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    dokuitu

    @dokuitu
    字書きです。何でも書いて何でも食べる(好きなものだけ)

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    dokuitu

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    また書いちゃった鯉博 (博の性別不定)

    食べたいよな、先生の夜食

    #鯉博
    leiBo

    子守唄はあなたの味深夜。孤独な執務室。

    ぼちゃぼちゃ

    勢いよく小さな白い塊を黒い液体の中に落としていく。総数はもう数えていない。
    カップを揺らしながら中身を攪拌して、そのまま一気に呷る。

    「ちょっとドクター? 何してるんです?」

    ……が、中身が口内になだれ込む前に、大きな黄色い手袋に取り上げられてしまった。
    ドクターは不満げに下手人たるリーを見上げるが、彼の視線はたった今取り上げた狂気の産物に向けられている。
    黒い液体の正体は漆黒としか形容できないほどに濃い珈琲で、少し鼻を利かせるだけで目が覚めそうな苦味を感じた。
    テーブルの上には、空っぽなブドウ糖の包み。
    確かに甘味ではあるだろうが、リーの記憶が正しければこれは食用ではない。

    つまり、現在リーを見上げながらとても不満そうな顔をしている指揮官殿は、極端に苦く煎れた珈琲に、こっそり持ち出した食用ではない人工甘味料を何個も入れて飲もうとしていた訳だ。
    どう考えても正気の沙汰ではない。

    「返してくれよ、リー。それが一番目が覚めるんだ」

    しかしそれを把握しているのかいないのか、ドクターは悪びれもせずに──むしろ取り上げたリーの方が悪いとばかりに、常軌を逸した珈琲に手を伸ばす。

    「あのねぇ、こんなの駄目に決まってるでしょうが」

    渡すものかと少しカップを上に上げるだけで、椅子に座ったドクターの細腕には届かなくなってしまった。
    例え立ち上がったとしても無駄だと悟ったのか、そのまま脱力する。

    「……意識覚醒と糖分摂取を一気にできる、良い手だと思ったんだけどなあ……」

    「そりゃあ目は覚めるでしょうけど……、流石にこれは体に悪すぎます」

    自覚はあったのだろう。ドクターはぐうの音も吐かずに不貞腐れた素振りを見せた。

    「こんな物を飲まなきゃいけないほどに、切羽詰まってるんですか?」

    「……それは……」

    「ドクター、誤魔化さずに教えてください。その書類は、今、絶対に、やらなきゃいけない物なんですか?」

    子供を叱るように問い質せば、「ちがう」と小さな声が返ってきた。

    「……だが、早めに終わらせた方が良い案件ではある」

    続いて、言い訳じみた呟き。
    リーは呆れから深々と溜息を吐くと、「だったらもう寝ましょうよ」と進言した。

    「これ以上根詰めたところで、体を壊すだけでしょうに。ちゃんと寝て、スッキリした頭でやった方が効率も上がるでしょう?」

    リーの言葉はこれ以上ない正論である。だが、連日の深夜作業で疲れ切った頭は既に鈍っており、ドクターに正常な判断はできなくなっていた。

    「分かった、寝床に入れば良いんだろう?」

    仕事用の記憶端末を持って自室に向かおうとするドクターの腕を、リーは慌てて掴む。

    「ちょっとちょっと、『寝る』の意味ちゃんと分かってます!?」

    「寝床に入ってしばらく作業していれば、そのうち自然と眠れるはずだ」

    「それは寝てるんじゃなくて、単に疲れて気絶してるだけですよね?」

    とんだ屁理屈に、「こりゃ駄目だ」とリーは脳内で白旗を振りかけた。
    ……ものの、今にも倒れそうな眼前のワーカホリックを放ってこのまま立ち去れるほど、彼は非情になれきれない。

    「……分かりました。それじゃ、少しだけ待っててください。夜食拵えてくるんで」

    「え」

    リーの腕を振り払おうと非力なりに四苦八苦していたドクターの動きが止まる。
    ドクターとて、リーの料理の味は既に知っているのだ。
    かの至高の料理人が自分のためだけに夜食を作ってくれると言うのに、逆らう理由は微塵も存在しない。

    作業を無理矢理中断させられた不満から一転、うきうきとした空気を隠しもせずに大人しく座って待っている姿を見て笑いを堪えつつも、リーは「何か苦手なものとか、あとはリクエストとかあります?」と問いかける。

    「食べ物の好き嫌いはないよ。リクエスト……じゃあ、目が覚めるもので」

    リクエストを聞いた途端に「まだ懲りてないんですか」という視線が黒眼鏡の奥から飛んできたので、ドクターは慌てて目を逸らして回避した。

    「はあ……良いですよ。それじゃ、ちぃとばかし待っててください」

    ──────

    待つ事数分。

    「お待たせしました、どうぞ」

    書類を片付けたテーブルの上に置かれた器には、野菜がたっぷりと入ったスープ。
    「いただきます」と一言言ってから、ドクターはスプーンを口に運ぶ。

    優しい口当たり。喉を通り、胃に落ちたスープは内側から体を温めてくれる。
    野菜の柔らかさも丁度よく、味の調和が次から次へとスプーンを進ませる。
    具に肉の類はないものの、満足度はかなり高い。
    夢中になって食べ進め、とうとう器を持ち上げてスープを飲み干した後になって、

