揺籃はシングルベッド「……ドクター」
「待って、あとすこし」
このやり取りも既に五回目。
時計の針はとっくに一周して、新しい日付けを刻んでいる。
しかし未だにドクターの頭脳は働く事を止めないようで、何度も目覚めては枕元にある端末に思い付いた事や戦略をメモしたり、果てには先の仕事の確認までしていた。
ディスプレイの光に照らされ闇に浮かぶドクターの横顔を眺めながら、リーは心中で嘆息する。
ドクターとリーの交際が始まってから幾月か。
翌日が休日で、なおかつ互いに予定がない時にという条件付きでならば、共寝を許されるくらいには心を開いてもらえた。
……はずなのだが、先程からこの有様である。
一度二度ならば寝た振りで見過ごせたが、流石に寝息より端末を睨みながらの唸り声の方が多くなってくると、声のひとつでもかけたくなる。
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