Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    dokuitu

    @dokuitu
    字書きです。何でも書いて何でも食べる(好きなものだけ)

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 17

    dokuitu

    ☆quiet follow

    先生お誕生日おめでとうございますな鯉博SS
    いつもにも増して捏造マシマシでしてよ もちろん博の性別は固定してないです

    #鯉博
    leiBo

    From me to you執務室のドアを開けるなり、山盛りの荷物を抱えたリーが入ってきてドクターは思わず「ほう」と呟いた。
    『山盛り』と言うのは誇張でも何でもなく、かなりの長身であるはずのリーの顔が半分しか見えない。
    ドクターの体を抱きしめてなお余るような(これはドクターの体躯が細いせいでもあるが)腕で抱えてそうなっているのだから、その総量は推して知るべしだろう。
    荷物の正体は、ロドスのオペレーター……主に後方支援部の者達や、ロドス艦内で保護された子供達からの誕生日プレゼントである。そう、今日はリーの誕生日なのだ。

    「随分と慕われているようだね、リー」

    「ええ、まあ……。流石にこの数は、おれとしても予想外でしたがね、っと」

    リーはプレゼントの山をそっとソファへと降ろし、隣に腰を据える。
    態度こそプレゼントを抱え続けていたせいで疲れ気味のようだが、纏っている雰囲気は嬉しそうだ。
    己の誕生日の日付すら覚束ないドクターにも、「自分の誕生日を祝ってもらうのは嬉しい」という普遍的な感情は理解できる。故に、いつものようなサボりへの小言も封印して、リーの好きにさせる事にした。

    そのままドクターが仕事に没頭し続けてどれほどの時間が経ったのか。
    いつものように苦い茶を片手に書類仕事を眺めていたリーが、ふと口を開いた。

    「ところで、ドクター。本当にあなたからは……」

    「言っただろう。私が君へ送れるのは言葉くらいだと」

    「そうでしたねぇ……」

    あからさまに肩を落とすリーだが、おそらくはいつもの大袈裟な演技だろう。
    そう邪推しながらも、ドクターは良心の針が自分の背中を突くような申し訳なさを感じていた。

    ロドスでは、オペレーター同士で誕生日を祝う事自体は特に禁止していない。
    むしろパーティー好きのオペレーターが、たまに仲間へのサプライズとして誕生日パーティーを企画するくらいだ。
    主に食堂を貸し切って行われるそれらのパーティーに、ドクターが行く事も特に禁止されてはいない。
    ……だが、ドクターがオペレーター個人に何かを送るという事は、固く禁じられていた。

    より正確に言えば、厳禁と言う訳ではない。「どうしても」と懇願すれば、お目こぼしされる事だってあるだろう。
    少し話は変わるがバレンタインやハロウィンなど、不特定多数へ平等に何かを送るようなイベントは別段咎められていないのだ。
    では、一体何が駄目なのかと問われるならば。

    ドクターという『指揮官』が、特定のオペレーターばかりを贔屓してはならない──という事である。

    理屈は理解できるし、ドクターもその決まりに関しては特に不満はない。
    最初こそ一方的に貰うばかりでお返しもままならない事に心苦しさを感じていたが、今ではこうして仕方ないと開き直る事もできる。勿論、プレゼントの代わりに心を尽くして「おめでとう」と言葉を送る事も忘れない。

    しかし、今回は少しいつもと事情は異なる。
    他の者達に隠している(少なくともドクターは隠し通せていると思っている)とはいえ、ドクターとリーは恋仲なのだ。
    会える日はまばらで、今のような仕事中や人目があるような場所で分かりやすく恋人らしい事はしないものの、それでも情を交わした仲である事には変わりない。
    故に、リーはこう言いたいはずだ。──あなたは、恋人に誕生日プレゼントもくれない薄情者なのですか、と。

    いや、流石にここまでは言うまい。少なくとも、このままストレートに言葉にするような人物ではない。
    けれど、そういったニュアンスを態度や言葉に含ませる事はするだろう。丁度、先のやり取りのように。

    「仕方ないな」とドクターはため息をついた。ドクターとて、いつでも規則を守るような四角四面とした人物ではない。
    ルールが邪魔になってしまうなら、その隙を突けばいいだけの話だ。

    「リー、ちょっと来てくれないか」

    「はいはい、なんですか?」

    ドクターの手招きに応じて、リーがデスクの前まで来る。
    現在、執務室はドクターとリーの二人きり。なのでドクターはわざわざフェイスシールドを外し、眼前の恋人に微笑んでみせた。

    「今日の業務が終わったら、私の部屋においで。そこにプレゼントを用意してあるから」

    「えっ」

    黒眼鏡の奥にある、金色の瞳が丸くなった。
    いつも気怠そうに微睡むか、あるいは余裕たっぷりに笑みを浮かべる瞳にそれ以外の表情が現れる様子は、いつ見ても好ましい。

    「……いいんですか? そういうのは駄目だって言ったのはあなたじゃないですか」

    「そうだよ。ドクターオペレーターにプレゼントを渡せない。けれどね──」

    悪戯っ子が、とびきりの悪戯を仕掛けるように。
    「内緒だよ」と人差し指を口元に当てて、ドクターは言った。


    「プライベートで恋人きみにプレゼントを贈ったって、誰も文句は言わないだろう?」


    「……あなたって、狡い人ですね」

    「おや、今更気付いたのかい?」

    「まさか」

    「そういう所だって愛しているんですよ」と金の瞳が語る。
    軽々しく口には出されない愛の言葉を、目の前の彼はこうして視線だけで伝えてしまう。
    ……伝わってしまうほどにその視線は情熱的で、理解してしまうほどに付き合いは深い。

    「それじゃあ、さっさと仕事終わらせちまいましょう。手伝いますよ」

    一瞬にしていつもの調子に戻ったリーが、いくつかの書類を手に取った。

    「ふふ、常にそうやって熱心に手伝ってくれると助かるんだけどね?」

    「そいつは……善処します」

    二人分の笑い声が執務室に小さく響く。
    勤務終了まであと三時間。今日の仕事はとても早く終わりそうだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏🙏🙏🙏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    はるち

    DONE二人で飲茶を食べるお話
    いつだってあなたと晩餐を アルコールは舌を殺す。
     酒の肴を考えてみれば良い。大抵が塩辛く、味付けが濃い。それは酒で鈍くなった味覚でも感じ取れるようにするためだ。煙草も同様だ。喫煙者は食に興味を示さなくなることが多いと聞くが、それは煙が舌を盲目にするからだ。彼らにとっては、食事よりも煙草のほうが味わい深く感じられるのだろう。
     だから。
     酒も煙草も嗜む彼が、こんなにも繊細な味付けで料理をすることが、不思議でならない。
    「今日のは口に合いませんでした?」
    「……いや、おいしいよ」
     考え事をしている内に手が止まっていたのだろう。問いかけに頷き返すと、そりゃ良かった、とテーブルの向かいで彼が微笑む。
     飲茶に興味がある、と言ったのはつい先日、彼が秘書として業務に入った時のこと。それから話は早かった。なら次の休みは是非龍門へ、と彼が言うものだから、てっきりおすすめのお店にでも案内してくれるのかと思ったのだが。彼に連れられてやって来たのは探偵事務所で、私がテーブルにつくと次から次へと料理が運ばれてきた。蒸籠の中に入っている料理を、一つ一つ彼が説明する。これは焼売、海老焼売、春巻き、小籠包、食事と一緒に茉莉花茶をどうぞ、等々。おっかなびっくり箸をつけてみれば、そのどれもがここは三ツ星レストランかと錯覚するほどに美味しいのだから。
    1791

    はるち

    DONE「どうも私は、死んだみたいなんだよね」
    イベリアの海から帰還したドクターは、身体が半分透けていた。幽霊となったドクターからの依頼を受けて、探偵は事態の解決に乗り出すが――
    「ご依頼、承りました」
    この謎を解く頃に、きっとあなたはもういない。

    という感じのなんちゃってSFです。アーミヤの能力及びドクターについての設定を過分に捏造しています。ご了承下さい。
    白菊よ、我もし汝を忘れなば 青々たる春の柳 家園に種うることなかれ
     交は軽薄の人と結ぶことなかれ
     楊柳茂りやすくとも 秋の初風の吹くに耐へめや
     軽薄の人は交りやすくして亦速なり
     楊柳いくたび春に染むれども 軽薄の人は絶えて訪ふ日なし
     ――引用 菊花の約 雨月物語


    「どうも私は、死んだみたいなんだよね」

     龍門の夏は暑いが、湿度が低いためか不快感はさほどない。先日任務で赴いたイベリアの潮と腐臭の混じった、肌に絡みつくような湿気を七月の太陽が焼き清めるようだった。あの人がいたならば、火炎滅菌だとでも言ったのだろうか。未だ彼の地にいるであろう人物に、そう思いを馳せながら事務所の扉を開けると、冷房の効いた暗がりから出たリーを夏の日差しと熱気が過剰な程に出迎える。日光に眩んだ鬱金の瞳は、徐々に真昼の明るさに慣れる中で、有り得ざる人影を見た。
    15295