    「…………」

    ドクターは自身の体の異変に気付いた。
    程よく温まった体と、持ち上げるにも苦労するようになってしまった目蓋。
    これは──

    「……リー」

    「はい、なんでしょう?」

    「スープ、とても美味しかった。ありがとう」

    「いえいえ、それほどでも」

    「けれど、これは私のリクエストと相反するものだよね?」

    罠だ。このスープは大変美味であり、疲れた体を癒すものである。
    だが、どう考えても食べた者を問答無用で寝かせるタイプのものであり、覚醒作用とはまるきり真逆の位置にあるとしか考えられない。
    それを指摘すると、リーはニヤリと笑った。

    「そうですかぁ? おれが貴方から受けたのは『目が覚めるもの』ってリクエストです。……その通り、こんな時間になっても仕事しようとする、無茶な指揮官殿の目を覚まさせるものを作ったはずなんですけどねぇ」

    とんだ屁理屈だ、と指摘しようにも噛み殺しきれない欠伸が口から漏れるばかりで、正直に言えば今すぐにでも寝てしまいたい。

    「で、どうでしょう。仕事の続きはできそうですかな?」

    「分かってて聞くのか、それを……」

    寝ぼけ眼で睨んだところで、目の前の飄々とした彼には何ともないだろう。

    「……寝るよ。残りは明日片付ける。食器は──」

    「こっちはおれが片付けときますんで、どうぞドクターはゆっくりお休みください」

    「ああ、ありがと……っ!?」

    立ち上がった瞬間、眠気が足を縺れさせた。

    「おっと」

    床に倒れ込む前に、リーの腕がドクターを抱え込む。
    たった腕一本で支えられてしまった事に若干不満を持ちつつ、体を強打しなかった事は素直にありがたかったので、ドクターは再び礼を言った。

    「どうやら、ドクターは相当お疲れのようですねえ。……おれが寝室まで運んであげましょうか?」

    「そ、そこまで世話になるわけには……」

    顔を見上げれば、愉快そうな金の瞳がこちらを観察している。
    この状況を楽しんでいるようだ。

    「…………」

    羞恥心と言う名の理性と睡魔と言う名の本能が脳内で数秒争ったが、結局三大欲求には抗えず、ドクターはリーへ手を伸ばした。

    「やさしく、たのむ」

    予想外のカウンターに、リーの喉がグッと鳴る。
    咳払いでそれを誤魔化して、リーは壊れ物を扱うように軽い体を抱き上げた。

    「ええ、もちろん」

    ドクターの自室に着く頃には、ドクターはリーの腕の中で寝息を立てていた。
    安心しきった寝顔はあどけなさすら含んでいて、少し高い体温も合わさり、まるで子供のようだ。

    「おやすみなさい、ドクター。どうか良い夢を」

    髪に口付けを一つ落とし、そっとベッドに寝かせる。
    パチリと部屋の電気を消す音を最後に、暗闇には微かな寝息だけが響いていた。
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    はるち

    DOODLEロドスでダンスパーティーが開かれるのは公式というのが良いですね
    shall we dance「あなたには、ダンスはどのような行為に見えるかしら?手を相手の首元に添えて、視線を交わせば、無意識下の反応で、人の本心が現れるわ」

    踊ろうか、と差し出された手と、差し出した当人の顔を、リーは交互に見た。
    「ダンスパーティーの練習ですか?」
    「そんなところだよ」
    ロドスでは時折ダンスパーティーが開催されている。リーも参加したことがあり、あのアビサルハンター達も参加していることに少なからず驚かされた。聞けば彼女たちの隊長、グレイディーアは必ずあの催しに参加するのだという。ダンスが好きなんだよ、と耳打ちしてくれたのは通りがかりのオペレーターだ。ダンスパーティーでなくとも、例えばバーで独り、グラスを傾けているときであっても、彼女はダンスの誘いであれば断らずに受けるのだという。あれだけの高嶺の花、孤高の人を誘うのは、さぞかし勇気のいることだろう――と思っていたリーは、けれどもホールの中央で、緊張した様子のオペレーターの手を取ってリードするグレイディーアを見て考えを改めた。もし落花の情を解する流水があるのならば、奔流と潮汐に漂う花弁はあのように舞い踊るのだろう。グレイディーアからすれば、大抵の人間のダンスは彼女に及ばないはずだ。しかしそれを全く感じさせることのない、正しく完璧なエスコートだった。成程、そうであれば、高嶺の花を掴もうと断崖に身を乗り出す人間がいてもおかしくない。
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