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    dokuitu

    @dokuitu
    字書きです。何でも書いて何でも食べる(好きなものだけ)

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    dokuitu

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    昔書いた水着メルトSSをリハビリとしてリメイクしました
    ガッツリメルぐだ(性別は出してないけどぐだ男想定)だから注意だぜ!!
    ……ところでこれ書いたの三年前ってマ?

    月夜のワルツライトではなく、月明りに照らされて白く輝くリンクの上に、氷よりもなお冷たき鉄の脚が弧を描く。
    時に回転しながら宙を跳び、着地してからもスピードを緩めずにポーズを決める。

    ステップ、ルッツ、トゥーループ。
    あれはサルコウに……トリプルアクセルだろうか?

    焼き付け刃の知識を脳内でなぞりながら、マスターはその踊るような軌跡を眺めていた。

    一通り滑り終わり、氷上のプリマドンナは動きを止める。
    マスターは彼女を大きな拍手で迎えた。
    日中は多くの人々を魅了している演技を間近で、なおかつ独り占めできた事への感謝と、美しさへの称賛を込めた、心からの拍手である。

    「前にも思ったけどさ、本当にメルトは凄いね。……とても、綺麗だ」

    素直に感想を告げれば、プリマドンナ──もとい、メルトリリスは不敵な笑みを浮かべた。

    「当たり前でしょう? 私の本領は、心も体も溶かしてしまう毒の密。花が美しく咲くように、自分を魅せる事なんて自然にできて当然なのよ。まったく、アナタって凡庸な褒め言葉しか使えないのね」

    言い方に棘があるものの、彼女の顔には隠し切れない嬉しさが滲み出ていた。
    それが微笑ましくなって、マスターも釣られて頬を緩める。

    「だけど仕方ないだろう? あんなに綺麗なものを見せてもらえば、どんな褒め言葉だって出てこないし、いくら出てきたとしてもきっと足りないよ」

    「あら。相変わらず、言い逃れだけは達者ね」

    「ただの事実だよ。……ところで、話は変わるけど」

    「どうしたの?」

    「いや、どうしてこんな夜遅くに自分を呼んだのかなって。別に、今の演技を見せてくれる事だけが目的じゃないんだろう?」

    マスターとしては特異点に関係する話でもあるのではないかという勘繰りではあったが、メルトリリスはその問いを待っていたとばかりに可憐な顔をマスターの顔へ近付けた。思わぬ距離の近さに、マスターの胸が高鳴る。
    僅かに赤く染まった顔に加虐心を擽られたのか、舌なめずりをしながらメルトリリスは答えた。

    「ええ、もちろん。私の演技は高いのよ? まあ、既に身に染みて分かっているでしょうけど。……それを、こうして独り占めする名誉を得たのですもの。相応の対価は払ってもらわないと、ね?」

    「……こっちから見せてくれって言ったわけじゃないんだけど……」

    「つべこべ言わないの」

    「じゃあ、一体何を支払えと? QP? コイン? ……まさか、経験値……とか?」

    「……はあ。アナタ一人の経験値なんて、小さすぎて何の足しにもならないわよ。……そうじゃなくて、その……」

    「メルト?」

    あんなにぐいぐいと来た勢いはどこへやら。唐突に煮え切らない態度になってしまった彼女にマスターが首を傾げると、メルトリリスは拗ねたように呟いた。

    「……アナタ、前に夜の街で、セイバー・オルタやジャンヌ・オルタと踊ったそうじゃない」

    「えっ……ああ、新宿の事? 確かにそうだけど、それが?」

    「『それが?』じゃないわよ! まだ私がいなかった頃の話とは言え、そんなの不公平じゃない! ……その、だから」

    スケートリンクから出て、いつもは身長差のせいで合わせづらい目線を合わせる。
    そのまま、メルトリリスはマスターへと手を指し出した。


    「………………私とも、踊ってくれないかしら」


    月光の下では、赤い顔は隠しようがない。それこそ、つい先程のマスターのように。

    「……でも、スケートはあんまりやった事ないよ?」

    恥じらう乙女の様子がたまらなく愛おしく感じて、マスターはつい焦らすようにおどけてみせた。

    「もう、分かってるわよ。スタァである私と同じリンクで、更にペアで滑れるはずないって。けれど、……ええ、バレエやフィギュアの美しさには及ばないでしょうけど、ワルツくらいならアナタと一緒に踊れるでしょう? ……まさか、オルタとは踊れて、私とは踊れないなんて言わないわよね?」

    「もちろん」

    マスターは長い袖に隠されたメルトリリスの手を取った。探らずとも、彼女の手の位置はすぐに分かる。
    そのまま体を密着させて、もう片方の手を華奢な背中に添える。

    「……ちゃんと、リードしてよね」

    「任せて。あれから練習したからさ、……『完璧に』とまではいかないけど、満足できるレベルにはなってると思うよ」

    「そう。……なら、いいわ」

    3.2.1

    リズムを合わせるためのカウントが終わるのと同時に、二人は一歩を踏み出す。
    月下で行われる、二人だけしか知らないワルツ。

    触れ合う熱は微々たるもので、慣れないステップはたまに躓きそうになってしまうけれど、メルトリリスは満足していた。
    何故なら、このワルツはただの口実にすぎない。


    ──例え、あまりにも取るに足りないものであったとしても。
    ただ、手を握ってもらえるだけの幸せを、彼女は既に知っているのだから。
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    はるち

    DONE二人で飲茶を食べるお話
    いつだってあなたと晩餐を アルコールは舌を殺す。
     酒の肴を考えてみれば良い。大抵が塩辛く、味付けが濃い。それは酒で鈍くなった味覚でも感じ取れるようにするためだ。煙草も同様だ。喫煙者は食に興味を示さなくなることが多いと聞くが、それは煙が舌を盲目にするからだ。彼らにとっては、食事よりも煙草のほうが味わい深く感じられるのだろう。
     だから。
     酒も煙草も嗜む彼が、こんなにも繊細な味付けで料理をすることが、不思議でならない。
    「今日のは口に合いませんでした?」
    「……いや、おいしいよ」
     考え事をしている内に手が止まっていたのだろう。問いかけに頷き返すと、そりゃ良かった、とテーブルの向かいで彼が微笑む。
     飲茶に興味がある、と言ったのはつい先日、彼が秘書として業務に入った時のこと。それから話は早かった。なら次の休みは是非龍門へ、と彼が言うものだから、てっきりおすすめのお店にでも案内してくれるのかと思ったのだが。彼に連れられてやって来たのは探偵事務所で、私がテーブルにつくと次から次へと料理が運ばれてきた。蒸籠の中に入っている料理を、一つ一つ彼が説明する。これは焼売、海老焼売、春巻き、小籠包、食事と一緒に茉莉花茶をどうぞ、等々。おっかなびっくり箸をつけてみれば、そのどれもがここは三ツ星レストランかと錯覚するほどに美味しいのだから。
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