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    totorotomoro

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    純粋なイチャイチャです

    #鯉博
    leiBo

    散文4 リーがベッドの端に腰掛け、新聞を広げて文字を追っているとドクターがマグカップをサイドボードに二つ置いた。
    「お茶をきらしているからコーヒーでよかったかな」
    「ああ、ありがとうございます」
     額の上に乗せたサングラスをチェーンごと外してサイドボードに乗せると、新聞をばさりと一旦閉じてから縦半分のサイズにしてコーヒーマグを手に取った。そのままこくりこくりと口にしつつ、新聞の続きを読んでいく。
     ドクターはそんな彼の姿を見て、隣に腰掛けると横から覗き込む。
    「何か気になる記事はあったか?」
    「特に何もないですね。ちょいと西の方がキナくさそうですが、まあこの時期はいつもそんなもんでしょう。あとなんか聞いたことのない製薬会社が鉱石病の特効薬の治験を始めるらしいです」
    「おや、それは気になる記事じゃないか」
    「いんや、この会社はダメですね」
     リーはマグをサイドボードに戻して新聞をバサバサと折り畳み、該当の記事が出るようにしてドクターに手渡した。書かれた文字を目で追うドクターは、途中から「うーん」と口の中に言葉を探す。
    「確かに、処置方法をどうするとかどこでやるとか成分の話やなんかは当然書いてないにしても直近であちらの区域にある会社でこんな話があるなんて聞いたこともない。ソースの出どころがわからない記事だね。というか君、こんな俗な新聞読むのかい? ゴシップしか載ってないじゃないか」
    「ゴシップってのも中々侮れないんですよ。書かれていることが全部本当じゃなくても、その裏に重大な陰謀論が隠されているとかね」
    「なるほど。なら、ちょっと読んでみようかな」
     ドクターは折り畳まれた新聞を片手にリーの足の間に移動する。
     リーも少し後ろにずれて、足を開いてドクターが入りやすいように誘導した。そして顎を肩に乗せようとして───。
    「あの、フェイスシールドがあると顎が当たって痛いんで、外してもらってもいいですかね?」
    「ああ」
     ドクターはフードを下ろすと、フェイスシールドを外して手を伸ばしてリーの体の脇に置いた。リーはそのままドクターの胴に腕を回して顎を肩にぽすり、と乗せる。収まりのよさに、フーンと鼻息が出て、ドクターの耳にかかった髪の毛がふわりと凪いだ。
     ドクターは後ろ手でリーの頭を撫でてから一度リーが畳んだ新聞を広げて、リーのように縦半分に折ろうとして───広げては、戻し、表と裏を覗き込む。
    「あれ?」
     ばさりばさりと真似て畳もうとするのだが、リーが普段しているようなM字の、すっきりとした形にならない。
    「こうですよ」
     胴に回った手が離れてドクターから新聞を取り上げるとすいすいとたたみ直して手に握らせた。
    「ああ、ありがとう」
    「いーえ」
     体の位置を直すように、ぎゅっと胴に腕を回して顎の位置を微調整したリーはドクターの邪魔にならない程度に首元に頭をゆるく擦り付ける。
     尾を前の方へ動かせば、気づいたドクターがそっと尾を撫でて膝の上へと乗せて───。
    「あの、ドクター」
    「んー?」
    「おれの尾を、肘置きにしないでもらえますかね」
     これまたちょうどいい位置で腕をぎゅうと乗せられた尾のために、リーはドクターに回した腕をほんのちょっとだけ強く絞めて抗議する。
    「バレたかぁ」
     ドクターは笑いながら肘をどかすと、その部分をぽんぽんと撫でた。
    「まったく」
     リーはそう言いながら、もう少しキツめに尾をドクターに巻き付けてドクターが読んでいるだろう記事を目を細めて一緒に読むのだった。

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    はるち

    DOODLEロドスでダンスパーティーが開かれるのは公式というのが良いですね
    shall we dance「あなたには、ダンスはどのような行為に見えるかしら?手を相手の首元に添えて、視線を交わせば、無意識下の反応で、人の本心が現れるわ」

    踊ろうか、と差し出された手と、差し出した当人の顔を、リーは交互に見た。
    「ダンスパーティーの練習ですか?」
    「そんなところだよ」
    ロドスでは時折ダンスパーティーが開催されている。リーも参加したことがあり、あのアビサルハンター達も参加していることに少なからず驚かされた。聞けば彼女たちの隊長、グレイディーアは必ずあの催しに参加するのだという。ダンスが好きなんだよ、と耳打ちしてくれたのは通りがかりのオペレーターだ。ダンスパーティーでなくとも、例えばバーで独り、グラスを傾けているときであっても、彼女はダンスの誘いであれば断らずに受けるのだという。あれだけの高嶺の花、孤高の人を誘うのは、さぞかし勇気のいることだろう――と思っていたリーは、けれどもホールの中央で、緊張した様子のオペレーターの手を取ってリードするグレイディーアを見て考えを改めた。もし落花の情を解する流水があるのならば、奔流と潮汐に漂う花弁はあのように舞い踊るのだろう。グレイディーアからすれば、大抵の人間のダンスは彼女に及ばないはずだ。しかしそれを全く感じさせることのない、正しく完璧なエスコートだった。成程、そうであれば、高嶺の花を掴もうと断崖に身を乗り出す人間がいてもおかしくない。
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