恥やら罪悪感やらで死にたくなってくる。

    だが、そんな血に塗れた過去や、……そのきっかけになった、あの事故のトラウマを越えて。
    二人で死んだ雨の日を越えて幾星霜。ようやく、普通の人間らしい生活を送っている。

    タカヒロの親は彼に己の野望を強要して殴ったりしないし、ヒデユキの親もレールから外れようとした途端に自殺未遂で彼を脅したりしない。
    星空の下の事故もなく、彼らは前世で叶えられなかった『FPSのプロになる』という夢を叶えた。
    そして成人を機に二人暮らしを始め、今に至る。

    ここで話は最初に戻る。やけに緊張している素振りのタカヒロ。
    その理由は、一体何なのだろうか?

    ヒデユキは考え込むが、心当たりは一切無い。
    直近に大会はなく、雑誌や生放送の予定も今のところはなかったはずだ。
    となれば、後は何か自分に怒られるような事でもしたのだろうか?
    しかしそれにしては、罪悪感のような感じではない。
    人より良いヒデユキの耳はタカヒロの心臓の鼓動を捉えていたが、その音は叱られるのを怖がる子供ではなく、どちらかと言えば一世一代の何かに挑む時のような──

    「……なあ、タカヒロ」

    このままでは埒が明かないと、ヒデユキは声をかけた。
    びくりとタカヒロの肩が上がる。

    「さっきから様子がおかしいけど、どうしたんだ? 心臓の音もデカいし……」

    「はあ~~~~……っ。やっぱり、ユキには全部お見通しか」

    自分の頭を乱暴に掻くと、意を決したのかタカヒロは真っ直ぐヒデユキの目を見据えた。
    その眼差しがとても真剣に見えて、思わずヒデユキも佇まいを正す。

    「……ユキ。これを、受け取ってほしい」

    ポケットから取り出した何かを、タカヒロはテーブルに置いた。
    それは、紺色の小さな箱。
    ヒデユキは息を呑む。だって、それはどう見ても


    「オレと、結婚してくれ」


    開かれた箱の中には、シルバーの指輪が一つ。
    宝石も、飾り彫りもないシンプルなものだった。

    「────」

    ヒデユキは呼吸を止め、指輪と、タカヒロを交互に見る。
    言葉が出なかった。──互いに、そう思っている事は分かっていた。
    前世では、全てが壊れてしまった勢いのまま一線だって超えた。
    だからこそ、今世では。今度は。
    そんなあやふやなものではなく、はっきりと、しっかりと段階を踏んで、そうなれたらと思っていたから。

    「え、どうしたユキ? なんで泣いてんだ!?」

    気が付けば、返事の代わりに涙が零れていた。
    止まらない涙を無理矢理拭い、タカヒロの手を取る。

    「……ああ! オレも、タカヒロがいい。ずっとお前と一緒にいたい……!!」

    「へへっ、当たり前だろ? だってオレ達は、無敵なんだからな!!」

    二人で笑い合う。もう彼らを阻むものは何もない。
    運命でさえも、きっと二人を引き裂けない。

    「それにしても、かなりシンプルなヤツを選んだんだな」

    「そう思うだろ? 実はこれ結婚指輪も兼ねてるんだけどよ、……内側見てくれ」

    「内側? ……あっ」

    指輪の内側には、二人のイニシャルの刻印と小さなサファイアが埋め込まれていた。

    「一応、買う前に天使アンジュとか舞踏鳥プリマに相談してよ。オレ達が付けてても違和感がないくらい飾り気がないけど、特別なモンがいいって言ったらこのデザインを教えてくれた。裏石って言うらしい」

    「そうか……。とてもいいな。気に入った」

    「だろ? ほら、これがオレの分」

    そう言ってタカヒロは同じデザインの指輪を取り出す。
    ヒデユキはそれを取ると、代わりに自分の指輪を渡した。

    「ユキ?」

    「どうせなら、今指輪交換しないか? ……あの時みたいに」

    「……そうだな」

    立ち上がり、互いに向き合う。

    「健やかなる時も、病める時も……」

    「──喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も」

    互いを愛し、敬い慰め合い、共に助け合い。その命ある限り、真心を尽くす事を。

    誓いの言葉と共に、相手の左手の薬指に指輪を通す。
    座標の暗号は必要ない。何故なら彼の目は見えている。
    首に通すための鎖もいらない。何故なら彼には手足がある。

    そして、今の彼らには未来がある。

    いつか聞くであろう鐘の音と友人達の歓声より先に、二人は強く抱き合った。
    星のように煌めく指輪の輝きは、きっと永遠に消えはしない。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💒💯💞💍👏👏👏👍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator