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    dokuitu

    @dokuitu
    字書きです。何でも書いて何でも食べる(好きなものだけ)

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    dokuitu

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    ようやく書けたフォロワーさんとのリプで生まれた添い寝鯉博SS
    相変わらず博の性別が迷子&捏造だらけだぞ!!

    #鯉博
    leiBo

    揺籃はシングルベッド「……ドクター」

    「待って、あとすこし」

    このやり取りも既に五回目。
    時計の針はとっくに一周して、新しい日付けを刻んでいる。
    しかし未だにドクターの頭脳は働く事を止めないようで、何度も目覚めては枕元にある端末に思い付いた事や戦略をメモしたり、果てには先の仕事の確認までしていた。
    ディスプレイの光に照らされ闇に浮かぶドクターの横顔を眺めながら、リーは心中で嘆息する。

    ドクターとリーの交際が始まってから幾月か。
    翌日が休日で、なおかつ互いに予定がない時にという条件付きでならば、共寝を許されるくらいには心を開いてもらえた。
    ……はずなのだが、先程からこの有様である。
    一度二度ならば寝た振りで見過ごせたが、流石に寝息より端末を睨みながらの唸り声の方が多くなってくると、声のひとつでもかけたくなる。
    そんなリーからの声かけに、ドクターが素直に寝る姿勢を見せたのは最初だけ。
    どうしても眠れないのか、五分も経てばこそこそと端末に手を伸ばしていた。

    リーとしては「そういう事を繰り返しているせいで眠れないのでは?」と思うのだが、ドクターがそれを改める様子はついぞ見られない。

    「いつもこうなんですか?」

    背後から声をかけると、「まあね」と返事が返ってきた。レスポンスが速くて短いのは、端末に集中しすぎて返事に思考を裂けないせいだろう。
    その集中力は称賛に値するが、少なくともこんな時に使うものではない。

    ドクターは、『生き急ぐ』という言葉の擬人化のような人物だ。
    毎日仕事ばかりで、休憩時間やたまの休日には何をしていいのかと途方に暮れていて。
    戦場とデスクの上にいる時が一番役に立つと愚直に信じ、それ以外の自分には価値が無いと思い込んでいる。
    自分以外にも、ドクターを心から想う者は周囲に溢れているというのに。
    その自信の無さは、もしかすると本人の記憶喪失が関係しているのかもしれない。
    記憶が戻り自我が安定すれば、あるいは──

    だが、今はどうでもいい。
    いつか時が、あるいは誰かが、もしくは本人の力で解決できるであろう事は、その当人達に任せるべきである。
    少なくともリーはそう考えている。彼が大切に思うのは今のドクターであって、喪失した過去にまで執着していない。
    だからこそ今のドクターを守るために、リーはひょいと端末を取り上げた。
    さっさと電源を切って、ドクターの手が届かない場所へと放る。

    「あ……ちょっと、何す」

    抗議の声が、額に落とされた口付けと共に途切れる。
    背後のリーに振り返ったままフリーズしてしまったドクターを優しくベッドに寝かしつけて、普段は隠された瞳を真っ直ぐに見つめた。

    「ドクター。──そんなに眠れないのなら、今からおれと『イイこと』、しませんか?」

    意味深な笑顔をひとつ。
    再起動と共に言葉の意味を理解したドクターの顔が、暗い部屋の中ですらありありと分かるほどに赤くなる。

    「し、しないっ。寝るよ、寝ればいいんだろう!? おやすみ!」

    照れ隠しからか、ドクターは横抱きにした枕に顔を埋めてしまった。
    小動物が体を縮めて守るような仕草が何故だかたまらなく愛しく感じ、尾を使って全身でその小さな体躯を包めば、「うひゃあっ」と色気のない悲鳴が上がる。
    しばらく軽い抵抗や羞恥からくる心身の震えと格闘していたドクターだったが、それらが規則正しい寝息に変わるのにそう時間はかからなかった。
    「これでいい」と今度は安堵から来るため息を吐いて、リーもそろそろ眠気に逆らえなくなっていた目蓋を閉じた。

    二人の寝姿はまるで、仲睦まじい親子のようにも、己の中に宝を仕舞い込んで離さない龍のようでもあった。
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    はるち

    DOODLEロドスでダンスパーティーが開かれるのは公式というのが良いですね
    shall we dance「あなたには、ダンスはどのような行為に見えるかしら?手を相手の首元に添えて、視線を交わせば、無意識下の反応で、人の本心が現れるわ」

    踊ろうか、と差し出された手と、差し出した当人の顔を、リーは交互に見た。
    「ダンスパーティーの練習ですか?」
    「そんなところだよ」
    ロドスでは時折ダンスパーティーが開催されている。リーも参加したことがあり、あのアビサルハンター達も参加していることに少なからず驚かされた。聞けば彼女たちの隊長、グレイディーアは必ずあの催しに参加するのだという。ダンスが好きなんだよ、と耳打ちしてくれたのは通りがかりのオペレーターだ。ダンスパーティーでなくとも、例えばバーで独り、グラスを傾けているときであっても、彼女はダンスの誘いであれば断らずに受けるのだという。あれだけの高嶺の花、孤高の人を誘うのは、さぞかし勇気のいることだろう――と思っていたリーは、けれどもホールの中央で、緊張した様子のオペレーターの手を取ってリードするグレイディーアを見て考えを改めた。もし落花の情を解する流水があるのならば、奔流と潮汐に漂う花弁はあのように舞い踊るのだろう。グレイディーアからすれば、大抵の人間のダンスは彼女に及ばないはずだ。しかしそれを全く感じさせることのない、正しく完璧なエスコートだった。成程、そうであれば、高嶺の花を掴もうと断崖に身を乗り出す人間がいてもおかしくない。
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    はるち

    DONEリー先生の尾ひれを見るたびにドキドキするドクターのお話。
    その鮮やかさを覚えている 覚えているのは、黒と金。
     石棺で眠りについていた二年。あの漂白の期間に、自分はかつての記憶のほとんどを失った。それを取り戻すために、主治医であるケルシーとは幾度となくカウンセリングを行ったが、その殆どは徒労に終わった。医学的には、記憶喪失になってから一年が経過すると、記憶が戻るのはほぼ絶望的とされる。だからこれで一区切りをする、と。ケルシーは診察の前にそう前置きをし、そうして大した進展もなく、最後の診察も終わった。言ってみればこれは届かないものがあることを確認するための手続きだ。現実を諦めて受け入れるための。失われたものはもう二度と戻って来ないのだ、ということを確認するための。
     ドクターは書棚からファイルを取り出した。ケルシーとの診察の中で、自分に渡された資料の一部だ。何でもいいから思いつくものを、思い出せるものを書いてみろと言われて、白紙の上に書いた内面の投影。他者からすれば意味不明の落書きにしか見えないだろう。しかしケルシーにとっては現在の精神状態を推量するための材料であり、ドクターにとっては現在の自分を構成する断片だ。
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    はるち

    DONEフォロワーさまのツイートより。
    龍門弊が足りないドクターがお金欲しさに怪しいバイトに手を出して、それが鯉先生にバレてしまうお話。
    フリー素材というお言葉に甘えて書かせていただきました。ありがとうございます!
    How much, darling? ドクターは龍門弊の枯渇に喘いでいた。
     チェルノボーグで石棺から目覚めてからというもの、金策に苦しまなかった日はなかった――ただの一日もなかった。オペレーターたちに戦場以外の場所でも経験を積んでもらうために作戦記録を見てもらうのにも時給が発生し、それを支払うのは当然ロドス側になる。昇進に当たり彼らに相応しい装備を用意するのもこちらで、費用に加えて別途材料が必要になる。それも一段落したと思えば今度はエンジニア部が新しく開発したモジュールシステムだ。既存の武器や防具に外付けのデバイスを搭載することでさらなる戦闘力の強化が望めると、このシステムの開発のために徹夜してきたと思わしきエンジニアは機械油で汚れ、隈も色濃い顔で、それでも眼光だけは少年のように輝かせて熱弁を振るっていた。全ては作戦の成功率を上げるため、犠牲も負傷者も少なく作戦を終わらせるためである。それはわかっている。わかっているのだが。
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